「七日後」の秘密 (高岡ヨシ + 大関いずみ)

f:id:yoshitakaoka:20171116151119j:plain

 

「急に呼び出してごめん」

 

「うん。いいけど、誰もいないよね」

 

「誰もって?」

 

「ヤマカワさんとか」

 

「大丈夫。いない、いない」

 

「本当に? 倉庫なんかに呼び出すから、構えちゃったよ」

 

「ごめんね」

 

「いいよ、いいよ。それよりさ、月曜どうだった? やっぱり新しいことされた?」

 

「月曜? あぁ、水のやつ?」

 

「うん。あれ、ひどくない? 着替えなんて持ってないから、ビショビショのまま帰ったよ」

 

「僕も。すれ違う人にジロジロ見られた」

 

「あんなの、何が楽しいんだろうね?」

 

「あいつらが笑ってしてくるやつ、1ミリも理解できない」

 

「最低だね」

 

「間違いない」

 

「あのさ、聞くのが怖いんだけど、何か緊急事態あった?」

 

「いや、そっちは大丈夫。今のところは何の連絡もない。今日呼んだのは、ヤマカワ関連のことじゃないんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「うん。ちょっと聞いて欲しいことがあって」

 

「どうしたの?」

 

「あのさ、タカギ先生って、妊娠してたっけ?」

 

「タカギ先生? 保健室の?」

 

「うん」

 

「いや、知らない。保健室のタカギ先生でしょ? 妊娠なんて話、聞いたことないよ。何でそんなこと聞くの?」

 

「こんなこと相談して本当に申し訳ないんだけど、どうしていいか分かんなくて」

 

「何かあったの?」

 

「うん、先週の水曜のことなんだけど、なんとなくヤマカワとかに呼び出される気がしたから、保健室に逃げたのね。水曜って、よく呼び出しがかかるから」

 

「分かるよ。水曜の昼休み明けって、危ないもんね」

 

「危ない。事情は話してないけど、タカギ先生って、基本なんにも言ってこないから、その日も『頭が痛い』って言って、寝かしてもらってたんだ」

 

「俺も時々そうしてる」

 

「あそこさ、寝る時、あのカーテンみたいのでベッドをグルッと隠すでしょ? その日もタカギ先生がそうしてくれたんだけど、滑りが悪かったのか、ちょうど枕の部分にちょっとした隙間が出来たんだ。本当にちょっとなんだけど、自分で閉めるのもなんだから、そのままにしてたの。僕が寝ていたベットは入り口側だったから、そこからは先生の後ろ姿が見える感じ」

 

「うん」

 

「いつもそうなんだけど、寝っ転がっても寝れないから、天井をずっと見てたんだ。そしたら、『ジャキッ ジャキッ』って音が聞こえたんだ。ゆっくりと、何かを切るような音」

 

「音?」

 

「うん。その時、部屋には僕と先生しかいなかったから、気になって隙間から覗いたんだ。ハサミは見えたから、何か切ってるのは分かったんだけど、何を切ってるのかまでは見えなかった。けっこう長いこと音が聞こえたんだけど、何か作業をしてるんだと思って気にしないようにしたんだ。でも、途中から、声も聞こえ出して」

 

「声って、先生の?」

 

「うん。『出てくるな』って。最初は小さくて何を言ってるのか聞き取れなかったけど、意識したら、だんだんクリアに聞こえてきて。『出てくるな』『出てくるな』って、繰り返してた」

 

「え、それは、サエキに対して言ってるの?」

 

「いや、独り言なんだと思う」

 

「『出てくるな』って、タカギ先生が?」

 

「うん。何かを切りながら、小さい声でずっと。何だか変な感じがして、先生の後ろ姿から目が離せなくなった」

 

「何か声をかけたの?」

 

「かけないよ。かけれないよ、怖くて。それから少しして、先生が誰かに呼ばれて部屋を出て行ったんだけど、いったい何をしてたのかどうしようもなく気になって」

 

「切ってたやつ?」

 

「それを含めて、色々」

 

「机の上に何かあったの?」

 

「いや、出て行く時に机の引き出しに入れてた」

 

「もしかして、開けたの?」

 

「ベットから起きるのが怖かったけど、とにかく気になって。どうしたらいいか分からなくて五分くらい待ったんだけど、先生は帰ってこなかった」

 

「引き出しに、何があったの?」

 

「赤い布っていうか、お守りみたいなやつ。それがバラバラに切られてた」

 

「お守り?」

 

「うん。交通安全みたいなやつ。なんのお守りかは分からなかったけど、バラバラだった」

 

「あのさ、それやってたの、本当にタカギ先生だよね? 保健室の」

 

「そうだよ。それ以外にありえない」

 

「何で、そんなこと」

 

「分からない。それに、そこにあったの、お守りだけじゃないんだ。バラバラになったお守りの下に、絵があった」

 

「絵?」

 

「うん、これ。この絵」

 

f:id:yoshitakaoka:20171118113604j:plain

 

「なに、これ?」

 

「分からない」

 

「ねぇ、なんでこの絵をサエキが持ってるの?」

 

「引き出し開けて、訳が分かんなくなっちゃって。絵を見ている時、ちょうど保健室に生徒が入ってきたんだ。それで咄嗟にポケットに入れた」

 

「その時、先生も帰ってきたの?」

 

「いや、生徒だけ。確か、ケンジと同じクラスのシミズ君だと思う。なんか、タカギ先生を探してるみたいだったけど、『いませんよ』ってだけ伝えて、気不味くなったからそのまま部屋を出た」

 

「ねぇ、絵の裏に、なんか書いてあるよ」

 

七日後

 

「うん。家に帰って、ちゃんと見た時に気付いた」

 

「七日後って、なに?」

 

「分からない。全然、意味が分からない」

 

「下に、ほら、そこに書いてある日付って、それ先週の?」

 

「うん。先週の水曜日」

 

「じゃあ、七日後って」

 

「今日、だね」

 

「何か、あった?」

 

「今のところは、何もない」

 

「でもさ、タカギ先生はサエキが絵を取ったって知らないかもしれないでしょ? だってあの時、戻ってこなかったんだから」

 

「戻ってはこなかったけど、絵と一緒に僕もいなくなってるからね」

 

「サエキの他にも、生徒が入ってきたって言ってたよね、じゃあその子が取ったってことも考えられるでしょ? だったら……あ」

 

「何? どうしたの?」

 

「その生徒……さっき、シミズ君だって言ったよね?」

 

「うん。ケンジのクラスの子だよね」

 

「そのシミズ君、二時間目の後に保健室へ行って、そのまま早退したって聞いたよ」

 

「……え?」

 

 

 

タン

タン

タン

 

タン

タン

タン

 

ガラッ

 

 

「あっ、本当にいた。何やってんだお前らこんなことで。まぁ、いいや。おぃ、サエキ、タカギ先生に、お前がここにいるからって言われて来たんだけど、なんか急ぎらしいんだ。渡した資料のことで話があるみたいだから、至急、保健室へ行ってくれ」

 

 

f:id:yoshitakaoka:20171118135844j:plain

 

 

〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉大関いずみ

 

***

 

大関いずみ aka ミチコオノさんに、感謝。

 

必見です。

fukaumimixschool.hatenablog.com

fukaumimixschool.hatenadiary.com

 

 

© Copyright 2016 - 2018 想像は終わらない : 高岡ヨシ All Rights Reserved.