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私のロードショー

頭の中

「萌の朱雀」が見たくて並んだ映画館

背伸びは承知の上だった

 

ポップコーンもコーラも買わなかった二列目の特等席

映し出された緑と吊り橋に引き込まれて 内容なんか一つも入ってこなかった

 

ただ 美しく

とにかく 夢中になった

 

鑑賞後 とても強い衝動を感じたが 

十八歳の私には それが何だか分からなかった

 

あんな風に場面を切り取りたい

 

止まっているようで動いている そんな景色に憧れた

 

静止画ではなく 

動画を意識するようになったのは それからだ

 

中学生から作り始めた頭の中の街

自分の好みだけが詰まったそこは 最高の撮影場所だ

 

「はい カメラ入ります!」

 

昭和の公衆電話のような色をした団地のドアを開け 踊り場に出る

申し訳程度に通路を照らすライトは 見なくてよい現実をぼかして隠す

 

七月の終わり 

熱を僅かに保つコンクリート

防虫スプレーと火薬の匂い

 

三階から見下ろす団地公園の手持ち花火は 暗闇に浮かぶ五色の曼荼羅

子供が手元でグルグルと回すたび 幸せを祈られているような気持ちになる

 

最後の一本が「ジュッ」と音を立て 青いバケツに飛び込む

終わりの音に続いて鳴る 遠くの踏切警報機

 

深呼吸をして水平に戻した視線に オレンジ色の街灯が映った

 

「カット!」

 

こんなことを何度も繰り返した

 

浮かんだ場面を元にストーリーを書く

それをノートにストックする

 

こうして出来たピースを繋げた先に 生まれる物語

 

何十年もロケハンを続けた舞台は いつも頭にある

様々なジャンルのプロットも 手書きのノートに記されている

 

時々 フと思う

 

それらが呼吸をする日は 果たして来るのだろうかと

 

生まれただけでは息をしない

読まれて 

見られて 

初めて呼吸ができる

 

日々が目の前にある

生活が目の前にある

 

これから年を取り 

私の考えは変わってしまうのだろうか

仕事のために 睡眠を重視するようになってしまうのだろうか

 

心がたくさんの答えを求めている

 

何故だか焦りを感じて 背中が痛い

感覚的にタイムリミットを設定されたみたいだ

 

誰に頼まれたわけでもない

 

ただ自分の思いに従って 表現をしている

「ワァーーー」と叫びたくなる内側の代弁だ 

 

アイデアも頭の中の街も 変わらずにある

それなのに気が急ぐのは 心根の弱さか

 

時間が欲しいと思う自分がいる

きっかけが欲しいと願う自分がいる

 

どちらも今の素直な気持ちだ

 

吾輩は想像である 終わりはまだない

 

よし 

深呼吸をして 視線を水平に戻そう

 

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(雲に隠れても、太陽はそこにある)

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