「放課後のジェットリー」は眠らない

「何でその名前なんだよ?」 「何が?」 「ラジオネーム。変だろ、それ」 「変じゃねーよ。ちゃんと計算して付けた名前だぞ」 「『放課後のジェットリー』が?」 「いいか、ラジオネームってのはインパクトが命だ。名前八割、内容二割って言うだろ。そんだけ…

ここにいるよ

駐車場のライトに照らされた車体が汚れている。 泥で出来た線を指先で擦り、ユウタは運転席のドアを開けた。 「はい、ミルクティーとチョココロネ。ミニクロワッサンはなかったから、代わりにチョコデニッシュ買ってきた。好きだったろ?」 「うん、ありがと…

あんたやあんた達の歌をうたおう

灰色の壁に投げた石が影になって夜に溶け込む 盗んだ菓子を頬張っても離した思いは戻らない 帰れなかった校庭でお前は何を見ていた 蹴飛ばされた帰り道でお前は何を見ていた 騒がしい国道に消された叫びジェスチャーだけじゃ掴めなかった 首にかけてた銀の鍵…

アチラとコチラ (完結)

3つ目 出来過ぎた展開に、都合の良いタイミング。 この話をもし小説として書くのなら、プロットの段階で大幅に修正しなければいけなくなるだろう。 まるで、ご都合主義の王道を行くようなストーリー。3つ目の岐路は、そんな事例の連続で作られていった。 …

アチラとコチラ (2つ目)

2つ目 駅前の公衆トイレ 風が強い静かな夜 階段で見た腕時計 記憶に強く残っている場面がある。 それは匂いや音を伴い、時間が経っても薄れることなく頭の中に存在し続ける。 私が経験した2つ目の人生の岐路は、そういったいくつかの場面の先に用意されて…

アチラとコチラ (1つ目)

並行世界、パラレルワールド。 呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。 私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。 宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ…

Aの中で、Bを見る

制限があっても、与えられた中で花を見つける。 まだ大洋ホエールズが生きていた頃、私はコントローラーが絶対に回ってこない「ファミコン応援係」という役を与えられていた。 仲間に入れてもらえるアイテム、ファンタオレンジを献上して、所定の位置に座る…

出し続ければ開くって、本気でそう信じてるよ

仕事着を通して見渡す街に 暮れも明けも存在しない 夜になったら ただ忙しく 朝になれば ただ煙たい 鏡を見つめて息を吐く 固まった頬を揉みほぐす ウィードが溢れる帰り道 赤い目玉が笑っている こちらを睨んで吠える狼 立てた中指をしまってくれ 憂いを晴…

こんにちは

So this is Xmas And what have you done 何をしたのかと問われれば、「生きてきた」と答えよう。 五匹の猫がヒーターの通気孔を塞いでいる午前三時半。 丑三つ時の四角い部屋には、離婚記念で空を飛んできた義理の母が寝息を立てている。 約一ヶ月の滞在。 …

残った欠片との別れ 

雪が降った木曜の朝8時、ブラックももひきをはいた私は、リクライニングチェアーに腰掛けて、口を大きく開いていた。 目の前にはマスクをしたインド系歯科医。 彼のタレ目に見守られ、これでもかとリピートされるクリスマスソングに包まれながら、残り1本…

告知

Amazon Kindleストアで電子書籍「アーティフィシャル・フラワーズ」を出版しました。 この作品のテーマは、「偽物」「本物」「血の繋がり」そして、「人を好きになること」です。 こちらには、表題作の他にもう一編、自分にとって思い入れの深い作品である「…

好きな人はいますか?

週間予報に見つけた雪マーク。 楓の国は、もう寒い。 コタツが主役の家で育ったせいか、私は寒さに弱い。 なので、出勤時には防寒ジャケットのジップを上まであげ、手袋をしてハンドルを握っている。 こんな調子では、近日中にブラックももひきの姿を拝むこ…

ユワシャ

ハロウィンに特別な思い入れはない。 出勤と同時に化けの皮を被っているのであえて仮装する必要はなく、トリックを披露する場も、トリートを配る機会もないので、職場のバスケットに詰め込まれていた甘いチョコ菓子をかじる以外は、いたって普通の水曜日だっ…

終わったんです

気持ちが高まっている。 そんな時は、タイプじゃなくてノートに書き出す。 まとまらなくなるのは分かっている。だからそのまま書かないが、今日は構わずタイプする。 只今、こちらは午前五時二十二分。 サーモスタットのパネルに映し出された気温は、4度だ…

13インチの鎮魂歌

腕を押さえてめくるスウェット 横に走った赤い線 ミミズみたいな赤い線 外に出せずに向けた刃 二個目の蛍光灯が点滅する 為すすべがなくて無言で笑う 楽しくもないのに手を叩く 「縦に引いたらマルバツができる」 勝っても負ける真っ赤なゲーム 角はいつだっ…

