「放課後のジェットリー」は眠らない

「何でその名前なんだよ?」

「何が?」

「ラジオネーム。変だろ、それ」

「変じゃねーよ。ちゃんと計算して付けた名前だぞ」

「『放課後のジェットリー』が?」

「いいか、ラジオネームってのはインパクトが命だ。名前八割、内容二割って言うだろ。そんだけネームは重要なんだよ」

「そんな比率、聞いたことねぇよ」

「考えてみろ。何百枚の応募から選ぶんだ。ジャブを何発撃ってもしょうがねーだろ。はなからストレートだよ」

「そういうもんなのか」

「あぁ、そういうもんだ」

「じゃあ、インパクトはいいとして、何でその名前なんだよ? お前、ジェットリー好きだったっけ?」

「いや、別に」

「だったら何で?」

「好きとか嫌いとかじゃねーんだって。ちゃんと法則で付けてんだから。いいか、『放課後のジェットリー』って聞いて、何を思い浮かべる?」

「何って、ふざけた名前だなぁって」

「違うんだよ。そうじゃなくてさー。オッケー、じゃあ分けて考えよう。なら、『放課後』って聞いて何が浮かぶ?」

「放課後? えー、放課後、放課後。放課後の……魔術師?」

「金田一かよ。随分古いな。時空超えてんじゃん」

「いや、それくらいでしょ、放課後で連想するものは」

「ダメ。全然ダメ。こりゃ、一回テストしねーとな」

「何だテストって?」

「お前の思考パターンのテストだよ。そんじゃー、『名探偵』だったらどうだ? 何が浮かぶ?」

「名探偵は、コナンだろ」

「不正解」

「何、これクイズなの?」

「クイズじゃねーよ。でも不正解。じゃあ、『工藤』は?」

「工藤? えー、工藤は、新一……かな」

「また不正解だ。コナンに新一って、お前の頭の中、青山先生ワールド一色じゃねーか」

「当たり前だろ。名探偵に工藤だったらどう考えたってコナンだろうが」

「違うんだよ、しょうがねー奴だなー。じゃあ、最後。『毛利』で浮かぶのは?」

「だから誘導尋問だろ。どのバス乗っても青山ワールド行きじゃねぇか」

「お前が勝手に乗ってるだけだろ! 勝手に乗車して文句言って、とんだクレーマーだな。青山先生に謝れ」

「青山先生関係ないだろ。とにかく、今までの流れなら小五郎も蘭も引っ掛けだろ。じゃあ、元就。毛利元就。……いや、ど真ん中はきっとハズレだ。やっぱ元就やめて、輝元でいく」

「輝元? 跡取りか? まー、お前がどんだけ家督相続させようが、残念ながら不正解だ」

「ていうかさ、その無茶苦茶なクイズの答えあるのかよ」

「だからクイズじゃねーって。クイズじゃねーけど、模範解答はあるぞ」

「何だよ模範解答って。何かいつもの面倒くさいパターンになってきたな。なぁ、その答え聞かなくていいからさ、コンビニ行こうぜ。腹減ったから何か食いたい」

「マジかよー。この時間のコンビニはやめとこうぜ。まだクラスの奴らいるって」

「いるかなぁ?」

「四時過ぎたばっかだろ、絶対にいる。イマムラなんかに見つかったらうるさくなるぜー」

「まぁ、確かにな。この前も買ったばっかのライフガードをパクられたし」

「なー、やめとこーぜ。触らぬナントカにナントカだ」

「ナントカ多過ぎだろ。ボカシまくって何だか分かんねぇよ」

「分かんねーままでいいんだよ。あれだ、腹減ってんならナカネベーカリー行こうぜ。今ならタイムセールで安くなってんぞ」

「この時間に行ってもレーズンパンしか残ってないだろ」

「いや、今日はチョココロネがある気がする。気がするっていうか、ある。とにかく行こうぜ」

 

***

 

「やっぱレーズンパンしかなかったじゃねぇか」

「あぁ。てことは、俺らまた貯金したな」

「はぁ? 何の話だよ」

「運だよ、運」

「何だ、頭おかしくなったか?」

「分かんねーのか? ラックだよ。ラッキーって言った方が分かるか」

「そこじゃねぇよ。何だよ貯金って」

「だからな、もしあそこでチョココロネがあったとするだろ。そしたらお前、今日の分のラックを全部使っちまってたとこだったぞ」

「はぁ」

『はぁ』じゃねーよ。ピントこねーなー」

「ピンとくる方がどうかしてるだろ」

「とにかく、俺らは今日もラックを貯めたぞ」

「お前の言う通りだと、今までの分で俺たちの貯金額は凄いことになってるな」

「あぁ、ちゃんと数えたらとんでもねーぞ。何年、いや、何十年分のチョココロネだ」

「全く嬉しくねぇな」

「チョココロネで考えるからだろ。もっと上をイメージしろよ。そのために想像力ってのがあるんだから」

「チョココロネ植え付けたのお前だろうが。まぁ、いいや。あー、何かダルいなぁ。何かないの、レーズンパン以外で、何かさ、パッとするようなこと」

「あるわけねーだろ。そんなもんあったら、商店街の隅っこでレーズンパンかじってねーよ」

「だな」

「あぁ、今まではな。だが、これからは違うぞ。なんつったって、イカしたラジオネームがあるからな」

「だから『放課後のジェットリー』だろ? それ使って何か変わるとは思えないけどな」

「お前は何にも分かってない。インパクトの黄金比なめんなよ。近いうちに俺のラジオネームでFMとAMに革命を起こす。言うなれば電波ジャックだ!」

「はぁ」

「だから『はぁ』はやめろって。それから死んだ目で俺を見るな。やめろ、その目をやめろっ!」

「いや、適切な対応だろ」

「ていうかさ、さっきの説明終わってなくない? 確か模範解答で止まってんだろ」

「えー、もういいよー。いつものくだらない話になるだけだろ。もう帰って寝たい」

「帰れねーだろ。今日、火曜だぜ。今帰ったらヤってる最中の可能性大だろ」

「うわぁ、今日火曜じゃん。マジで最悪」

「酒くせー熊ヤローにデレデレしてる母ちゃんの顔を拝みたくなければ、俺の模範解答を聞いておくべきだな」

「もー、マジでめんどくせぇ。めんどくせぇけど、奴の顔見るんだったら、お前のくだらない話の方がマシだ」

「だろぉ?」

「『だろぉ?』じゃねーだろ。何でテンション上がってんだよ。あー、何かムカつくなぁ。お前の楽しそうな顔が特にムカつく」

「まぁ、イライラするな。ジュース奢ってやるからよ。パックのレモンティーでいいか?」

「勝手に安い方にすんな。ダメ。パック禁止令。ライフガードでよろしく」

「しれっとグレードアップしてんじゃねーよ。しょーがねーなー。四畳半育ちは注文が多くて困るよ」

「お前だって四畳半だろ! ゴタゴタ言うと、からあげクン追加すんぞ」

「おー怖っ。四畳半の欲望は底なしだな。てか、買ってきたら俺の話聞けよ! こっちはイマムラに見つかるリスク背負って行くんだからよ。ギブアンドリターンだからな」

「それを言うならギブアンドテイクだろ。ブタゴリラかお前は」

「つべこべうるせーよ! 走るからもう聞こえねーぞ!」

 

