ふたり乗りで行こう

5:56に目を覚まし

少し祈って襖を開ける

 

シンクに出来た皿の山

尖った先から日が昇る

 

Fコードの音が響く

ガスのコンロがリズムを刻み

薄暗い玉子の花を咲かす

 

透明になるための白いシャツ

用のないコンビニで息をして

8:11の準急に乗る

 

広告と景色が後ろに流れ

噂と一緒に吸い込まれる

 

学校に着いても下駄箱は開けない

そこには悪意が詰まっているから

 

ゴミ出しの日に消えた人を待たない

欲情に付ける薬はないから 

 

部屋にスペースが増えたけど

寂しい気持ちにならないんだ

 

橋を越えた住宅団地に

僕を待つ人がいるから

 

空白で埋まる授業を抜けて

501のジーンズを履く

 

白線の内側を急いで走り

2:22の準急に乗る

 

人混みの向こうが目指す場所

知らない街にある僕の居場所

 

空に伸ばしたのは右の手のひら

あなたを見つけて掲げた手のひら

今日も明日も生きていくと

誓って上げた右の手のひら

 

ふたり乗りで行こう

赤ばっかりの信号でも

ふたりでいれば前へ進める

 

ふたり乗りで行こう

周回遅れの毎日でも

ふたりでいれば怖くないから

 

「またね」って言えた喜び

記憶をしっかり噛みしめて

いつかの残像に手を合わす

 

「またね」って言えた喜び

消えゆくあなたを引き止めて

いつかの残像に手を合わす

 

今になって分かったんだ

当たり前の「またね」なんてないってことが

 

遠くに見えたスタジアム

ぼんやり照らされた並木道

 

姿形が変わっても

再び行き合うことが叶うなら

後ろに乗ってくれないか

 

チェリオの炭酸は買ったから

7:20で落ち合って

橋へと続く道を走ろう

 

 

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〈絵〉ミチコオノ

 

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