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「セレンディピティ」というものを体験した日

カナダ 海外生活 頭の中

セレンディピティ……あの、一体、何のことですか? それって、TOEICの単語帳に載ってますか?

 

以前、書いた記事にもある通り、自分はスピリチュアリズムや精神世界の存在を信じていませんでした。

yoshitakaoka.hatenablog.com世の中にあるものは、自分の目で見て体験したことが全て、そう思って生きてきました。

今でも細かいことは分かりません。でも、自分を助け導いてくれる存在と、そしてもっと力強く大きなことを司る「何か」が近くにいるのだと確かに信じます。

自分は何か特定の宗教に入っているわけでも、特別な教えに従っているわけでもないので、その「何か」をどう言語化するべきかの答えを持っていませんが、ある人はそれを「天使」や「神」という言葉で表すのだと思います。

 

お金はないけど時間は山ほどあった、移住1年目。色々なタイミングが重なり、嫁から勧められブライアン・Lワイス博士の「前世療法」という本を読みました。

自分では絶対に手に取らないタイプの本だったのですが、著者である博士の精神世界に対するスタンス(懐疑的なスタート)に共感し、変な拒否反応も芽生えることなく読み終えることが出来ました。

ただ、読み終わった感想は、「へー、こんな世界もあるんだねぇー」といったもので、知識として内容は頭に入りましたが、あくまで自分とは関係のない他人事として捉えていました。

始まりの街、ストッラトフォードでの滞在も折り返しを過ぎた11月のある日、日本から友人が訪ねてくることになりました。

海を越え、遠い異国の地、しかも田舎町の幾三ハウスに来てくれることが嬉しくて堪らなく、寂しい懐事情はあれど、彼の滞在中に1度は外へご飯を食べに行こうと予定を立てました。

久しぶりに友人と会えるだけでも嬉しいのに、外食まで出来るなんて、こちらにすれば盆暮れ正月がいっぺんに来たようなウハウハ感で一杯でした。

友人を案内する場所は、頭にありました。以前、勇気を出して飛び込みで入ったダイナーです。味も美味しく、値段もリーズナブルだったので、「そこ以外にない!」と、ねるとんヨロシク第1印象から決めていました。

 

友人が到着した次の日の昼、自分は嫁と彼を連れて意気揚々とそのダイナーへ向かいました。足取りも軽く、ウキウキウォッチングで到着し、店のドアを引きましたが扉が開きません。予想外の事態に焦り、ガラス戸を見ると、そこには「Sorry, WE'RE CLOSED」の黒い看板が。

CLOSED……閉店。え、お休みなの?

おかしいです。この時間は開いてるハズなんです。自分のやった、店の前を不審者のごとく何度も通り過ぎるロケハンが正しいなら「Yes, WE'RE OPEN」の赤い看板が出ているハズなんです。

うそ……なんてこった。

「ここ、俺っちオススメのダイナー。寄ってくぅ?」

友人に良いとこを見せようと描いた安っすいシナリオが、水の泡です。

第1印象から決めてたのに……自分の差し出した右手は、あえなくスルーされました。

この時点で、頭は真っ白です。

手持ちのカードはこの1枚のみ。滅多に外食をしない自分に、他に選択肢などあるわけないのです。

「しょうがないね。じゃあ、少し街を歩いて良さそうな店を見つけよう!」

友人は顔のみならず、態度もイケメンです。

「うぅん。あはっ」

真っ白けな、あの頃の自分。小さい、実に小さい。満足に返事も返せない心は、まるで駄菓子屋に並んだモロッコヨーグルほどのキャパシティー。

トボトボしながら街をフラフラ。メイン通りが終わりに差し掛かった頃、心も顔もイケメンな友人が、「ここなんか、どうかな?」と1軒のレストランを指差しました。

「んー……え? ここ、ですか?」

それが、そのレストランを前にした自分の正直な感想でした。

ここに、こんな店なんかあったっけ? そこは、何度もその道を通っている自分の記憶にもないほど地味な外観で、外からは何の特色も感じられませんでした。

「友よ、本当にここでいいのかい? 何なら横の派手そうなパブにするかい?」

「いや、ここにしよう。何か、いいじゃん。とりあえず、入ろう」そういった友人は、もうドアに手をかけてました。

 

レストランの中に入ると、お客さんは誰もおらず、思ったより広い店内が、その閑散さに拍車をかけてました。

入店してきたアジア人一行を確認し、ウエイトレスの白人メガネさんがゆっくりとやってきて、自分たちを席に案内しました。

メニューを見ながらもガランとした店内に気持ちが落ち着かず、キョロキョロと辺りを見回していると、壁にかかった1枚の大きな日本画が目に入りました。

全くもって、ノースアメリカ、いや、どちらかというとヨーロピアンな店内に不似合いな絵が気になったので、オーダーを取りに戻ってきたメガネさんに、そのことを聞きました。

