読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

空の色をした作業着

頭の中

「俺の背中を見ておけ」って大声を出すけど 

その背中は一体どこにあるの?

 

7時過ぎには家を出て 帰ってくるのは夜中過ぎ

週に1度の休日に 足を向けるのは競輪場だ

 

ほら あなたの背中はどこにもない

 

すすけた青い作業着

黒いオイルにまみれたその服は もう何色でもなかった

 

「空の色と一緒だろ」 あなたはそう言っておどけたけど

私が知っている空は こんなに色褪せてはいない

 

あなたは不器用な人だ

 

思いと言葉が お互いそっぽを向いている

本当はどちらも近くにいるのに

見ないフリをして 顔をしかめている

 

どうでも良いことばかりに声を使い

大事な時には目も合わさない

きっとあなたは知らないと思うけど 

私たちはエスパーじゃない

「うん」や「あぁ」では 何にも伝わらないんだ

 

私が見るあなたの背中は いつも疲れて汚れていた

その作業着が空ならば 浮かぶオイルは黒い雲か

 

あなたは本当に不器用な人だ

 

「家を出る」 私がそう伝えた時 

「二度と帰ってくるな」とあなたは怒鳴った

「顔も見たくねぇ」 ライターを投げて啖呵を切ったすぐ後に

あたなは何で泣いたのだ

 

私にくれた不恰好で有り余る愛を 

なぜ少しでも母親に向けられなかったのか

 

あなたのことを忘れたくても

私の一部は あなたで出来ている

 

子供の頃 よく連れてこられたパチンコ店

あなたのせいで 私は騒音と人混みが嫌いになった

 

言いたいことは たくさんある

 

あなたのせいで お酒を意図的に飲まなくなった

あなたのせいで ギャンブルを受け付けなくなった

あなたのせいで 借金を作る人が許せなくなった

あなたのせいで 浮気する人を憎むようになった

 

でもね 悔しいけど

 

あなたのお陰で もつ煮込みが好きになった

あなたのお陰で 物を大切にするようになった

あなたのお陰で 手を抜かないで仕事をする心意気を学んだ

あなたのお陰で 泣くことが恥ずかしくないと知った

 

この気持ち 全部あなたからのものなんだ

 

空の色をした作業着 

言われた通りに背中を見ていたせいで 

変な所まで似てしまった

 

どうしてくれるんだ 

 

あなたにきちんと「ありがとう」を伝えたいのに

全然素直になれないじゃないか

 

f:id:yoshitakaoka:20170303162221j:plain

(作業着のような色をした空は、今日もこの地にあります)

© Copyright 2016 - 2017 想像は終わらない : 高岡ヨシ All Rights Reserved.