こんな場所が欲しかった

ずっと前から

こんな場所が欲しかった

 

ただ顔を合わせるだけでは

目にする事が出来ない世界

 

挨拶を交わすだけでは

晒してはくれない世界

 

何を思い

何を考え

何を表現するのか

 

頭と心にある世界を

電波に乗せて表に出し合い

生まれた感覚を交差させる

 

ずっと前から

こんな場所が欲しかった

 

自分とは違う言葉を使い

異なる思考で綴られた文章が

スクリーンに溢れる

 

通すレンズが変わるから

写真にうつる空も雲も

全く別のものになる

 

それらをこの目に出来るのは

決して当たり前の事ではなく

感情をくれる至福の時間は

掛け替えのない大切なものだ

 

幾度となくスレ違い

お互いを牽制し

分かり合えずに距離が離れ

時間を掛けてはまた近づき

弱さと引き換えに理解を引き出して

初めて内側に触れられる

 

そんなプロセスを踏まずとも

覗かせてもらえる頭の中

只々 有難くて仕方がない

 

 

ずっと探していた場所

ずっと欲しかった場所

 

 

押入れの布団に挟んだ詩集を

ここでは隠さなくていい

 

溜め続けた小説のプロットも

理由を付けて破かなくていい

 

どうしても忘れたかった記憶も

もう そのままでいい

 

「趣味程度だ」なんて

自分を裏切らないでもいい

人生をかけて楽しんでいるんだ

嘘で誤魔化さなくていい

 

この世に生まれたものに息をさせる

胸を張って呼吸をしてもらう

 

 

もう二度と殺しはしない

 

 

出番を待つ記憶とアイデアを

もっともっと言葉にしたい

 

生きていける場所があるならば

紡いできたストーリーを外に出したい

 

 

衝動に激しくせっつかれ

体はくるっと背を向ける

 

仕事から帰って服を脱いでも

眠くならなければいいのに

 

炭水化物を口にして

ノートとペンを胸に抱き

ソファーに寄りかかる午前二時

 

一瞬閉じたつもりの瞼

ハッとしてこじ開けると

時空は歪んで午前六時

 

ぼんやりと浮かび 漂うイメージ

消え去る前に紙に書き

白いブラインドをゆっくりと開ける

 

静かな歩道を照らす黄色い朝日

しばらく光に見とれていると

「缶詰を開けなさい」と猫が足を踏む

 

ピンと立った二つの尻尾に

「今日は寝ない」と強く誓い

庭の楓に手を合わせる

 

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