***


「で、何だよ模範解答って」

「お前、食い過ぎだって! さっき一個食ったろ。ふざけんなよ、無限に湧いてくるもんじゃねーんだぞ、からあげクンは」

「分かったよ。これで最後だから。だから何なんだよ、模範解答。コナンとホームズ以外に名探偵で浮かばないだろ?」 

「いくつだって浮かぶだろ。ミツヒコアサミとか、コースケキンダイチとか」

「何でコシノジュンコみたいに呼ぶんだよ」

「敬意だよ、敬意。国際的に名が知れてるからな。でもそういった顔ぶれも正解じゃない。有名過ぎて意外性がない」

「有名じゃダメなのか?」

「あぁ。それじゃみんな答えられるからな。だから、これぞってチョイスが必要なんだ。その法則でいくと、名探偵は神宮寺三郎だろ」

「ジングウジサブロウ? 誰だそれ」

「あぁ? 神宮寺三郎を知らないのか? データイーストの貴公子だぞ」

「データイースト? 貴公子? 何の話をしてんだよ」

「お前んちファミコンなかったのかよ。あの当時のアドベンチャーゲームって言ったら、ポートピア連続殺人事件と新宿中央公園殺人事件だろ」

「ポートピアは知ってるけど、その、神宮寺の方はちょっと」

「お前それ、神宮寺好きを公言して、御苑洋子を知らないって言ってるようなもんだぞ」

「その例えが分かんねぇよ」

「まぁ、だから俺が言いたいのはそんな感じの意外性だ。おぉ、そう来たかってチョイス。それが必勝の法則だ」

「俺が神宮寺三郎を知らない時点で、その法則は崩壊してるだろ。まぁいいや、じゃあ工藤は?」

「公康だ」

「キミヤス? 工藤公康って、西武にいたあのピッチャーの? ん? それ意外性あるか? 結構有名だと思うけど」

「こっちは辿り着く難易度の話をしてんだよ。いいか、言葉を聞いて最初に浮かべるのはアニメのキャラクターか芸能人だ。それこそお前が言った工藤新一とか、工藤優作とか、芸能人だったら工藤静香がいるだろ。そういうのを差し置いて、公康がくるか?」

「いや、野球好きだったらむしろ真っ先に公康だと思うけどな」

「こないだろ! 工藤兄弟を押しのけて、背番号47を選ぶかよ」

「工藤兄弟だったら、公康の方が……」

「屁理屈はいい! はいっ、次!」

「出た。強制終了。調子悪い時のWindows XPばりだな。じゃあ、毛利は何だよ。小五郎でも蘭でも元就でもないんだろ。どんな意外性がくるんだよ?」

「毛利つったら名人だろ。それ一択以外に何もないだろ」

「毛利、名人? 毛利名人?」

「またかよ! お前どっかに小学生時代の記憶落としてきたんじゃねーの? 高橋名人のライバル、コロコロのサンバイザーを着こなせる、あの毛利名人だよ」

「あの、って言われてもな」

「お前、ピンとこないにも程があるぞ。チェリオ飲んでやり直してこいよ」

「ていうかさ、その模範解答って、お前が好きなもの並べてるだけだろ。意外性って言うか、ただの好みのような気がすんだけど」

「何だ? またクレームか。文句言うならそのライフガード返せ」

「これはくだらない話を聞いてやる代わりの給料だろ。すり替えんなよ」

「とにかく、ただの好みで言ってんじゃねーの。何度も言うように、黄金比にのっとった法則なんだぞ」

「ここまできたら詐欺にしか聞こえないな」

「詐欺じゃねーよ! 人聞き悪いな。意外性の要素を組み込んだ静と動の法則、どっからどう聞いたって科学だろ!」

「慌てぶりが半端ないな。詐欺ご飯の上に、胡散臭さをふりかけてるみたいになってんぞ」

「ふざけんなって! 放課後の響きが哀愁で、ジェットリーが躍動感。はいっ、静と動にインパクトまで合わさった黄金比、記憶に残ること間違いなしだろ! お前な、冷静に考えてみろ。これがもし放課後のモーガンフリーマンだったら、哀愁プラス哀愁になるだろ。そしたらどうなる? 哀愁と哀愁が隣同士になって、哀愁と哀愁が喧嘩するだろ」

「哀愁哀愁うるさいな」

「揚げ足とんなって! お前、そんなに馬鹿にすると、お前のために考えてきた必勝ラジオネーム教えてやんねーぞ」

「いらねぇよ」

「え?」

「そんなのいらねぇ」

「え……いらねーの?」

「あぁ、いらねぇ。だって必要ねぇだろ。ラジオに投稿なんかしねぇんだから」

「え? お前、ラジオに投稿しねーの?」

「しねぇだろ。てか、どんだけうろたえてんだよ。目が泳ぎ過ぎだろ。そんなに驚くことか?」

「驚くっていうか……ショックだろ。だって、ラジオだぜ。みんな大好き、ラジオだぜ?」

「好かれてんの前提で話すなよ。そりゃ、お前みたいに好きな奴もいるだろうけど、みんなじゃないだろ。カレーじゃないんだし」

「カレーと一緒にすんじゃねー!」

「何で怒ってんだよ! 意味分かんねぇよ」

「カレーと一緒にするからだろ! 香ばしさで誤魔化す奴と同じ枠に入れんな。いいか、ピリ辛で香ばしいとな、シーチキンを肉と勘違いするんだよ。で、半分過ぎたぐらいで気付くんだ。『あ、これ肉じゃねぇな』って」

