終わったんです

気持ちが高まっている。

そんな時は、タイプじゃなくてノートに書き出す。

まとまらなくなるのは分かっている。だからそのまま書かないが、今日は構わずタイプする。

 

只今、こちらは午前五時二十二分。

サーモスタットのパネルに映し出された気温は、4度だ。

 

兎にも角にも、どうにか間に合った。

締め切りギリギリは通常運転。小学生から変わっていない。

 

でも、終わった。

 

手を合わせて送信ボタンをクリック。

ありがとう、21世紀。

恩にきる、21世紀。

 

とにかく安心して、気の済むまで床で伸びた後に、机に戻った。

 

ありがとう。

 

いくつもの感情が溢れるが、そのどれをも押しのけて出てくるのは、感謝だ。

 

嫁さん、本当にありがとう。

そして、正直すまない。

 

ありがとうとごめんなさいは、いつも一緒に現れる。

 

結婚する時、契約書を作った。

仰々しく、拇印だって押した。

 

ご飯を作ります。

家事を喜んでします。

マッサージをします。

 

体をひっくり返して叩いても、何も出てこない当時の自分ができる約束がそれだった。

感覚的には、肩たたき券の延長。

金にも何にもならない、見る人が見れば、ただの紙クズだ。

 

一緒になってすぐに住む国が変わっても、肩たたき契約は遵守した。

 

はい、スープ。

今日もスープ。

明日はカレー、いきますか。

凝ってますねー、お客さん。

汚れた床を、拭きましょか。

 

こんな感じの毎日。

 

ツボも押せないマッサージじゃ、空腹の足しにはならんかね。

 

そんなこんなで時間が過ぎて、バタバタ手足を動かした。

 

学生ローン組んで学校行って、就職して。

25メートル! 50メートル! 次は100折り返し! って声に出して泳いでる日々だった。

 

やっとこさ落ち着いたら、今度は書きたいなんて言い出してね。

人生の宿題が終わってないんだー、消化できないーだの、どーだこーだごね出して、今まで溜めてた分を持ち込んできやがった。

 

しれっとご飯作る日が減って、掃除機も殆どかけない。頼みの綱のマッサージ券すら発行しない体たらく。

 

寝ろと言われても、寝ず。

仕事との両立でキャパも減って、追い込まれて。

映画も観ない。トランプもしない。Unoもしない。

コーヒーばっか飲んで、夜中にチョコを食う。

 

どうしても、書きたいんです。

これで生きていきたいんです。

ってね。

 

嫁さん、正直すみませんでした。

間違いなく、契約違反です。

 

無理を聞いてもらって、本当にありがとうございました。

 

お陰で、書けました。

20年間続いた放課後に、けじめをつけられました。

 

お願いだから、長生きしてね。

今まで受けた恩を返すには、10年20年じゃ足りないから。

 

 

いつか見てろよ、が燃料だった。

それはもちろん嫁さんにではなく、自分の過去と自分自身。

 

必要とされてない意識しかなくて、目をかけられた記憶もない。

薄く笑って合わせて汲んで、好きでもないのに欲しいと口にした。

その根底にあるのは恐れ。いつか「要らない」って言われる気がして、ビクビクしてた。

親の好きな人を応援して、洗いたての浴槽に唾を吐く。

 

つまんない毎日。

つまんない人生。

卵焼きばっか上手くなっても、誰も食べなきゃ意味ないね。

 

それから先は、答え合わせ。

 

ほら、やられた。

ほら、呼ばれた。

ほら、いなくなった。

ほら、裏切った。

 

何で、電話番号知ってんの?

何で、うちの場所知ってんの?

 

夜中のピンポンは、ホラーだ。

彷徨うジェイソンよりも、生きている人の方がよっぽど怖い。

窓に張り付く目。

全貌が見えない暗闇は、凶器だ。

 

怖いを怖いって言えるようになってよかった。

寂しいを寂しい。嬉しいを嬉しい。苦しいを苦しい。ループから抜け出せたならもっといいけど、口にできるだけで鍵確認の時間が減る。

加齢バンザイ。

 

やっぱり、言えないと斜に構える。

それが当時の防御策だったけど、気取ってからは、落ちるスピードが速かった。

 

底がない。

どこまで行っても、終わりがない。

 

ありがたく入れてもらえた増築部屋で、初めてタバコを吸った。

認めてもらいたくて、暇さえあれば火をつけ、気がついたら1日3箱が基本になっていた。

これは、塩辛と一緒。

「子供らしくない」と褒められたのが嬉しくて、目の前で無理して一瓶食べて隠れゲロ。それでも、任務に思えて、おつまみばっか食べるようになった。

カナダに来てなかったら、痛風だ。

タバコだってそう。一箱10ドル超えてたお陰でやめられた。

無収入の移住一年目。金がないなら買えないからね。

 

