日本製人間・タイプ S - 54 が見た「あの頃」の世界

タイプ S - 54。

製造された年が刻まれたボディー。まだまだ稼働に問題はないが、最先端とは程遠いロットナンバー。

僕らは、アナログとデジタルの狭間に量産された世代。

同じ工場で生産された皆様、故障もなく、お達者ですか?

タイプ S - 50 番台、もしくは S - 40 番台後半の個体は、きっと内蔵されているメモリーフォーマットが同じなので、「あの頃」の記憶を共有できるかもしれません。

 

タイプ S - 54。僕らは、いつか忘れてしまう。

次世代型タイプ H 以降の個体に埋め込まれているエターナルメモリーチップがない僕らは、書いて残さなければ2GBしかない容量はすぐに一杯になり、古い順から自動消去を始める。頼んでもないのに、勝手にサヨナラだ。

だから、どうにかして残さなければならない。

個体のハードに永久保存するほど重要じゃない記憶。でも、忘れてしまいたくない「あの頃」の思い。

 

神奈川工場で生産された、日本製人間・タイプ S - 54 (男性型 )認識コードYTに残された個体の記憶

 

  • ランドセルの色は「赤」と「黒」のみ。そこに個性はいらなかった。それでも全ての事柄において無情にも順位はきっちりと付けられていた。
  • 小5まで週6で学校があり、とても面倒だったけど、その分、夏休みが楽しみだった。
  • 娯楽の殆どを担っていたのはブラウン管テレビ。無駄に値段が高く、とても大事に扱われていた。そのテレビの上の部分には、よく分からない白いリースの敷物が敷いてあって、その上で鮭を咥えた木彫りの熊が見えを切っていた。
  • ビデオが導入されるまで、見逃した番組はそれっきりだった。もう二度と戻ってこないので、必死になって集中して見た(夏休みになると、「タッチ」と「少年アシベ」は、よく戻ってきた)。
  • テレビは一家に一台だった為、「野球中継」という魔物がいっつもお目当のアニメ番組の邪魔をした。でも、ドーム球場が少なかった為、わりかし雨天中止になった。
  • 「巨人戦」という言葉を聞くと、敗戦後の荒れる父が浮かび憂鬱になった。9回に福王(背番号27)か井上(背番号52)が代打で出てくると、「あー、負けるんだ」と確信し、そそくさと風呂場へ避難した。
  • カトケン、ひょうきん族、とんねるず、ウッチャンナンチャンが当時の笑いの全てだった(あと、ものまね四天王と、邦ちゃんも)。
  • CDプレーヤーが来る前は、音楽番組で流れる曲をカセット録画するのが、ミュージックを我が物にする唯一の手段だった。
  • 「しーっ、し〜ぃ。これポッチっとしたら絶対音立てちゃダメだからね」録音する前に必ず言ってたこの呪文を唱えると、不思議と電話がかかってきたり、玄関のチャイムがなったり、父がオナラをしたりした。
  • 最初はその都度、怒っていたが、だんだん面白くなってしまい、ハプニングが起きないか密かに期待していた。
  • 主な間食は、着色料にまみれた駄菓子と、添加物がふんだんに盛り込まれたコンビニおにぎり。不健康だけど、たまらなく美味しかった。収入源はお年玉しかなかった為、もの凄く頭を働かして計算し、それらを購入していた。
  • タイプ S - 53 である姉の影響で、雑誌「明星」の世界に憧れた。光GENJIの「GENJI」の方に入ろうと、結構真面目にローラースケートの練習をしたが、「ローラーの音がうるさい」と横の家のおばさんに怒鳴られ、諦めた。
  • 光GENJIが彗星の如く消えたあと、突如現れたスマップの初期設定アイテム、スケボーに憧れたが、親から購入の了承がなかなか出す、そんなことをしている間にスマップはしれっとスケボーを手放していた。
  • ミニ四駆のコースを持っている家は、お金持ちと相場が決まっていた。
  • ファミコンのカセットを大量に持っている奴は神だった。ついでに「1時間規定」を定めていない家は、神を超越していた。
  • ファミリートレーナーを持っている奴は、異星人だった。
  • ハイパーオリンピックで定規を使う奴は、「ズルっこ」だった。
  • 熱血硬派くにお君シリーズは、中毒性が異常だった。桃鉄の面白さも、どうかしていた。人生ゲームをやると、最後はいつも、どろぼうになっていた。
  • ドラクエ3は世界を変えた。あんな衝撃はなかなか味わえなかった。
  • ファミコンに脳の隅まで侵されても、ちゃんと外でも遊んだ(ケイドロ、ゴム野球)。
  • 僕らは一体、いくらのお年玉を「キン肉マン消しゴム」「ビックリマン」「ゾイド」「トランスフォーマー」につぎ込んだのだろう。
  • クラスに必ず3人は「スキー」や「ディズニーランド」、もしくは「ハワイ」に行ったことがある奴がいた。もれなく羨ましかった。
  • 月に一度の外食が楽しみで仕方がなかった。母の気まぐれで、まれにマクドナルドに連れて行ってもらえる時など、天にも昇る気持ちだった。
  • ファンタが日常の贅沢品だった。駄菓子屋にあった瓶のチェリオは量が多くてお得だった。
  • ダイドーの「バニラ牛乳」が出た時は、自販機に売り切れが相次いだ。
  • はちみつレモンと、はちみつアセロラは、よく出回っていたがそれほど好きじゃなかった。
  • カッコつけてダイドーの缶コーヒーを飲んだ。
  • ユニクロも、しまむら(あったけど、今みたいな感じではない)もなかったあの頃、常にダッセー服で日々を過ごしていた。でも、同じ服を着ている人を余り見かけなかった。
  • お気に入りのジャージは青紫。理科の授業中、調子乗って騒いだらアルコールランプが割れて、青紫が溶けて火傷した。
  • 大人になったら、キャプテンサンタのトレーナーを着たり、肩パットの入ったジャケットをTシャツの上から羽織ったり、白いセーターを肩からかけたりするんだなと思っていたけど、そんな時代は二度と訪れなかった。
  • 土曜日に遅くまで起きて「ねるとん紅鯨団」を見ると大人になった気がした。その時のCMが全部 MIZUNO だった。
  • 落ちていたエロ本をよく拾った。
  • 「ギルガメッシュ」という言葉は、ファイナルファンタジー、もしくは深夜のテレ東の中の言葉だった。
  •  TVK(テレビ神奈川)は「ミュートマ」か「おとなのえほん」を見るためだけのチャンネルだった。因みに、その時初めて「もしもしピエロ」という単語を知った。
  • 想像力こそ全て。映像はいらなかった。
  • 終末思想やバッドエンディングではないアニメや漫画、そして映画やドラマで溢れていた。最後に必ず正義が勝った(後に野島伸司に崩されることになる)。
  • 織田裕二の出ているサクセスストーリーもののドラマは、基本内容が同じだったけど、それでも劇中の生活を夢見ることができた。