「何の話をしてんだよ。知らねーよ、お前んちのカレー事情なんか」

「馬鹿野郎。こっちは、どれだけショックだったかっていうのを噛み砕いて説明してんだよ」

「そうか。本質まで噛み砕いた馬鹿がいたってことは理解したよ」

「手加減なしだな。鬼かお前は」

「鬼じゃねぇから話を聞いてやってんだろーが」

「だからな、お前のラジオネームは俺のと発想が被らないように、法則その二を使うことにした」

「勝手に進めてんじゃねぇよ。だからいらねぇって」

「貰えるもんは貰っとけよ。後で感謝する日がきっとくるぞ」

「絶対にない」

「そう決めつけるな。旅先とかであるんだよ。まぁそれでな、法則その二はリバイバル枠だ」

「リバイバル枠?」

「あぁ。昔流行ったのが急にまた流行ったりするだろ。ほら、たまごっちとか、あれだ、あのー、たまごっちとか」

「限定的だな」

「それで、そのリバイバルネームに苗字をつけると完全無欠になる」

「苗字? 田中とか、佐藤とか?」

「いや、そういうんじゃなくて、キャッチコピーみたいなやつ。例えば、『帰ってきたウルトラマン』とか。苗字の場所にあるやつ」

「苗字の場所ではないけど、言いたいことは分かる」

「それで、その二つを兼ね備えた名前を考えてきた。発表してもいいか?」

「拒否しても言うんだろ」

「そう、必勝の法則を取り入れたその名前は、『遅れてきたドッチーモ』だ」

「……ごめん。どう反応していいか分からない」

「好きに喜びを表せよ。何なら歌ってもいい」

「歌わないし、そもそも喜んでない」

「内弁慶か?」

「突っ込みたくもないが、使い方間違えてるぞ。なぁ、またピーピー言われるんだろうけど、ドッチーモって何だ?」

「ピーピーなんて言わねーよ。お前んち、テレビなかったもんな」

「14インチ馬鹿にすんな」

「あったなら見てたろ。タッキーと鈴木京香が出てたCM」

「いや、だからな、CMの前にドッチーモって何だよ」

「おい、そっからかよ。ちょっと頭使えば名前で連想できんだろ。ドッチーモ、どっちーも、どっちも。ほら、これでもう分かんだろ?」

「それで分かったらエスパーだ」

「マジかよ。こんなの『バナナと言ったら黄色』レベルだぞ。『どっちも、だからドッチーモ』てことは?」

「『てことは?』じゃねーよ。ムカつくな。これ以上引き伸ばしたら、話聞かねぇぞ」

「悪かった悪かった。怒んなって。答えは、PHSにも携帯にもなる魔法の機械、どっちにもなるからドッチーモ。可愛い名前だろ?」

「何か、そのおちゃめ感が癪に触るな。それで、そのドッチーモがラジオネームなのか?」

「違う。それじゃただの懐かしネームになる。『遅れてきたドッチーモ』が正式名称だ。『ちょっと遅れましたけど、20世紀から帰ってきましたよ』ってニュアンスを込めてる。言うなれば銭湯で飲むコーヒー牛乳みたいなもんだ」

「今言った説明、ひとつも共感できなかったわ」

「お前の頭の固さにビックリだよ。本当に何も感じない? ほら、親しみやすい近所の兄ちゃん的な空気」

「俺が感じるのは、話しかけちゃいけない近所の不審者的な空気だ」

「おい! 謝れ! とにかく、俺に謝れ!」

「ビックリした! 大きな声出すなよ。だって……」

「だってじゃない! 謝れ!」

「ちょ、え、分かったよ。すいませんでした」

「分かればいい」

「何だよ、急に」

「とにかく、その名前にすると『ドッチーさん』って呼ばれる可能性が高くなる。そうなったらこっちのもんだ、ドッチーさんだぞ、子供から大人まで幅広く親しみやすいマスコット的な存在になれる。それに、名前の響きもCMに出てたタッキーを連想させて一石二鳥だしな」

「いや、無理だろ。強引に寄せた分、本家との差が明確になってる」

「発言が後ろ向きだなー。『遅れてきたさん』じゃなくて、『ドッチーさん』だぞ、最高じゃないか! こっちなんか『放課後さん』だっていうのによ」

「『ジャットリーさん』だと色々問題になるからな」

「まんま本人だからな」

「間違いない」

「それにお前のラジオネームは局を選ばない優れものだぞ。俺のは名前的に深夜寄りになるけど、お前のは『お早うネットワーク』枠も夢じゃない。これヤベーな。『ビバリー昼ズ』枠もいけんじゃないか」

「盛り上がってるとこ全部ぶっ壊すようで悪いんだけど、出さねぇから。俺、ラジオ投稿しねぇから。申し訳な……いや、何で謝ってんのか全く分からないけど、ごめん、そのラジオネームいらない」

「分かったよ、分かった。語呂が嫌なんだろ? リズムがいまいちって思ったんだろ。実はさ、俺も薄々感じてたんだ。うん、オッケー。分かった! お前がそんなに言うなら俺も本気出す。新しいラジオネーム、今度は黄金比をばっちり入れて考えてきてやるよ。全くしょーがねーなー。本気出すってなると、徹夜だな。今夜は忙しくなるぞ! 明日までには用意してやるから、どこに投稿するかちゃんと決めておけよ!」

 

***

 

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ここにいるよ

 駐車場のライトに照らされた車体が汚れている。

 泥で出来た線を指先で擦り、ユウタは運転席のドアを開けた。

「はい、ミルクティーとチョココロネ。ミニクロワッサンはなかったから、代わりにチョコデニッシュ買ってきた。好きだったろ?」

「うん、ありがと。デニッシュか、確かによく食べてたね」

「違うのがよかったか?」

「ううん。これでいい。ありがと」

 ミサキは受け取ったビニール袋を足元に置き、ショルダーバッグから財布を取り出した。

「いくらした?」

「いいよ、別に」

「いくらよ?」

「いいって。大したもんじゃないから」

「こういうの、ちゃんとしたいから。いくら?」

「ミサキ、いいから。お前、そういうとこ何にも変わんないな。菓子パンぐらい黙って受け取れよ」

 ペットボトルの蓋を開けたユウタは、お茶を一口飲んでから座席にもたれかかった。

「分かった。ありがとう」

「中身はあれだけど、見た目は、少し変わったな」

「え?」

「だから、外見。でもまぁ、普通に考えてそうだよな。あれからもう五年だもんな」

「そうかなぁ。別に変わってないと思うけど。しばらく見てなかったからじゃない?」

「なぁ、ミサキ。何で帰ってきたんだ?」

 嗜めるような口調で話したユウタの声が聞こえ、ミサキの体は固まった。

「電話で話した通りだよ。仕事を辞めたから」 

「仕事辞めたからって、帰ってくることないだろ」

「分かってる。ただ、近くに用事があったからちょっと寄っただけ」

 ミサキは手に持っていたデニッシュを袋に戻した。

「長居なんて、するつもりないよな?」

 ゆっくりと声を出したユウタは、確認するようにミサキの顔を見た。

「ないよ」

「持ってる荷物、多くないか? 向こうの部屋は引き払ったのか?」

「少し前にね。でも大丈夫、ここに戻る気なんてないから。さっきも言ったでしょ? 近くに用事があったから来ただけ。それに、この前の電話でユウちゃん相当落ちてたでしょ。それが少し気になって」

「俺が? 何の話だよ?」

「サカマキのおじさんのこと。あんなに落ちてたの、電話するようになって初めてだったから」

「そうか。何か悪かったな」

「いいよ別に。思ってたよりも元気そうで安心したから」

 

 コンビニの入り口付近で制服を着た三人の学生がはしゃいでいる。その様子を横目で見たユウタは、大きく息を吐いて視線をフロントガラスに移した。

「モリタはまだ入ってるけど、タハラとカジタニが出てきた」

「そう。カジタニは分かるけど、タハラまで?」

 ミサキの声のトーンが上がった。

「あぁ、俺も驚いたよ。たったの五年。想像以上の速さだ」

「二人ともまだこの街に?」

「いると思うよ。実際に見たわけじゃないけど、狭い街だからな。色んな話が入ってくるよ」

「そうだろうね。タハラなんてあの親だから、一生働く必要ないしね」

 ミルクティーの香りが仄かに漂う車内で、ミサキは「バカみたい」と呟いた。

「あの二人が出てきたせいで、また事件の話題が増えた。朝から晩までうるさいもんだ。しかしどうして人は人の噂が好きなんだろうな。ただただ、迷惑だ。結局変わんねーよ。何年経とうが、この街は」

