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君は、ベーコンを食べたことがあるか?

カナダ 海外生活

ベーコン。そう、朝食で見かけるあのベーコンです。

カナダに来ていなかったら一生、耳にしなかった可能性のある質問を、つい先日職場で受けました。質問者はインド人のN君。2ヶ月前に同僚になった新人の子です。

 

自分はインドの方たちと馬が合います。カレッジ時代の勉強仲間も、職場で一番話す人もインド人です。何というか、勤勉だけどフザケてる人が多く、そんなところが好きなのです。

あくまで自分が接してきた中での話ですが、インド人は中国人と共通する点が多く、日本人は韓国人とよく似ています。

分かりやすい例を挙げるならば、写真を撮られるときのポーズです。

インド人も中国人も、カメラの前でしっかりとポーズを決めれます。

 

ベンチに腰掛けて腕を組み、物憂げな表情でパシャり。

大きな木に足を交差して寄りかかり、顎に右手を添えてパシャり。

 

か、かーくん? それとも、あっくん? もしくはジュリー……昔懐かし、明星ポーズの揃い踏み。

これらのポーズは全て、カレッジ時代のインド人仲間にカメラを向けた時の反応です。

ちなみにその子のパソコンの壁紙は、自分自身のポートレートでした。

パソコン開くと、明星ポーズがこんにちは。漂ってくるのは、昭和の香り。

出来ない……自分には出来ない。ていうか朝イチで、バンダナかーくん見たくない。

 

カレッジにいた日本人も韓国人も写真のポーズに派手さはなく、基本、控えめにハニかんでピースでした。そこに光GENJIの香りはしません。

一見、地味にみえますが、そこからポーズが進化すると可愛い系の仕草がプラスされます。彼らの写真の吹き出しは、「エヘ」です。

「ハニかみ」はこの2国の類似性を示し、そして代表する言葉だと思います。もちろん突き抜けている人もいますが、大部分は「ハニかみ+エヘ」です。

 

自分が出会ってきたインド人や中国人は、「ビジネスで成功してやる」という考えの人が多く、事業を起こすという選択肢を当然のように持っていました。

同僚のインド人の話では、自分が今住んでいる街にあるサブウェイのオーナーは、9割がインド人で、残りの1割が中国人らしいです。

真相のほどは分かりませんが、確かにどこのサブウェイに行っても、働いている人たちの殆どがインド系です。

今は、オンタリオ州でカナダ永住権ビザを取るのが難しく、カレッジ仲間のインド人の多くが、まだチャンスがあるアルバータ州かサスカチュワン州へと引っ越して行きました。その内の1人の子が就いた仕事が、インド人オーナーが経営するサブウェイの店舗マネージャーです。州を飛び越えるインド人サブウェイネットワーク。ヘタしたらそれは、カナダ全土を占めているのかもしれません。

 

話が逸れました、戻します。

 

インド人のN君は、真面目でよく働く良い子なのですが、今まで自分が見てきた上昇志向の塊のようなインド人たちと少し様子が違ってました。

現在23歳、日本人の彼女募集中のN君は、将来の不安をよく口にします。

 

「インドに戻るべきか、ここに残るべきか」

「自分が何の仕事をしたいのか」

「アルバータにもサスカチュワンにも行きたくない」

「なぜ、自分には彼女がいないのか」

「どこに行けば日本人の女の子と知り合いになれるのか」

「ヒゲを生やせば、もてるのか」

「ヒゲか? ヒゲが重要なのか?」

 

彼が吐く、等身大で素直な言葉たち。日本人の女の子を紹介できる人間関係を持ち合わせていない自分は、彼の助けにはなれませんが、不思議と気兼ねなく話せるので、インド料理を一緒に食べに行ったりして、親交を深めました。

そんなある日、同じ部署にもう一人いるインド人の目を気にするように自分の元へ来たN君は、内緒話のようなヒソヒソ声で話しかけてきました。

 

「ヨシサン(自分の名前を呼ぶ際、彼はいつもさん付けをして語尾を上げる)、君はベーコンを食べたことがあるか?」

「ベーコン? ベーコンって、あのベーコン?」

「そう、あのベーコン。食べたことがあるか?」

「あるよ」

「君は、ベーコンが好きか?」

「まぁ、嫌いじゃないよ」

「そうかぁ。ヨシサン、ベーコンって、オイシイね」

「え? 食べたの? あれ、N君って、ベジタリアンだよね?」

「ヨシサン、ベーコンって、オイシイね」

 

言い終わった後、N君はニタァと笑い、悪い顔をしました。

何だか、マズイ話を聞いてしまった気がしたので詳細を尋ねると、彼曰く、「ベジタリアンだが親の意思で自分が決めたわけではない、今は怖い父親の目もないので食べても大丈夫。自分は今でもちゃんとベジタリアンだ」ということでした。

ベーコンを食べてる時点でベジタリアンではないと思うのですが、N君本人がベジタリアンだと言い切るので、カナダ限定でノンベジタリアンという話に収まりました。

それ以降、N君はベーコンを食べまくっています。でもそれ以外のお肉は食べません。ベーコンオンリー。よそ見はしません。

「匂いが、いいよね」「カリカリに焼くと、オイシイね」ベーコンのことを話す彼の顔は幸せそうです。

 

そんな素直なN君がこれから先、自分の道をみつけ、ヒゲに関しての自問自答に答えを出し、求めていた彼女と共に、カナダでもインドでも自分が幸せに感じれる場所を見つけられることを、陰ながら祈っています。

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 (暮れと宵の空に照らされたホテル群。東の彼方が煌めいています)

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