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年が明けたその瞬間、僕はバットマンの苦情を聞いていた

皆様、あけましておめでとうございます。

2016年は自分の書いた文章を読んでくださり、ありがとうございました。

スターやブックマークを付けて頂いたり、コメントをくださった方々、本当に嬉しかったです。

このブログを始めて、「書く」ことだけではなく、「書いて繋がる」楽しさを知りました。ここで出会うことが出来た全ての縁に感謝致します。

2017年も、よろしくお願い致します。

 

 

さて、私事なのですが今年も無事、魔界村から帰還することが出来ました。

はぁ、恐ろしかった。

12月31日の大晦日は、ウチのホテルが1年で1番忙しくなる日です。

理由は毎年、街のシンボルである滝の目の前で行われる有名な年越しライブイベント(テレビ生中継あり)とカウントダウン花火。それらを目当てに近隣、及び、世界中から人々が集まり、ホテルのみならず街全体がその熱気に飲み込まれます。

その証拠に、年が明けてから随分と時間が経ちましたが(自分のいる地域は日本と14時間の時差があります)滝に近い自分の家の前の通りは、未だに多くの車が行き交っています。

通常ですと職場から5分ほどで帰宅できるのですが、この日に限っては30分以上かかっても到着できませんでした。出る前にトイレに寄っておいて本当によかったです。

 

ちなみにウチのホテルでも毎年カウントダウンイベントをやっておりまして、ロビーに入っているスターバックスとバーの間にある、ひらけたスペースを猛烈にデコレーションしてクラブ仕様に改造し、雇われたDJが大音量でダンスミュージックをかけるという自分の好みとは真反対をぶっちぎっているパーティースペースが誕生します。

 

特製ライトを導入し、ダークブルーに統一された空間で鳴る「ドン ドン ドン ドン」という大きなリズム……あぁ、夜空に響く除夜の鐘が恋しい。

そんなワニワニパニックが最高潮に達する年明けの最中、自分はタイトルにもある通り、ロビーバーで完成度の低いコスプレに身を包んだバットマンの苦情を聞いておりました。

文句の内容は、カウントダウンの乾杯用に配ったサービスシャンパンです。

 

一応、十分な数のグラスを乾杯用に用意したのですが、予想を超える人がイベントスペース(= 魔界村)に集まってしまったので、仕方なく「お1人様1杯限り」の制限をつけることにしました。途中までは何も問題がなくスムーズにグラスを渡していけたのですが、バーのカウンター付近に立っていたお腹の出たバットマンが何も言わずに自分の持っていたトレーの上にあるシャンパングラスを4つ鷲掴みしました。

目の前にいるダークヒーローが本物だったら、この様な振る舞いは絶対にしないと思うのですが、残念ながら彼はニセモノ。「数に限りがございますので」と説明しても、「カモンメーン」と言って聞く耳を持ちません。

正直、対応したくなかったので周りを見回し、彼の暴走を抑えてくれそうなロビンかバットガール、もしくは邪魔をしてくれるジョーカーを探したのですが、あいにく彼らの姿は何処にもありませんでした。

この時点で、すぐにバットモービルに飛び乗り、地下深くに広がるバットケイブに逃げ帰りたかったのですが、いかんせん未だ勤務中。なので、その気持ちをグッと抑え、拳を天に突き上げたラオウを体に憑依させて彼と交渉し、何とかシャンパン2杯で引き下がってもらいました。

 

当初の希望より少なくなりましたが、一応自分の要求が通ってホクホク顏のバットマンは両手にグラスを持ち「シェイシェイ」と言って、お茶目に舌を出しました。

全く可愛げがない、おじさんのラブリーペロちゃんを見せつけられたので、「ブーヨンシェ」と返し、彼の仮面を剥ぎ取りたい衝動に駆られましたが、もう世間は2017年。ヒーローでも何でもない酔っ払いに構っている暇はありません。

家では大晦日恒例の、お寿司テイクアウトが自分を待っています。

帰ろう、お寿司の元へ。

食欲に背中を押され心に花が咲いた自分は、「ハッピーニューイヤー」とバットマンの肩を叩き、とびっきりのスマイルを振りまいて車へ走りました。

 