「そもそも、何でこっちが身を隠すような生活をしなきゃいけないのよ。私たちは被害者でしょ? あることないこと書かれたことだって、訂正されたじゃない。なのに何でまだ陰口叩かれなきゃいけないのよ」

 ミサキの声が薄暗い車内に響く。後に続く沈黙が圧となり、辺りの空気を薄くした。

「イメージだよ。一度ついたイメージは、いくら洗っても落ちやしない。それが本当だろうが嘘だろうが関係ないんだ。特にこんな街じゃな」

 ユウタが言葉を吐いてから少しして、隣から笑ったような声が聞こえた。それは微かだったが、確かに聞こえた。

 不可解な音に引き付けられるように顔を向けると、ミサキが力の抜けた笑みを浮かべていた。

「さっき被害者って言ったけど、私は違う。私は、一緒。ユウちゃんはそうじゃなくても、私はあいつらと一緒。違いなんてない」

 ミサキはそう言って、首を振った。

「一緒って、どういうことだ?」

「一緒は一緒。それが分かったから、怖くて仕事を辞めたんだ」

「だから、どういうことなんだって。それ、ちゃんと説明しろよ」

 湧き上がる苛立ちを抑えるように、ユウタはペットボトルに入ったお茶を飲み干した。

「ごめんね、ユウちゃん。やっぱり、ひとりで抱えるの無理みたい」

「何で謝んだよ。とにかく、どんな話でもいいから話せよ」

 ユウタは深呼吸をひとつして、まっすぐ座り直した。

「本当に、ごめん。……電話でもよく愚痴を聞いてもらってたけど、半年前くらいに二人の先輩が辞めてから環境が酷くなったの。担当する利用者も増えるし、泊まり込み勤務も増えるしで、もう限界だった。そんな時、新しく個室で入ってきた認知症のお婆さんがいてね。その人が、夜中に何度も私のことを呼び出すの。最初はちゃんと部屋に行ったよ。何か緊急だったら大変だからね。でも、そのお婆さん、私が行くと、口を半開きにしてこっちを見てるだけなの。『どうしたんですか?』って声かけても何にも言わなくて。呼び出す時は、ちゃんと話せるのに。そんなことが何度か続いて、呼び出しも無視するようになってたんだけど、違う利用者さんがトラブル起こして大変だった夜に、また連絡があって。私、頭にきて、部屋に行って怒鳴ったの。でも、結構強く怒ったのに、その人、何の反応も示さなくて。またいつもの、ボォーっと口を半開きにしたまま。何かその姿を見てたら、無性に腹が立って怒りを抑えきれなくなった。私、気付いたら、そのお婆さんの頭を叩いて、手の甲を凄い力でつねってたの」

 下げていた顔を上げたミサキは、気持ちを落ち着かせるように両手で顔を擦った。

「あぁ、とうとうやっちゃったって思って。次の日に問題になって呼び出されるのを覚悟してた。だって、前に十年以上勤めてた人が、利用者さんの顔を殴って家族からのクレームでクビになったことがあったから。でも、私は何のお咎めもなかった。だから、私は仕事を辞めなかった。ここで辞めたらこの街を離れて築いてきたものが全部無くなっちゃう気がして怖かった。またあの日々に戻る気がしたから」

「大丈夫か?」

 ミサキの呼吸が浅くなったことに気付いたユウタは、彼女の目を覗き込んだ。

「大丈夫。それで、結果的に私は仕事も、そのお婆さんに関わることもやめなかった。もう絶対手をあげないって、その時は心に誓うんだけど、日々のイライラが溜まって呼び出された夜は、私、また同じことをしてた。しかも、今度はもっとズルくなって、ぶたない代わりに体の目立たない部分を思いっきりつねることにした。そうすると、そうするとね、凄いスッキリして……私、その時、自分がモリタたちみたいだなって思った。今でも夢を見るの。夜、真っ暗な廊下を歩いている自分の姿を。そのお婆さんの部屋を目指して、誰もいない廊下をツカツカツカって、こう、前傾姿勢で歩いてる。彼女の部屋の手前に資料室があるんだけど、そのドアのガラスに私の横顔が映るの。目が据わってて、何ていうか、獲物を狩る前の動物みたいな顔。映ってるのは私の顔なんだけど自分じゃないみたいで、とにかくその顔が、襲われた時に見たモリタたちの顔と一緒だった」

 早口でまくしたてたミサキは、息を整えて祈るように両手を組んだ。

「そこを辞める最後の週は、毎日そのお婆さんの部屋に行くようになってた。何でか分からないけど、毎日やられてるのに、お婆さんは私を呼び出した。それで部屋に行くといつも通り口を開けてるんだけど、私が一歩一歩近づくと、急に思い出したかのように怯えた顔になるの。最後の日の夜も、そんな風に彼女の部屋に行って、近づいて座ってからふくらはぎの裏を目一杯つねったの。いつもはね、そのお婆さん『うぐぅぅ』とか『あがぁぁ』とか言って耐えてるだけなんだけど、その日は、こっち向いて『ごめんね、もう大丈夫だよ』って言ったの。心臓が止まりそうなくらいビックリして、そのお婆さんの顔を見たら、泣いてた。そして、すごい優しい顔で、私の頭を撫でたの。私、つねってるのに。私の頭全部を、ゆっくり、何度も撫でてくれて……」

 ミサキの涙腺が緩んで、顔がグチャグチャになった。

 それから、ミサキはしばらく泣いた。声を出さずに、肩をゆらして泣いた。

「あいつらの中にあるものが、私の中にもある。それが分かった時、怖くて堪らなくなった。このままだと私がそいつらに食われてなくなっちゃう。同じになっちゃうって思った。だから辞めた。これ以上、私があいつらと一緒になるのは絶対に嫌だったから仕事を辞めて、アパートも出た。ごめんなさいって、いつも祈ってる。本当に申し訳ないことをしてしまったから」

 両手を固く握ったまま話し終えたミサキは、深くうなだれた。

 

 小さな呼吸を繰り返すミサキの肩越しに、閑散とした駐車場を見る。

 胸が締め付けられた状態で、ユウタはその空間にミサキの浴衣姿を浮かべた。

 高校二年の夏。初めて二人で出かけた場所は、地元の夏祭りだった。幼い頃から実家の二階で見る花火が一番綺麗だと思っていたが、その日目にした花火は、今まで見たこともないような美しさで夜空を照らしていた。

 事件が起きたのは、それから十ヶ月後のことだった。

 同じクラスの男子生徒三名に襲われ、集団強姦の被害にあったミサキは、その日を境に学校から姿を消した。

 犯人たちが正式に逮捕される前に、ユウタは警察署から呼び出しを受けた。取り調べを受けていた実行犯の三人が口を揃えてユウタの名前を出したからだ。

『コイズミユウタから日常的にいじめを受けており、今回の強姦も彼の指示によるもので断れなかった』

 学校では犯人たちの供述と真逆の立場に置かれてたユウタは、自分にかけられた嫌疑を即座に否定したが、彼らの証言を裏付ける生徒が現れて話がややこしくなった。

 その時は普段のユウタの状況や、犯人たちが行ってきた悪事などを詳しく説明してくれる先生がいて事なきを得たが、彼らが逮捕されてからも、犯人たちの冤罪説やコイズミユウタ真犯人説、さらにはミサキとユウタが企てた美人局説などといったデマの数々がネット上に書かれた。