 

未来を実感した瞬間

 

  • ポケベルを手にした時、何かが変わった(ように思えた)。
  • センティーA、センティーDの売り切れ率が半端なく、ラルフのベストと共に入手困難アイテム筆頭だった。
  • ベルで仲間と連絡を取るようになり、ハイテクを満喫した。
  • 授業中、何も新着がないベルを無駄に触る行為に酔いしれていた。
  • 公衆電話でベルのメッセージを早打ち。ファミコン連打で生き残ってきた高橋名人世代である僕らには、そんなのは朝飯前だった。
  • 一番カッコよかったのは薄型モデルの「テクノジョーカー」名前から群を抜いていたが、薄いため、よく壊れていた。
  • 因みに、テクノジョーカーを持っている奴はオシャレで、ジェルではなくワックスで髪をまとめていた。きちんと脂取り紙を使い、ギャッツビー、もしくはジムのスプレーをシュッシュしてた。
  • 初めてPHSを手にした時(アステル)、織田裕二のドラマの世界に飛び込んだ気分になった(キャンちゃん)。
  • Windows98を使い、初めてCD-ROMの映像を見た時、天地がひっくり返った。あんな薄いものになぜ映像を入れれるのか、どう考えても理解できなかった。その時に見た KEN ISHII の Extra は自分の人生を変えた。

 

書き残した記憶は消えることはない。

これで新しい情報を入れることができる。安心して、忘れていこう。

 

タイプ S - 54。僕らは同じプログラムの中で生きてきた。

タイプ番号の違う同じ個体からコテンパンに攻撃され、スクラップになりたいと考えた時期もあった。それでも、その状況を救ってくれたのは、やっぱり同じ個体だった。

僕らは同じ個体。

故障するまで、何があっても同一の世界で稼働している。

 

戦争に駆り出された、タイプ M もしくは T 、巻き込まれてしまったタイプ S 一桁台。

彼らがいなければ、僕らは存在しない。

感謝しかない。

日本株式会社を世界トップ企業に押し上げたタイプ S - 10 、20 、30 、40 番台のレジェンド達。

彼らが道を切り開いてくれたおかげで、僕らはありがたく選択ができる。

感謝しかない。

 

同じ工場で生産された皆様、あのころ描いた未来を生きていますか?

 

僕は、自分の意思で海外発送される道を選んだけど、何とか元気で動いています。

全ての出会いに感謝。

最高なのはいつも「今」です。

 

自分の頭の中を覗いて頂き、ありがとうございました。

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 (ストラットフォードの散歩道に君臨する、ウッドスワン。薄い青に映えます)

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