「あの絵、日本画ですよね? オーナーさんの趣味なんですか?」

「あれ? そうよ。だって、オーナーは日本人だから」

オーナーが日本人? 自分の聞き間違いでなければ、確かにそう言いました。

「オーナーは、日本人なんですか?」

「そうよ。あなたたちも日本人なの? じゃあ、オーナー呼んでくるね」

アレヨアレヨと話が進み、メガネさんは店の奥へと消えて行きました。

ここがもし、トロントやバンクーバーなら、今の会話は何の変哲もない世間話になります。でも、ここは田舎町ストラットフォード。この街に来てから見てきた住人の9割は白人です。その1割の中に日本の方がいて、しかもジャパニーズな匂いが全くしないレストランのオーナーをしている。この時点で凄い確率です。

メガネさんの言葉に半信半疑でいると、奥から初老の男性が現れました。

「どうも、こんにちは」

頭を下げた男性の仕草、言葉の発音、そして見た目。どう考えても日本人です。

「ご旅行ですか?」そう尋ねてきた彼に、自分たちの状況を軽く話しました。それが終わるとその男性は、なぜか名前を聞いてきました。自分はこっちでいつも答えている癖で、下の名前を言うと、その方は少し驚いた顔で、「僕と同じ名前ですね」と言いました。

何か色々なことが一気に起こり、ビックリしていると、その方は、「メニューにはないけど、日本の方ならカツカレー食べますか?」と提案してくれました。

日本食に飢えていた自分にしてみれば、天にも昇る気持ちです。

食事が終わって挨拶をした帰り際、「今度、遊びに来なさい」と声をかけて下さいました。

 

その方たちには、ストラットフォードに滞在中、本当にお世話になりました。実際接した期間はそれほど長くなかったのですが、とても濃い時間を過ごさせてもらいました。

「その方たち」と書いたのは間違いではなく、自分たちに良くしてくださったのは、初めに声をかけてくれた男性と、その奥さんでした。

自分は、ずっとその男性が店のオーナーだと思っていたのですが、そうではなく、その奥さんがそこのレストランのオーナーでした。

彼女は今までの人生で会ったことがないタイプで、自分が強く影響を受けた人物です。性別や年齢を超え、「こんな風に生きたい」と思える人でした。

とにかく人としての底が深く、常に凛としていて、勝手なイメージですが瀬戸内寂聴さんを少し俗世的にして、20歳くらい若くした感じでした。

彼女は満州生まれで、初めて会った時に、「私はあまり日本人が好きではないから」とおっしゃってました。それでも彼女は日本人の自分と嫁にとても親切に接してくれました。嫁はそこでお手伝いをさせてもらい、自分は学校が休みの週末に顔を出しては、簡単な掃除などをやらせてもらう代わりに、カツカレーをご馳走になりました。

オーナーと旦那さんは、前に書いたJさんと同じ、友達でも家族でもありませんが、カナダでの恩人の1人です。

自分たちが進路で悩んでいると、2人は今住んでいる街の名前をヒントに出してくれました。そこは、赴任中の夏休みに校長夫婦に連れて行ってもらった場所で、その美しさに、「いつか、こんな街に住みたいね」と嫁と話していた、まさにその街でした。

自分たちは、今の街に来たからカナダの永住権が取得でき、現在があるのです。

そこでは、本当にたくさんの奇跡が起きました。

オンタリオ州では難しいと言われていたビザ。ちょうど自分たちが申請するタイミングで、その制度が変わり永住権を取ることができ、そして、自分たちが無事獲得できた後に、またその基準が厳しくなり、以前よりも取得が困難になりました。

偶然で片付けるには、余りにも多くのミラクルがバッチリのタイミングで起きました。

それを目の当たりにした自分の頭に浮かぶのは、知識として入れていた精神世界の存在。

 

あの時、行こうと決めていたダイナーが何故か閉まっていて、友人がたまたま何の変哲もないレストランを指差し、そこがたまたま9割の内の1割の日本人オーナーで、自分と同じ名前を持った旦那さんがおり、たまたまそこのオーナーが人生に強い影響を与えてくれる人格をしていて、そしてたまたま校長が連れて行ってくれて憧れていた今の街の名前を告げて、その街でたまたまビザをサポートしてくれる仕事に出会い、そのタイミングでたまたま移民の基準が変わり、永住の道が開ける。

 

まるで、出来過ぎたストーリーです。

自分は、この一連の流れを「奇跡」「導き」「セレンディピティ」という言葉で認識しています。そして、こういった出来事を通して、自分を助け導いてくれる「存在」と、力強く大きなことを司る「何か」を確信するようになりました。

 

鳴かぬなら 奇跡を見せよう ホトトギス

 

名を知らぬ偉大な存在の方たちは、ヤルことが粋です。

マンモス感謝。

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 (滝のお陰で、虹の目撃回数がグンと増えました。ありがたくパシャリです)

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