 狭い街で尾鰭が付いて広がっていく噂。事情をよく知らない人たちにとって、そのゴシップは甘い蜜だった。高校生たちが起こした事件というセンセーショナルな見出しに加え、この話題が地域社会に浸透していった背景には、犯人の一人であるタハラの父親が地元の名士だという事実も少なからず影響していた。

 

「ユウちゃん、これ」

 ミサキはゆっくりと上体をあげ、ズボンのポケットから一枚の紙を出した。

 

 

出来ることなら、理性を捨てるな

出来ることなら、飲み込まれるな

出来ることなら、恨んで生きるな

 

 

「おじさん家に行ったのか?」

 言葉を出した後に、ユウタは息を飲んだ。

「うん。お線香をあげに。その紙、車の鍵の下に畳んであった。どうやってあんなものを手に入れたか分からないけど、トランクにあったものは全部処分したから」

 ミサキが言い終わるのを待たずに、ユウタは目を見開いた。

「処分したって、どこに?」

「玉鈴川に捨てた。大丈夫。ちゃんと、周りに人がいないのを確認して捨てたから」

「捨てたってお前、え? あれ手に入れるのにどれだけ苦労したことか……」

「ユウちゃん、嘘ついててごめん。どうやって切り出していいか分からなくて。本当は、サカマキのおばさんから連絡をもらったんだ。ユウちゃんのことと、セダンのトランクに入ってるもののこと。おばさんすごい心配してた」

「お前、何でだよ。お前が帰ってきたら――」

「ユウちゃん。ユウちゃんは、あいつらみたいになっちゃダメ。気持ちはありがたいけど、復讐なんてしなくていい。そんなことしたら、この街に溢れているデタラメな噂を後押しすることになる」

「でもそれじゃ、あん時潰された気持ちがーー」

「ねぇ、私はここにいるよ」

 ミサキは体勢を変え、ユウタを正面に見据えた。

「私は生きて、ここにいる。まだ死んでない。だから復讐なんてしなくていい。私は生きてるから」

 ミサキは頭を下げて続けた。

「実はずっと考えていることがあって。あいつらが出てくる頃にしようと計画してたんだけど。ユウちゃん、私と一緒に外国に逃げない?」

「外国?」

「別に悪いことしてないから逃げるって表現は変かもしれないけど、この街っていうか、もういっそのこと、この国から逃げるの。それで、誰も私たちのことを知らない場所で生きてく。それが全部を断ち切る手段だって思うんだけど、ダメかな?」

「ちょっと待って。え、何言ってんの?」

「大丈夫。すぐにって訳じゃないから。本当はすぐにでも行きたいけど、予定してたお金が貯まってないから、もう少し働かなきゃいけない。ビザのこともあるから、あと一年後くらい」

「ミサキ、ちょっと待て。急すぎて頭が追いつかない」

「だから、すぐにじゃないよ」

「いや、そういうことじゃなくて」

「ダメかな?」

「ダメ……な訳がない。ダメな訳がないんだけど、その前にはっきりさせなきゃいけないことがある」

「何?」

「もうそんな機会はないって思ってたけど、いつか伝えたいってずっと思ってた」

 一旦、誰もいない駐車場を見詰めたユウタは、息を吐いてミサキに向き合った。

「かたをつけなきゃいけないって生きてきた。それがけじめだって。別にこの街に未練なんかない。ある訳ない。俺とお前が生き直せるなら、海外だろうがどこだろうが構わない。どこだって行く。どこでも行くから、だから、俺ともう一度付き合ってくれないか」
 

 頭を下げたユウタの肩に沈黙が乗っかる。

 その重たい感覚に耐えきれなくなり顔をあげると、大人びた表情をしたミサキがいた。

 

「何言ってるのユウちゃん。しばらく離れたけど、私たち、一度も別れてないよ」

 

 

 

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あんたやあんた達の歌をうたおう

灰色の壁に投げた石が
影になって夜に溶け込む

 

盗んだ菓子を頬張っても
離した思いは戻らない

 

帰れなかった校庭で
お前は何を見ていた

 

蹴飛ばされた帰り道で
お前は何を見ていた

 

騒がしい国道に消された叫び
ジェスチャーだけじゃ掴めなかった

 

首にかけてた銀の鍵
パンクしたままの黒い自転車

 

あんたがいた場面も空気も
忘れた瞬間に消えるんだろ

 

だったら俺はここに残って

あんたやあんた達の歌をうたおう

 


もう戻らないと家を出て
二時間後にはガラスを叩いた

 

片耳だけで踊るピアス
くたびれた香水は煙草に負けた

 

環境のせいだって
借金のせいだって
暴力のせいだって

 

癒えない傷を舐め合っても
カサブタにさえならなかった

 

財布に残った映画の半券
隠した手紙に何を書いた

 

手首に引かれた赤い線
眠剤の先に何が見えた

 

山になったキャスターの吸い殻
指で弾いたスリーナンバー

 

あんたがいた場面も空気も
忘れた瞬間に消えるんだろ

 

だったら俺はここに残って

あんたやあんた達の歌をうたおう

 


受けたマイナスは黒い種だ
忌み嫌って潰すなら
水をやって生かせばいい

 

いびつな花が咲こうとも
決してその首を刈ってはいけない

 

どんな形や色をしていても
きっとあんたを照らすから

 

 

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アチラとコチラ (完結)

 

 

3つ目

 

出来過ぎた展開に、都合の良いタイミング。

この話をもし小説として書くのなら、プロットの段階で大幅に修正しなければいけなくなるだろう。

まるで、ご都合主義の王道を行くようなストーリー。3つ目の岐路は、そんな事例の連続で作られていった。

 

2つ目の岐路で「たまたま」アパートのドアが開いたことにより、コチラの世界にとどまった私は、何とか高校を卒業し、自分を取り巻いていた煩わしさから逃げるようにしてカナダのバンクーバーへと渡った。

バンクーバーでの顛末や、1つ目の岐路となった、私を拾ってくれたグループの詳細などは以下に書かれているので省略します。

はい、宣伝でございます。

 

五厘クラブ

五厘クラブ

 

 

ともかく、異国で勉強する楽しさを知った私は、帰国後に大学へ進んだが、自ら勝手に上げたハードルにつまずき、行き場のない感情に飲み込まれてそこを中退することになった。

それからは、先の見えない毎日が続いた。

生きるために単発の仕事をし、呼吸をするために食事を取る日々。やられていた頃のように眠れない夜が多くなり、心のバランスを徐々に崩していった。

一方通行の救いを求めて訪れた大学病院の精神科に打ちのめされた私は、無色透明の時間の中で、いつしかカナダという国にすがるようになった。

 

あそこへ戻れば、全て上手くいく。

あそこへ帰れば、未来が見える。

 