自分がないから、もので埋める。期待で埋める。奉仕で埋める。

透明な子だったから、色はなかった。

 

ターニングポイントよ、ありがとう。

 

そう、感謝の話をしていた。

話がズレても猫が来る。すっかり大人になった君には、この世界はどう見えているのだろう。

顔を近付けてスリスリしたら、カリカリの臭いがした。

 

健康的で良い餌を買い与えるから、どうか長生きしておくれ。

もう会えないかもしれないから、どうかたくさんの時間を過ごしておくれ。

あんたら5匹が俺らの子供。

種族は違うけど、愛しているから家族だ。

 

だから、ありがとうの話。

 

ありがとうばかりが溢れている。

同時にごめんなさいも。

 

迷惑ばっかりかけた。

尖ってる方の迷惑ではなく、出口のない迷惑の方。

出会ってくださったほぼ全ての方々、面倒をかけてすみませんでした。

 

そして、ありがとう。

 

血は繋がってなくても家族。

365日以上一緒にいた仲間。

避難場所を娯楽スペースに変えてくれてありがとう。

あんた達がいてくれたから、今も生きてる。

底の底から引き上げてくれた恩は、一生忘れない。

 

海で拾った猫。きったなくて狭い砂壁に似合わなかった綺麗な毛並み。

一番辛い時にそばにいてくれてありがとう。

あんたがいるのは絶対に、天国だな。

 

もう、話をまとめる気は無い。

浮かんだ順に書いている。

 

今に見てろよが燃料だった。

 

バタついて走って、とにかく走って、行けるだけ走った。

金がないのが嫌だったんじゃない、いや、嫌だったんだけど、昭和ルックルックよこんにちは、みたいな生活をさせているのが嫌だった。

 

リサイクル屋以外で服を買ってあげたい。

これでいい、なんて言わせたくない。

 

そんなんだから走っている最中に、たくさん目を瞑った。

止まりたくなかったから、感情を見ないようにしていた。

 

どうにか困らなくなった頃には、鬱憤が体に張り付いていた。

 

国が変わっても、人は変わらない。

アドバンテージを取ってくるやつは、何人でも変わらない。

 

分かりやすく焦げた肉を出すレストラン。

白人に笑顔、こちらに仏頂面。

色は違うが人間だぜ。

 

立てられた中指。

キツい口臭でがなり立てなくても、あんたの言ってる英語は分かってるよ。

 

だから、いつか見てろよ。

日本でもカナダでも、肉体的にも精神的にも受けた全てに、今に見てろよ。

 

今に見てろよ……だった。

もう、現在進行形ではない。

 

今回の話を書き終えて、ケジメがついた。

報いたい人と思いにも、ちゃんと向き合えた。

逃げなかった。

だから、ありがとう。

さようなら。

 

 

キリがないな。

マイナスばっか見ていたら、キリがない。

 

それでも、思考が行くんだよ。

昔の記憶なんか連れて来ちゃってさ。

学ばないね、あんたも好きだね。

 

金は大事だ。

いや、あえてお金と言おう。

 

良いものを着ていたら第二言語のアジア人だって白人並みに扱ってもらえる。

ピックアップトラックで乗りつければ、バカにされて笑われない。

 

でも、それが何だっていうんだ?

それが幸せの形か?

 

書いていて気持ちの悪くなる文章だ。

 

対等なんてあるのかね。

この国にいる限り、俺らは一生、外国人。

よーいドンで、拒否する人は俺らを拒否する。

 

でも、それが何だっていうんだ?

 

この国にも素晴らしい人はたくさんいるし、人が圧倒的に少ない分ストレスも少ない。

それでいいじゃないか。

そこだけに目をやっていれば、それできっと幸せなんだ。

 

そんな考えを実行できたら、今日も明日も明後日も、晴れだろう。

 

傘もいらない。

毎日が夏休み。

 

僕らの七日間戦争。

 

街でもらった毒を餌に記憶を釣る。それで頭を悩ます生活を送っていても、いつか、そんな風に思える日が来るのだろうか。

 

そんな日が来たら、素晴らしい。

皮肉でも何でもなく、素直にそう思う。

 

じゃあ、それまで書こう。

そんなエレクトリカルパレードな日がやってくるまで、思いを、記憶を、発想を、鬱憤を書き続けよう。

 

さぁ、朝の六時を過ぎた。

明日、じゃなくて、今日の仕事を思うとワァオってなるけど、それはそれ。

多めにチョコを持っていけば、きっと乗り切れるはずだ。

 

 

 

頭の中垂れ流しを読んでくださったあなたにも、ありがとうを送ります。

 

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