スタジオ負け犬

皆さま、お久しぶりです。 お元気ですか? お元気でなくても、生きていますか? 暑いですけど、ご飯を食べていますか? 食べていなくても飲んでいますか? 下町のナポレオンに癒されていますか? たまには遊んでいますか? ボーリングとかやっていますか? …

1998年3月某日の深夜、発泡酒をぶっかける

区切りをつけるという行為は、とても大事なことだ。 今いる場所、状況、従事している事柄から距離を取り、関わり合いを断つ。それは何かを成し遂げた後でも、中途半端な状態でも構わない。とにもかくにも「終わり」と決めて、さよならするのが重要なのだ。 …

それは、「未来」という魔法だった

「未来」という言葉に希望が含まれていた少年時代、ブラウン管の中にはサトームセンのジャガーや、オノデン坊やが息をしていた。 元気があった街の本屋にはジャンプやマガジン、コロコロやファミ通といったカタカナの少年誌が平積みされており、高橋名人や毛…

人間と悪魔を分ける線

寝る前に開いたページで見つけた記事を、放っておくことは出来なかった。 全ての人間が人間のまま生きているとは思えない。実際、人間の皮を被った悪魔を何人も見てきた。「未成年」「未熟さゆえの過ち」「集団心理の暴走」この事件にそれっぽいフレーズは幾…

ミレニアム前後のセレナーデ

シーブリーズを首もとにふりかけた女の子が、あぶらとり紙で頬についた98年を拭き取った。クラスで目立つグループに入っていた生徒は、だいたい「よーじや」を使っていて、1、2年前まで愛用していた白いルーズソックスの代わりに、シュッとしたラルフの…

赤い爪

雨が降っても開かない傘 帰れない火曜日に石を投げる 肌色が透ける磨りガラス 必死に動いてバカみたいだね 赤い靴下に真っ赤な下着 足の爪まで朱色に染まった 欲望は美しいって言われたって 子供に分かるわけないだろって チューインガムで貼り付けた似顔絵 …

衝動解放活動

楽しい時間はあっという間に終わる。 本当に同じ尺を使っているのかと疑いたくなるほど、楽しい時とそうでない時の体感差が激しい。それはもちろん集中しているか否か、脳内のナンチャラ成分が分泌されているか否かなどと言ってしまえばそれだけの話なのだが…

子供の頃に見た正月みたいな風景

オンタリオ州の緊急事態宣言が発令されてから今日で1ヶ月と18日。4日間の休みが取れたので、念願だった散歩に出た。 政府からの通達に従い、身分証明書を携帯してウォーキングシューズを履く。 天気は雲が散らばる晴れ。気温10度。歩いて5分程の距離にあるメ…

サラバ、私が見てきた世界よ

家の近くにあったレンタルビデオ店は、「TSUTAYA」ではなく、「すみや」だった。 店の内装や雰囲気は駅前にあったTSUTAYAの方が洒落ていたが、私はアットホームなすみやが好きだった。 閉店間際に行って映画を3本借り、すぐ横にあったセブンイレブンでチェリ…

恥なんか、多摩川に捨てた

「なぁ、ダメ元で聞くんだけど、『付かず離れず』って、どんな感じの関係を言ってるのか分かるか?」 「付かず離れず? 何だ急に」 「大したことじゃないんだけど、ちょっと気になってね」 「何の雑誌だ?」 「え?」 「お前が変なこと聞いてくるときは、大…

アチラとコチラ (完結)

3つ目 出来過ぎた展開に、都合の良いタイミング。 この話をもし小説として書くのなら、プロットの段階で大幅に修正しなければいけなくなるだろう。 まるで、ご都合主義の王道を行くようなストーリー。3つ目の岐路は、そんな事例の連続で作られていった。 …

アチラとコチラ (2つ目)

2つ目 駅前の公衆トイレ 風が強い静かな夜 階段で見た腕時計 記憶に強く残っている場面がある。 それは匂いや音を伴い、時間が経っても薄れることなく頭の中に存在し続ける。 私が経験した2つ目の人生の岐路は、そういったいくつかの場面の先に用意されて…

アチラとコチラ (1つ目)

並行世界、パラレルワールド。 呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。 私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。 宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ…

Aの中で、Bを見る

制限があっても、与えられた中で花を見つける。 まだ大洋ホエールズが生きていた頃、私はコントローラーが絶対に回ってこない「ファミコン応援係」という役を与えられていた。 仲間に入れてもらえるアイテム、ファンタオレンジを献上して、所定の位置に座る…

こんにちは

So this is Xmas And what have you done 何をしたのかと問われれば、「生きてきた」と答えよう。 五匹の猫がヒーターの通気孔を塞いでいる午前三時半。 丑三つ時の四角い部屋には、離婚記念で空を飛んできた義理の母が寝息を立てている。 約一ヶ月の滞在。 …

残った欠片との別れ 

雪が降った木曜の朝8時、ブラックももひきをはいた私は、リクライニングチェアーに腰掛けて、口を大きく開いていた。 目の前にはマスクをしたインド系歯科医。 彼のタレ目に見守られ、これでもかとリピートされるクリスマスソングに包まれながら、残り1本…

好きな人はいますか?