何でも良かったのだと思う。

ただ、四六時中一緒にいたメンバーが社会に入っていくのを横目で見ていた当時の私には、カナダしかなかった。

あの時、真っ暗な現状が怖くて仕方がなかった。何もないことが恐ろしくて、先を照らしてくれる光を強く求めていた。

変化を切望しているはずなのに、変化を起こす勇気がない。そんな私の背中を押した、いや、蹴ったのは、後に嫁となる人だった。

何故だかは分からないが、彼女は人生を変えるタイミングが来る瞬間を知っていた。

 

「おい、来たぞ」

「ここで飛べ」

「早くしろ」

 

自分の中に抱えたものを処理できず、過去と現在に押し潰されていた私の後頭部を叩き、背中を蹴った。

彼女の後押しを得て重い腰を上げた私は、現地の小学校で日本文化を紹介するという留学プログラムを利用して、オンタリオ州にあるストラトフォードという街へ赴任することになった。

 

岐路

 

ストラトフォードは一風変わった街だった。

人口約3万人の小さな街だが、国際的に有名な芸術祭が毎年4月から10月まで行われている影響で、古き良き街並みが廃れずに維持されている稀有な場所だった。

地元の小学校に赴任していると言ってもボランティアなので勿論収入はなく、生活に余裕はなかったが、メインストリートを歩いているだけでも印象的な景色に出会える美しい街だった。

 

私はその街で、とても不思議な体験をした。

 

ストラトフォードでの滞在が半年ほど過ぎたある日、日本からメンバーのひとりが訪ねてくることになった。

無収入だったので外食など殆どしなかったが、海を越えて会いに来てくれる友人をもてなす店は、味も良く値段もリーズナブルなダイナーと決めていた。

しかし、彼が到着した次の日の昼に目当ての店へ向かうと、入り口のドアには「Sorry, WE'RE CLOSED」という看板がかけられていた。

そんなはずなかった。

彼が来る前にダイナーの定休日は調べていたし、到着したのも真昼間のランチタイムだったので、店じまいをするには早過ぎる時間だった。

条件的に他の選択肢など用意していなかった私の頭は真っ白になったが、閉まった店の前にいても仕方がないので、友人の提案に乗り、メインストリートを歩きながら入れそうなレストランを探すことになった。

身の丈にあった店を求めて彷徨っていると、友人がある建物の前に立ち止まり、「ここにしよう」と指をさした。

彼が示したレストランは外観が地味で、何度もその道を通っているはずなのに記憶に残っていない店だった。

パッとしない見た目に加え、何だが古臭い感じを覚えたので他にしようと勧めたのだが、友人は聞く耳を持たずに店のドアを開けた。

店内に入ると、先客は誰もおらず、外から見るよりも広いダイニングルームがその閑散とした様子に拍車をかけていた。

サーバーに渡されたメニューに載っていた品は、サンドウィッチやバーガーなど一般的なものだったが、その店の壁にかけられている絵がとても変わっていた。そこにあったのは、ヨーロッパ風な内装に不似合いな日本画だったのだ。

目の前にあるアンバランスさが気になり、サーバーに飾られている絵のことを尋ねると、彼女はそれが日本画であると話し、このレストランのオーナーが日本人であることを教えてくれた。

私は自分の耳を疑った。

仮にこの街がトロントやバンクーバーなら特別な話ではないのだが、アジア人を見かけることすら珍しいこの場所では、話の意味合いは大きく変わる。

サーバーの女性に自分の反応の意味を伝えると、彼女はオーナーを呼んでくると言い、店の奥に消えた。

少しして私たちの前に現れた初老の男性は、「こんにちは」と言って頭を下げた。

「ご旅行ですか?」そう尋ねてきた彼に、私はこの街での自分の状況を話した。一通り会話が終わった後に名前を聞かれて答えると、彼は驚いた顔をして私を見た。

私たちは、同じ名前だったのだ。

 

白人が人口の大半を占める典型的なイギリス系の街で、目星をつけていた店が原因不明の臨時休業。訪ねて来てくれた友人が代わりに選んだ地味な店は、日本はおろか、オリエンタルな趣は微塵も感じない外観をしているのにも関わらず、主人が何故だか日本人で、しかも私と同じ名前だった。

 

それだけでも随分と出来過ぎな話だが、自分の娘が出た小学校で日本文化を教えている何処の馬の骨かも分からない日本人に興味を抱いてくれたその方は、私と、無収入状態で無謀にもこちらに呼び寄せた嫁に大変親切に接してくれた。

同じ名前を持つオーナーとの出会いも奇跡的だったが、彼の奥さんと知り合えたことも私の人生の大きな糧になった。

満州生まれの彼女は、私がそれまで生きてきて会ったことのないタイプだった。

常に凛としていて底が深く、自然体で風のような印象を持ちながらも、決して消えない炎のように力強い意思を感じる人。性別や年齢を超え、「こんなふうに生きたい」と思える人だった。

ある時、オーナーと奥さんは、どうにかしてカナダに残りたいと考えていた私にある街の名前を出して、そこに行ってみたら良いのではないかと提言した。そこは、小学校の夏休みに赴任先の校長夫婦に連れて行ってもらった場所で、「いつか、こんな所に住めたら」と嫁と話していた街だった。

 

彼らの言葉に導かれるようにして移ったその街で、私はビザの延長をしてもらえるスポンサーを見つけることが叶い、オンタリオ州では難しいと言われていた永住権に関しても、申請をする丁度良いタイミングでその制度が変わり、無事に取得することが出来た。

 

数々の偶然の先に、想像もしていない形で出会った人から告げられた街へ越して広がった道。

歩いてきた道のりを眺めるたびに、姿のない大きな存在を感じずにはいられない。

 

嫁と出会わなければ私は重い腰を上げずに、四畳半の部屋に居続ける世界を生きたのかもしれない。もっと言うと、嫁が受けた検査結果の誤診がなければ、当時の私は結婚を決めていなかっただろう。

つまり、彼女に背中を蹴られていなければカナダには戻っていない。そうなると、日本から友人が訪ねて来るイベントは発生せず、不思議と閉まっていたダイナーも、彼が何故か指差した店に入る分岐もなくなる。

いや、違う。そのポイントじゃない。

岐路はもっと前、この話は更に遡り、逆再生するように流れながら全て繋がる。

 

始まりは、やはり小田急線の車内からだ。

あの日、たまたま車両を変えたことにより幼馴染と顔を合わせた。そして、その時期にたまたま入院していたグループのリーダーと縁を持った。このふたつの要素が重なり、私は私が死んだ世界ではなく、私が生きている世界を選んだ。

それから、あの夜たまたまアパートのドアが開いたことにより、私は自分の手を赤く染める世界を回避して、今を生きるルートに乗っかった。

 

1のイベントが発生しなければ2は起きず、3の世界は消滅する。

振り返ると、その全部が紙一重で恐ろしい。

恐ろしいが、同時に有り難くて仕方がない。

だから手を合わす。心の底から感謝する。

 

分岐して消滅して繋がって、ひとつになる人生。

 

私は今、私が生きている世界を生きている。

 

 

***

 

 

《お知らせ》

 

最後の最後に、もうひとつ宣伝です。

 