クラブ魔界村を後にし、トヨタのエンブレムを付けたバットモービルに飛び乗ったまでの流れはスムーズだったのですが、通りに出てすぐ渋滞につかまりました。

光っては消えるブレーキランプの行進。先まで続く車の列をボォーっと眺めていると、頭に先ほどのフェイクバットマンのテヘペロ……ではなく、本物のコウモリが頭上をグルグルと旋回する絵が浮かびました。

 

自分は今までの人生で、1度だけコウモリを目撃したことがあります。

時期はカナダ1年目、場所はストラットフォードの幾三ハウスでした。

 

「おい、エビ。生意気言ってないで、肩を揉みなさい」

 

エビ。

あの時のコウモリ目撃事件以来、嫁から呼ばれるようになった新しいニックネームです。

不名誉な呼び名ですが、異議は唱えられません。

なぜなら、実際、自分はエビだったからです。

 

自分がエビになったのは、ある日の夜中。

何か物音が聞こえて目を覚ました自分は、音の正体を確かめようと、ベットに横になったままジッと聞き耳を立てました。

真っ暗な部屋の中「パサ パサ パサ」と繰り返される音は、とても近くに感じます。

しばらくそのままの姿勢で様子を見た後に、暗闇に慣れた目が捉えたものは、部屋の上空をグルグルと旋回する黒い物体。急いで嫁を起こし、彼女にも未確認飛行物体の存在を確認してもらったのですが、それが何なのかはお互い分かりませんでした。

「とりあえず、電気をつけてくる」

このままグールグルと部屋を回る黒い物体を見続けていても、それが「ちびくろサンボ」の虎よろしく、バターに変わることは期待できません。

「鳥みたいなものだろう……」己の思い込みに全く確信が持てませんでしたが、この状況をやり過ごすわけにはいきません。

仕方なくベットから降りた自分は、恐る恐る腰をかがめて歩き、電気のスイッチを押しました。

白く光る蛍光灯、その眩しい明かりが照らしたものは、ハロウィンでお馴染みのコウモリでした。

「コウモリだ……」

人生、初コウモリ。ド直球な感想しか出てきません。

何故、君はこんな時間にこんな所を飛んでいるのだ? 

頭にはたくさんのはてなが浮かびましたが、そんなことを悠長に考えている場合ではありませんでした。

「とにかく、部屋から出そう」

きっちりと閉まっていた部屋のドアを開けるため、壁をつたって動き出した次の瞬間、一定の高さを保って旋回していたコウモリが急に高度を下げて自分の方へ向かってきました。

一瞬の出来事に、声にならない声を上げた自分は、体を「く」の字にして素早く後ろに飛び、尻もちをつきました。

きっとあれが「腰を抜かす」というものなのでしょう。

漫画などでよく見る、ヒィッと驚きストンと落ちるあれです。

何が起きたのか分からなかった自分は、その体勢のままベットの上にいる嫁を見ました。

 

自分は目一杯の顔をしていたと思うのですが、彼女は笑ってました。

「クククク」って声を出し、腹を抱えてこちらを指差してました。

 

自分がエビになった瞬間です。

 

エビになってからの初仕事であるコウモリ出しは、その後、少し落ち着いてから何とか実行できましたが、肝心のコウモリが何処へ向かったのかは確認できませんでした。

当時、自分たちが住んでいたのは、家の中に隙間や穴があちこち空いていた大改装中のアンティークハウス。

今、振り返れば高確率でコウモリと遭遇する条件が揃い踏みしている事実に気付きますが、部屋に出て困るものはコックローチ先輩だけだと信じていたあの時の自分には到底予想できないハプニングでした。

 

シャンパンをねだるバットマンに、コウモリとエビで締めくくった2016年。

体の疲れも手伝って、今年も良い初夢が見れそうです。

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(年が明けようが明けまいが、いつも顔を出してくれる太陽。何十億年間の皆勤賞に、頭が下がります。感謝です)

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