七日後の秘密

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「急に呼び出して悪い」

 

「それはいいけど、誰もいないよね」

 

「誰もって?」

 

「ヤマカワさんとか」

 

「大丈夫。いない、いない」

 

「本当に? 倉庫なんかに呼び出すから、構えちゃったよ」

 

「ごめんな」

 

「いいよ。それよりさ、月曜どうだった? やっぱり新しいことされた?」

 

「月曜? あぁ、水のやつ?」

 

「うん。あれ、ひどくない? 着替えなんて持ってないから、ビショビショのまま帰ったよ」

 

「俺も。すれ違う人にジロジロ見られた」

 

「あんなの、何が楽しいんだろうね?」

 

「あいつらが笑ってしてくるやつ、全く理解できない」

 

「最低だね」

 

「あぁ、最低だ」

 

「あのさ、聞くのが怖いんだけど、何か緊急事態あった?」

 

「いや、大丈夫。今のところは何の連絡もない。今日呼んだのは、ヤマカワ関連のことじゃないんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「ちょっと聞いて欲しいことがあって」

 

「うん。どうしたの」

 

「あのさ、タカギ先生って、結婚してたっけ?」

 

「タカギ先生? 保健室の?」

 

「あぁ」

 

「いや、知らない。保健室のタカギ先生でしょ? 結婚してるなんて話、聞いたことないよ」

 

「そっか」

 

「何で? 何かあったの?」

 

「先週の水曜なんだけど、なんとなくヤマカワとかに呼び出される気がしたから、保健室に逃げたんだ。水曜って、よく呼び出しがあるから」

 

「うん。水曜の昼休み明けって、危ないもんね」

 

「危ない。事情は話してないけど、タカギ先生って基本なんにも言ってこないから、その日も『頭が痛い』って言って、寝かしてもらってたんだ」

 

「僕も時々そうしてる」

 

「あそこさ、寝る時、あのカーテンみたいのでベッドをグルッと隠すだろ? その日もタカギ先生がそうしてくれたんだけど、滑りが悪かったのか、ちょうど枕の部分にちょっとした隙間が出来たんだ。本当にちょっとなんだけど、自分で閉めるのもなんだから、そのままにしてたの。俺が寝てたベットは入り口側だったから、そこからは先生の後ろ姿が見える感じ」

 

「うん」

 

「いつもそうなんだけど、寝っ転がっても寝れないから、天井をずっと見てた。そしたら、『ジャキッ ジャキッ』って音が聞こえてきて。ゆっくりと、何かを切るような音」

 

「音?」

 

「あぁ。その時、部屋には俺と先生しかいなかったから、気になって隙間から覗いたんだ。ハサミは見えたから、机の上で何か切ってるのは分かったんだけど、何を切ってるのかまでは見えなかった。何か作業をしてるんだと思って気にしないようにしたけど、途中から声も聞こえ出して」

 

「声って、先生の?」

 

「『出てくるな』って、声。最初は小さくて何を言ってるのか聞き取れなかったけど、意識したらだんだんクリアに聞こえてきた。『出てくるな』『出てくるな』って」

 

「え、それはサエキに対して言ってたの?」

 

「いや、独り言なんだと思う」

 

「『出てくるな』って?」

 

「何かを切りながら、小さい声でずっと。何だか変な感じがして、先生の後ろ姿から目が離せなくなった」

 

「その時、何か声をかけた?」

 

「かけないよ。かけれないよ。それから少しして、先生が誰かに呼ばれて部屋を出て行ったんだけど、いったい何を切ってたのか凄い気になってね」

 

「もしかして、ベッドから出たの?」

 

「五分くらい待ったんだけど、先生帰ってこなかったから」

 

「出ちゃったんだ」

 

「だって、訳の分からないこと言いながら切ってたんだぜ」

 

「それで、机の上に何があったの?」

 

「机の上には何もなかった。切ってたものは先生が部屋を出てく時に、引き出しにしまってたからな」

 

「その引き出し、開けてないよね?」

 

「開けたよ。そこまでいったら開けるだろ」

 

「開けないよ。開けちゃダメだよ」

 

「そんなこと言われも、もう遅いよ。開けたんだから。まぁとにかく、そこには赤い布っていうか、お守りみたいなやつがバラバラに切られてあった」

 

「お守り?」

 

「あぁ。交通安全みたいなやつ。何のお守りかは分からなかったけど、バラバラだった」

 

「あのさ、それやってたの、本当にタカギ先生だよね? 保健室の」

 

「そうだよ。それ以外にありえない」

 

「何でそんなこと」

 

「分からない。それに、そこにあったのはお守りだけじゃないんだ。バラバラになったお守りの下に、絵があった」

 

「絵?」

 

「うん、これ。この絵」

 

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「何、これ?」

 

「分からない」

 

「ねぇ、何でこの絵をサエキが持ってるの?」

 

「引き出しを開けてこの絵を見つけた時、保健室に生徒が入ってきたんだ。それで咄嗟にポケットに入れた」

 

「その時、先生も帰ってきたの?」

 

「いや、生徒だけ。確か、ケンジと同じクラスのシミズ君だと思う。なんか、タカギ先生を探してるみたいだったけど、『いませんよ』って伝えて、気まずくなったからそのまま部屋を出た」

 

「ねぇ、その絵の裏に何か書いてあるよ」

 

七日後

 

「これね。家に帰って、ちゃんと見た時に気付いた」

 

「七日後って、何?」

 

「分からない。全然、意味が分からない」

 

「下に、ほら、そこに書いてある日付って、それ先週のだよね」

 

「だと思うよ。日付的に先週の水曜日なんじゃない」

 

「じゃあ、七日後って」

 

「今日、だな」

 

「何か、あった?」

 

「いや、今のところは何もない」

 

「でもさ、タカギ先生はサエキが絵を取ったって知らないかもしれないでしょ? だってあの時、戻ってこなかったんだから」

 

「戻ってはこなかったけど、絵と一緒に俺もいなくなってるからな」

 

「サエキの他にも生徒が入ってきたって言ってたよね、じゃあその子が取ったってことも考えられるでしょ? だったら……あ」

 

「何? どうしたの?」

 

「その生徒……さっき、シミズ君だって言ったよね?」

 

「あぁ。ケンジのクラスの子だよな」

 

「そのシミズ君、二時間目の後に保健室へ行って、そのまま早退したって聞いたよ」

 

「……え?」

 

 

 

タン

タン

タン

 

タン

タン

タン

 

ガラッ

 

 

「あっ、本当にいた。何やってんだお前らこんなことで。まぁ、いいや。おぃサエキ、タカギ先生に、お前がここにいるからって言われて来たんだけど、なんか急ぎらしいんだ。渡した資料のことで話があるみたいだから、至急、保健室へ行ってくれ」

 

 

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〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉ミチコオノ

 

 

 

 

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