Amazon Kindle ストアで、電子書籍「橋の上の神様」を出版しました。

心を決めた日を切り取り綴った、五つのストーリーです。
読んで頂けたら嬉しいです。

以下が作品のリンクになります:

 

橋の上の神様

橋の上の神様

 

 

アチラとコチラ (2つ目)

 

2つ目

 

駅前の公衆トイレ

風が強い静かな夜

階段で見た腕時計

 

記憶に強く残っている場面がある。

それは匂いや音を伴い、時間が経っても薄れることなく頭の中に存在し続ける。

私が経験した2つ目の人生の岐路は、そういったいくつかの場面の先に用意されていた。

 

1つ目の岐路を通して拾われたグループに参加するようになっても、学校では変わらず呼び出しを受けていたが、そのことに対する自分の心持ちは変化した。何というか、外側と内側を分けて考えられるようになったのだ。

ヤラレている私だけが、私じゃない。そう思えるようになれたのは、避難所という居場所を確保したことにより、どうしようもない愚か者という役柄以外でいられる時間が増えたのが大きかった。

四六時中仲間に会い、何事もなかったかのように服や音楽の話をしていると、自分が新しく生まれ変わったような気持ちになれた。

 

笑顔を見せる度に、蘇る自尊心。

仲間たちとの楽しい時間が増えれば増えるほど、自分の殆どを形作る情けなさを消し去りたいと願うようになっていった。

 

岐路

 

集まりのメンバーたちに合わせて、流行りのスニーカーや皆が好きだったCD、PHSなどを欲するようになり、それらを購入する金が必要になった。

仲間たちと出会い、学校での体面をあまり気にしなくなっていた私は、当時やっていた新聞配達の配達部数を増やすことにした。勤務時間は夜中から朝方になるので、今まで通り登校することは不可能になったが、そんなことはどうでもよかった。

説明を受けた金額を稼げれば、通常通り週3日の上納を入れても、メンバーたちと同じような服を着て、彼らと変わらない生活ができる計算だった。

 

大幅に増えた配達先のひとつに、どうしても許せない奴の自宅があると知ったのは、順路帳に沿ってルートを確認している時だった。奴の家の近くまでは、荷物や現金の手渡しなどで何度も訪れていたので見間違うわけがなかった。

憎くて仕方がなかった奴の自宅に新聞を配る。それはまるで、悪い冗談のようだった。

深夜、新聞を手にして、奴が寝ているであろう家を見据える。きっと奴の人生には、眠れない夜などないのだろう、そう考えると収まらない怒りが心を占めた。

奴の家へ配達をする度に積み上がっていく憤り。繰り返された暴力と人格否定によって壊されたはずの復讐心を強く認識した私は、そいつの家へ新聞を配った後に向かいのアパートの階段をのぼり、奴の家を見つめるようになった。

 

物事の全ては、紙一重なのだと思う。

人生を変えてしまうトリガーは至る所に撒かれていて、誰かに引かれる瞬間を待っている。 暗い穴への誘導は巧妙で、気付いた時には動けなくなっているのだ。

 

何故そんなことが起きたのか分からないが、奴の家の前に張り付くようになってから少しして、顔見知り程度だった人物からナイフをもらった。もらったというか、目の前でカバンを開けられて、その中にナイフを押し込まれた。

どう頭を働かせても、どうしてその人物が私にそんなことをしたのか今でも理解できない。その時の私の状況を彼が知っていたとは思えないし、そもそも彼とは話をするような間柄でもなかった。もしかしたら、彼は彼で何かトラブルを抱えていて、そのナイフを処分したかったのかもしれない。それに誰かが彼に入れ知恵でもして、何をしても問題なさそうだという理由で私を選んだのかもしれない。ただ、仮にそうだとしても、やはり納得できない。単純にナイフを処分したいのであれば、わざわざ私なんかに預けなくても、どこかの山や川に捨てればいいだけの話だ。

どの角度から考えても彼が取った行動は不自然だったが、当時の私は、渡されたナイフを捨てずに、持ち続けることを選んだ。

 

そのナイフは、私にとってのトリガーだった。

煮え切らない私の背中を押すきっかけ。ストレートに「やれ」と言われている気がした。

その出来事を機に、配達時に携帯していた百円ライターをオイルライターへ変え、小型のオイル缶を携帯するようになり、作業用のカッターナイフを、渡された折りたたみ式ナイフに変えた。

 

オイルライター、オイル缶、火を広げるための新聞紙、そして、上着のポケットに入れたナイフ。

 

私の願望を叶えるための道具が揃い、私はトリガーに指をかけた。 

 

新聞紙の束にオイルをかけて火をつける。燃え上がった炎が全てを焼き尽くしてくれたら文句無し。例えボヤになっても、奴を燻り出せればそれでいい。私はヘルメットを深くかぶった新聞配達員。夜の景色に溶け込み、野次馬としてその場所にいても何の違和感もない。もちろん、外に出てきた奴の背後に立っていたっておかしくはない。

ポケットに忍ばせたナイフを右手で握る。呼吸を整え、煙が出ている家を見ている彼に近づき、真後ろから首を目掛けて刺す。

頭でイメージした一連の動作を繰り返し再生する。映像が定まった後は、駅前の公衆トイレの個室で動きを確認し、流れを体に叩き込んだ。

狭い空間にこもった独特の臭いとカビだらけのタイル。蜘蛛の巣に絡まった蛾の死骸が強く残って今も消えない。

 

その日は、風が強い日だった。

いつもは遅くまで電気がついている近くの家も真っ暗だった。

条件は全て揃っている。後は気持ちを決めるだけ。それは分かっているのになかなか覚悟が決まらず、向かいのアパートの2階から長い時間奴の家を見つめていた。

今まで受けた仕打ちを頭でなぞり、定まらない気持ちを固めていく。

午前2時40分、午前2時45分。腕時計を凝視して自分との約束をする。

2時50分になったら、何が何でもやろう。

そう決心した。

 

約束の午前2時50分。

心を決めた私は、駆け足でアパートの階段をくだり1階におりた。その瞬間、階段の真裏にある部屋のドアが開き、若い女の人が出てきた。

私の様子がおかしかったのか、もしくは、こんな時間に人がいるとは予想していなかったのか、その女の人は私を見て小さな悲鳴をあげた。彼女の声を聞いて、部屋の中から男の人が出てくる。彼は一旦私に対峙してから、アパートの前にとめていたスーパーカブに顔を向け、軽く頭をさげた。

「新聞配達の人だよ」

男の人がそう言ったのを聞いて、私は急いでバイクに戻り、エンジンをかけて走り出した。

今まで何度も、同じ時間帯にこのアパートに来ていたが、人と遭遇したことなど一度もなかった。丑三つ時の住宅街、計画を立てた時点で人に出くわす可能性など考えておらず、ましてやあんなタイミングで誰かと鉢合わせするなど想像もしていなかった。

 

顔を見られたことが、とにかく怖かった。

偶然会ったカップルに、こちらの魂胆など分かるはずがないのだが、内側にある殺意を見透かされた気がして頭が真っ白になった。

決めた覚悟を失った私は、自ら抱え込んだ悪意が恐ろしくなり、逃げるようにしてコンビニへ向かった。

 

