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私は知っている

私は知っている

いつも近くで見てたから

あなたや君を知っている

 

私は知っている

五時の鐘が鳴るまで校庭で時間をつぶしていた君を

お楽しみ会に参加しなかった君を

給食費のことで先生と話していた君を

「楽しみだ」と言ったのに転校前日に「行きたくない」と泣いた君を

 

私は知っている

喧嘩ばかりだった両親の仲を取り持っていた君を

家の鍵を首にかけ家事を押し付けられていた君を

気が触れたと噂されていた近所の老婆に挨拶をする君を

ゲームのコントローラーを持つ友人の応援ばかりしていた君を

 

私は知っている

オモチャ売り場で一度も駄々をこねなかった君を

劇の配役よりも小道具作りに精を出していた君を

お弁当を隠して食べていた君を

ローレル指数を気にしていた君を

 

私は知っている

毎回遠足を休んでいた君を

親の秘密を背負わされた君を

のけ者にされて笑われていた君を

それでも笑っていた君を

 

私は知っている

不安と戦ってもがいていた君を

学校に良い思い出なんか一つもなかった君を

卒業アルバムで一人別枠に収まる君を

卒業式の夜に制服を燃やした君を

 

ボロボロの茶色いお道具箱

机にあった無数の傷

君を想うと 泣きたくなる

 

私は知っている

決められたキャラクターを演じていたあなたを

周りに上手く溶け込めないで悩むあなたを

それでも孤立を恐れなかった君を

「また居場所がなくなった」と微笑むあなたを

 

私は知っている

「バカは終りだ」そう言って就職したあなたを

劣等感にさいなまれていたあなたを

生きるためにとにかく働いたあなたを

本当は夢を捨てていなかったあなたを

 

私は知っている

押し入れの奥に十二冊のノートを隠していたあなたを

「なんでこんなに生きにくいの」と顔をグシャグシャにしたあなたを

「もう私には何もない」そう言って膝をついたあなたを

夜明け前に部屋を抜け出すことが多くなったあなたを

 

私は知っている

道路脇にうずくまっていたあなたを

黄色い線の内側に踏みとどまったあなたを

屋上の柵をまたいで戻って来たあなたを

「ありがとう」という文字でコピー用紙を埋めていたあなたを

 

国道に架かる歩道橋

ラジオから流れたスタンドバイミー

あなたがいたから 今の私がある

 

私は知っている

人のずるさを

人の冷酷さを

そして

人の素晴らしさを

 

私はこれからも 私が知り得たものを抱えながら

一番近くで あなたや君を見続けよう

 

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(とても不思議な空でした。見たこともない空でした。あの日以来、こんな空は撮れていません)

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