週間予報に見つけた雪マーク。 楓の国は、もう寒い。 コタツが主役の家で育ったせいか、私は寒さに弱い。 なので、出勤時には防寒ジャケットのジップを上まであげ、手袋をしてハンドルを握っている。 こんな調子では、近日中にブラックももひきの姿を拝むこ…

ユワシャ

ハロウィンに特別な思い入れはない。 出勤と同時に化けの皮を被っているのであえて仮装する必要はなく、トリックを披露する場も、トリートを配る機会もないので、職場のバスケットに詰め込まれていた甘いチョコ菓子をかじる以外は、いたって普通の水曜日だっ…

終わったんです

気持ちが高まっている。 そんな時は、タイプじゃなくてノートに書き出す。 まとまらなくなるのは分かっている。だからそのまま書かないが、今日は構わずタイプする。 只今、こちらは午前五時二十二分。 サーモスタットのパネルに映し出された気温は、4度だ…

12年かかって見た景色

12年かかって見た景色。 12年前。 お金も、仕事も、居場所もなかった。 12年前。 「柱もねぇ、壁もねぇ、床板まともにはまってねぇ」幾三ハウスから始まった生活。 ダンボールをタンスにし、結婚記念日にウェンディーズのバーガーセットを食べていた。…

満天の星をみたか

満天の星をみたか 寒さの産声が響く中 黒を濃くした夜空に浮かぶ 満天の星をみたか 工場から漏れる煙も 街を埋める電波でも覆えない 内なる想いを照らす 満天の星をみたか 俺は見た 真夜中の真ん中に開けた窓から 溢れる星を確かに見た 四方に散らばり輝く星…

ご報告

自身の作品である「歩けばいい」が Amazon × よしもとクリエイティブ・エージェンシーが主催する「原作開発プロジェクト」において優秀賞を受賞しました。 ドアが開き、橋がかかった事がとても嬉しいです。 作品を読んでくださった方々、選んでくださった方…

この土地は誰のもの?

メインストリートのコーヒーショップ 右肩に彫られたハイダのイーグル 握手をした友人はもういない 「弓を引く者」 彼はその名を捨てたと言った トライブを抜けた者 居場所を探す者 私も流れてここに来た 「よそ者」レッテルの永住者 私はあなたの敵ではない…

今が永遠に続きはしない

三月になりました。 相変わらず時間は駆け足です。 何というか、誰かに五時間ほどちょろまかされている錯覚に陥ります。 最近、子供の頃よく耳にしていたオノデン(秋葉原にある電気屋さん)のCMソングが頭の中で流れます。 宇宙的な歌詞で電気の世界を紹介…

自分のケツは、自分で拭きます 〈高岡ヨシ + 大関いずみ〉

「おーい、君ぃー! 聞こえるかー? そんなとこで、何してるんだー?」 「あっ! お勤めごくろうさまです! あのー! わざわざ来てもらって悪いんですが、間に合ってまーす!」 「いやー、えっ? 間に合ってるって、何だろうなー? とにかくさー、そこ危ない…

ねぇ、知ってる? 〈高岡ヨシ + ミチコオノ〉

ねぇ、知ってる? あの子のお母さん、PTAの会長さんとできてるらしいのよ ねぇ、知ってる? あの子の家の弟さん、やっぱり変なんですって ねぇ、知ってる? あの子のお母さんの出処、どうも橋の向こうの地区らしいのよ ねぇ、知ってる? あの子のお父さんの…

七日後の秘密

「急に呼び出して悪い」 「それはいいけど、誰もいないよね」 「誰もって?」 「ヤマカワさんとか」 「大丈夫。いない、いない」 「本当に? 倉庫なんかに呼び出すから、構えちゃったよ」 「ごめんな」 「いいよ。それよりさ、月曜どうだった? やっぱり新し…

夏をやってない

ハッとして目を覚まし 通りに近い窓を開ける 緑を覆う色あせた枯れ葉 喉に飛び込む息は冷たい 薄く横に伸びる雲 縦に登れず空を這う 確かにここにあった夏 それなのに 僕は夏をやってない バケツに飛び込む手持ち花火 生み出す音が夜を鎮める 咲き終わりに残…

衝動は、ここにいる

クリップで留めた感情は 夜を越えない 湧き上がる衝動と会話がしたいから 柔らかいクッションは取っ払った 遠慮なく飛び込む刺激は たまに痛いほどだけど とにかく朝を迎えたかった 喜怒哀楽に 邪と欲 そのままの形で出てきた思いに 自分の全てをぶつけたい …

取っ払う

枠には入れなかった 入らなかったのではない 入れなかったのだ はじき出されて 何を想う 普通を横目に 何を想う 付いたレッテルはどうでもいい それが意味をなさない事は ここまで生きて身に染みた 付けられたレッテルも気にしない そんなものは 他人にひと…

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