それから、私が行動を起こすことはなかった。

我に返ってからのうろたえを目の当たりにした後では、憎悪を持つことさえ身分不相応に思えた。

己の行動で状況を打破できないと痛感した私は、決して頼りたくはなかった方向からの助けで救われるまで、従順なカモとして金と自尊心を奴らに提供し続けた。

 

物事の全ては、紙一重なのだと思う。

あの日、あのタイミングでアパートのドアが開くまで、私は私ではなくなっていた。

午前2時40分、45分、50分。時間が過ぎるごとに、それまでの焦りが取れて気持ちが落ち着いた。感情が暗い落とし穴にはまっているようで、身動きは取れないが何故か心地よかった。

もしも、あのまま邪魔が入らずに奴の家へ行けたなら、火をつけたのだろうか。

もしも、あのまま正気に戻らず、怨恨に体を動かされたままだったら、ナイフで刺したのだろうか。

あれからずっとそのことを考えているが、答えは出ない。

 

あの夜の「もしも」の先は分からないが、あの時、「たまたま」アパートのドアが開いたことで、私の世界は2つに分かれた。

 

私が生きている世界。

私が生きている別の世界。

 

私は今、私が生きている世界を生きている。

 

(続く)

 

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アチラとコチラ (1つ目)

並行世界、パラレルワールド。

呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。

私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。

宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ、そう考えるようになったきっかけが、今まで生きてきた中で3つあった。

 

不思議な出来事、そこで別れた世界。

 

1つ目

 

あの頃、全てが真っ暗でどうしようもなかった。

増えていく上納に、終わらない暴力。どれだけ働いても高校生のバイトでは限界があり、家の金にも手をつけはじめていた。学校、家や街、どこにも居場所はなく、呼び出されることばかり気にして毎日を過ごしていた。

何度も心を折られた。でも、私も人を傷つけた。

手に入れた弱さを使って、たくさんの人に迷惑をかけた。だが当時の私は、そのことに罪悪感を抱いていなかった。

(これだけのことをされてるんだ。弱さを売って何が悪い)

そう、考えていた。

周りも自分も、何もかもが嫌で堪らなかった。恐怖と不安で睡眠を取るのが困難になっていたある日、私は授業中に吐血した。

もう、心も体も限界だった。

 

何もかも投げ出して逃げればよかったのだと、今は思う。

でも、当時はそんな考えにならなかった。

家の場所を知られている以上、逃げてもいずれ捕まる。捕らえられたが最後、倍の仕打ちが待っているのは想像に容易かった。それに、あの時私は「世間体」というものを強く意識していた。

クソみたいな仕打ちを受けている自分が恥ずかしくて惨めで、その事実をどうにか誤魔化そうと必死になっていた。だから、不登校などもってのほかだった。

 

顔に目立つ傷を付けられた時、私は担任の先生に呼ばれた。目の下に目立つくまがあったので、今までも何度か呼び出しを受け、その都度適当な言い訳をしていたのだが、この件については追及が激しく、誤魔化すことは不可能だった。

全てを公にした後の復讐を恐れた私は、実行グループの名を告げる代わりに、家族を売った。

 

その日の帰り道、私は私を終わらせようと決めた。

 

原付バイクで向かった近所の山。

脱いだジャージを木に括り付けて見渡す緑。

下着姿で輪っかを抱え、何も出来ずに泣いている自分がそこにいた。

 

階段をのぼれなかった日を境に、私は何者でもなくなった。抗うことも、隠し通すことも、自ら終わらすことも叶わず、ただ目の前のものに頭を下げ、何も変わらない毎日を受け入れるだけの者になった。

 

岐路

 

あの日、学校帰りに乗った小田急線の車内で幼馴染と行き合った。

その日、私は「たまたま」いつも乗る最後尾に近い車両ではなく、前の方の車両に乗り込んだ。

あの時どうしてそんな行動を取ったのかは分からない。他よりも乗客が少なく、安全地帯だと知ってて決まった車両を選んでいた当時の状況を考えると、なぜ自分がそんなことをしたのか見当がつかないが、私は「たまたま」車両を変えたことで、疎遠になっていた彼と鉢合わせした。

入院している友達の見舞いに行く途中だった幼馴染は、私の目のくまの理由を質問した後に、一緒に病院に来ないかと提案してくれた。

彼の誘いを受けて訪ねた病室、足にギプスを付けてベッドに横たわっていた男はこちらを見て、「そっちが入院した方がいいよ」と言った。

 

「たまたま」変えた車両に、「たまたま」疎遠だった幼馴染が乗っており、その時期に「たまたま」大きな怪我を負った幼馴染の友人がいた。入院していた彼は、幼馴染が遊んでいたグループのリーダー格であり、私はその時の出会いをきっかけにして彼らの集まりに拾われた。

そして、そこが私の避難所になり、居場所になった。

 

今でも、あの時の感情を思い出す。

自力で事を成し遂げられなかった私の次の候補地は、国道246だった。

自ら終わらせないのであれば、他力で。

とにかく、何でもいいからどうにかしてどうにかしなければ。

そんな焦りに似た気持ちが、ずっと心にあった。

 

幼馴染をきっかけにして拾われたグループに入っていなければ、今の私は確実にいない。彼らと出会ったことにより、私は常に誰かと行動を共にして生活するようになった。

あの時、「たまたま」車両を変えたことにより、私の世界は2つに分かれた。

 

私が生きている世界。

私が死んだ世界。

 

私は今、私が生きている世界を生きている。

 

私は無宗教であるが、神様はいると考えている。

便宜上「神様」という言葉を使ったが「並行世界」と同じように、呼び名は何だっていいと思っている。

目に見えない大きな存在。

元々、懐疑的な性格なのでそういったものに対して疑いの目を向けていたが、2つ目、そして3つ目の岐路を通して、名前を知らない「何か」の存在を信じざるを得なくなっていった。

 

〈続く〉

 

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Aの中で、Bを見る

 

制限があっても、与えられた中で花を見つける。

 

まだ大洋ホエールズが生きていた頃、私はコントローラーが絶対に回ってこない「ファミコン応援係」という役を与えられていた。

 

仲間に入れてもらえるアイテム、ファンタオレンジを献上して、所定の位置に座る毎日。
表向きはプレイヤーに声援を送っていたが、頭の中ではブラウン管から流れるゲーム音楽を使って遊んでいた。

 

当時のお気に入りは、ネズミ警官がトランポリンを使ってはしゃぐ「マッピー」。

AメロとBメロの頭に「ミスするなら 金返せよ」と、夢のない歌詞をつけ、それをループさせて声を出さずに歌った。
曲が転調してから「トゥントゥントゥン」と続くメロディラインが気持ちよかった。

 

そんな脳内歌謡ショーは、曲のテンポがあがると一旦終わり、ツインビーへと移行するのが常であった。

 

その行為が、あの時、私が見つけた花。
薄暗い中で咲く、一輪の赤い花だった。

 

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***

 

 

喜怒哀楽。
四つ柱のバランスの大切さを強く感じる、今日この頃です。

 

こちらではお久しぶりですが、青いハトの世界では、詩、散文などを毎日書いております。
よろしければ覗いてみてください。

 

 

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