三つのお知らせ

皆様、こんにちは。 今回は、三つのお知らせがあります。 まず、一つ目なのですが、Amazon Kindle ストアで電子書籍「今川焼きとナポレオン」を出版しました。 以下が、あらすじの書かれている商品ページになります。 今川焼きとナポレオン 作者: 高岡ヨシ …

白旗の行進

月曜の影を踏んでも休息はこない 日曜の券を貯めたってやってこない 口だけで笑うと削られるから しっかりと目を開けて内側を見るんだ 理屈にすがると心が尖るから しっかりと目を開けて内側を見るんだ そうやって息をして 朝がない日々を過ごす 昨日と今日…

ふたり乗りで行こう

5:56に目を覚まし 少し祈って襖を開ける シンクに出来た皿の山 尖った先から日が昇る Fコードの音が響く ガスのコンロがリズムを刻み 薄暗い玉子の花を咲かす 透明になるための白いシャツ 用のないコンビニで息をして 8:11の準急に乗る 広告と景色が…

報う

八月が両肩にのっかる バケツに入れても消えないってさ 綺麗なガラスは悪意を通す 頼んだ覚えはないんだけどな 隅の隅 奥の奥 ここにいるってよく分かったね ぶつけられたのはボールじゃない こんなに痛いのはボールじゃない 塩素が空気に色をつける もう 一…

12年かかって見た景色

12年かかって見た景色。 12年前。 お金も、仕事も、居場所もなかった。 12年前。 「柱もねぇ、壁もねぇ、床板まともにはまってねぇ」幾三ハウスから始まった生活。 ダンボールをタンスにし、結婚記念日にウェンディーズのバーガーセットを食べていた。…

満天の星をみたか

満天の星をみたか 寒さの産声が響く中 黒を濃くした夜空に浮かぶ 満天の星をみたか 工場から漏れる煙も 街を埋める電波でも覆えない 内なる想いを照らす 満天の星をみたか 俺は見た 真夜中の真ん中に開けた窓から 溢れる星を確かに見た 四方に散らばり輝く星…

お知らせ 〈茜橋で待ってます〉

Amazon Kindleストアで電子書籍「茜橋で待ってます」を出版しました。 こちらで以前発表したものに加筆して、頭の中にある思いを掘り下げました。 前回の「歩けばいい」で賞を頂いたことにより、ありがたく扉は開きました。 今まで見過ごし続けてきたタイミ…

ご報告

自身の作品である「歩けばいい」が Amazon × よしもとクリエイティブ・エージェンシーが主催する「原作開発プロジェクト」において優秀賞を受賞しました。 ドアが開き、橋がかかった事がとても嬉しいです。 作品を読んでくださった方々、選んでくださった方…

午前二時の哀歌

チョークの粉を体に浴びて 黒板の枠を飛び越える 素足で履いたエアジョーダン 真っ白なままで高く跳ぶ 黒目の奥が本当の正体 教室のライトじゃ照らせない 椅子を蹴られてうずくまり 赤子の目線で床を這う 服に残るバニラ 頭上で割れる卵 シャツを脱いで素肌…

この土地は誰のもの?

メインストリートのコーヒーショップ 右肩に彫られたハイダのイーグル 握手をした友人はもういない 「弓を引く者」 彼はその名を捨てたと言った トライブを抜けた者 居場所を探す者 私も流れてここに来た 「よそ者」レッテルの永住者 私はあなたの敵ではない…

その先で会おう

キャンバスで吠えるオオカミ 睨む両目に用はない 道を塞ぐ霧と影 先へ行くんだ どいてくれ 取るに足らないジャパニーズ いや違う そんな立派なものじゃない 生まれた場所で生きられなかった 誇る過去など持っていない 袖を引く手を振り払う 幻覚の中じゃ踊ら…

今が永遠に続きはしない

三月になりました。 相変わらず時間は駆け足です。 何というか、誰かに五時間ほどちょろまかされている錯覚に陥ります。 最近、子供の頃よく耳にしていたオノデン(秋葉原にある電気屋さん)のCMソングが頭の中で流れます。 宇宙的な歌詞で電気の世界を紹介…

整いました

皆様、お久しぶりです。 2018年 2月22日 出版登録の手続きが済み、約3ヶ月遅れの新年がやってきました。 ちなみに昨夜見た初夢は、明け方の浅瀬で猫餌を仕分けするというものでした。 目覚めて頭に浮かんだ言葉は、明けましてトゥナイト。 就寝前に…

匂わないシルエット

*** あいつが狂っているって? 冗談じゃない 目はしっかり開いてたぜ あの子がイカれているって? 何を言ってるんだ 繊細で鋭いだけだろ 存在が浮いていると笑われても 好きにさせておけばいい 無理に溶け込み泳いでも いつかは溺れてしまうからね 「気味…

自分のケツは、自分で拭きます 〈高岡ヨシ + 大関いずみ〉

「おーい、君ぃー! 聞こえるかー? そんなとこで、何してるんだー?」 「あっ! お勤めごくろうさまです! あのー! わざわざ来てもらって悪いんですが、間に合ってまーす!」 「いやー、えっ? 間に合ってるって、何だろうなー? とにかくさー、そこ危ない…

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