ヒステリック道場からの逃亡

皆さんの周りに、ヒステリックな人はいますか?

 

今から書くのは、ストラットフォードという街にいた頃の話です。

そこの街にある小学校に赴任し、以前の記事で書いた「幾三ハウス」に引越しをする迄の約3ヶ月間、自分は同僚の先生のうちでホームステイをしていました。

その先生の家に住んでいた期間、毎週末の休みを使い、借りた自転車でとても長い距離のサイクリングをしていました。

ちなみに自分はサイクリングが趣味でも、取り立てて好きなわけでもありません。

自分にとってその遠出は、現実逃避のエスケープでした。

結論から言うと、苦手だったんです、ステイしていた家のオーナーが。

参考までに以下がオーナーの家の家族構成です:

 

 ● オーナー(同僚の先生):  潔癖性のエコロジスト ヒステリックさん

                                                  家のボス、主、絶対権力者

                通称、ヒスヒス

                絵を描くのが上手い、が、ヒステリック

                綺麗な写真をとる、が、ヒステリック

              

 

● オーナーの旦那さん:   株で大儲けして、いつも家に居る 

              主な仕事は「幾三ハウスの」リフォーム

              いい人なんだけど、何かずれている

              平たく言うと、ど天然

              ヒスヒスに頭があがらない

 

● オーナーの旦那さんの弟:  職業、及び、正体不明 

               いつでも、どこでも頭にはキャップ

               家の3階に独りで住んでいる

               幾三ハウスのリフォームを手伝っている

               夕方になると外でホットドックを焼く

               潔癖性なヒスヒスとは正反対の性格

               基本、家を汚す人で、ヒスヒスに疎まれている

               自分に自転車を貸してくれた、優しい人

 

 

小学校の同僚、兼、家のオーナーであるヒスヒスは、とにかく綺麗付きな人でした。

(それが行きすぎて、潔癖ヒステリックなのですが)

自分が見てきたカナダ人の中では、稀少なタイプです。

彼女は環境問題を憂いているエコロジストでもあり、エネルギーの無駄遣いをよく気にかけていました。

ゴミの分別から始まり、整理整頓、節約、節制。

家では灯りをあまりつけず、雲がない日は、月の明かりでお皿を洗っていました。

月光……綺麗ですが、家の中までは十分に照らしません。

いいと思うんです、ヒスヒス。ポリシーを徹底していて、立派です。

ただ……度が過ぎているんです。

 

自分も環境問題に興味があるし、こっちにきてから色々と実践していることもあります。

でも、正直、月の明かりでお皿は洗わないし、終始暗闇の中で生活をしてません。

こうしてパソコンもガンガン使ってます。

当時、というか今もそうですけど、自分はヒスヒスと共同生活を送るのに、レベルが足りてませんでした。

 

平日は学校があるので、なんとか耐えれましたが、休日はダメです。

まるで道場主のように、ヒスヒスのチェックの目がキラリと光ります。

 

トイレ、綺麗に使ってる?

ベットシーツ洗った?

部屋のゴミ箱、溜まってない?

机の下にあるコーラ、直接カーペットの上に置かないほうがいいよ

 

イエス

イエス…

イエス……

コーラ…………

 

がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、うるせぇぇぇー!!!

ですので、逃げました。

ヒスヒスエコ道場から解放されるための、週末限定、逃避行です。

休日になると朝早く起き、トイレ行って、コーヒー飲んで、すぐサドルです。

借り物の自転車にまたがった瞬間、かりそめの自由旅行が始まります。

 

はじめのうちは土地勘もなく、家の近所をグールグルしていただけでしたが、ある時、少し外れまでペダルを漕ぐと、国道の脇に、ずっと長く続く一本の道が現れました。

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何か、すごく気持ちが良くて、解放感に溢れていたのです。

 

道の先に行ったら、何があるんだろう。

随分先まで続いているように見えましたが、好奇心に押されて、ペダルを押しました。

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美しいんです。どこもかしこも。どんな時期でも。

自分は、この長くずっと続く一本の道に、魅了されました。

足がガクガクだけど、先を見たい。行ってみたい。

よし、行こう。

 

そんなことを毎週末続けていくうちに、いつしかストラットフォードから3つ隣の、ニューハンバーグという美味しそうな名前の街まで、往復4時間半コースのサイクリングが定番になりました。

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(ニューハンバーグに向かう途中の休憩ポイント。線路も真っ直ぐです)

 

今でもあの景色が大好きで、たまにストラットフォードに帰っては楽しんでます。

でも、手段は車です。

ペダルは漕ぎません、漕いだら股ズレ必死です。

もともと自転車が好きなわけでもなく、始めた動機が不純でしたが、心にスゥーと入ってくる景色に出会ってからは、週末がくるのが楽しみでした。

きっと当時の自分には必要なことだったのです。

そう思うと、正直、苦手でしたが、そのきっかけを与えてくれたヒスヒスさんに感謝です。

ヒステッリク道場、ありがとう。

 

ちなみに写真にある一本の道。果てしなく素晴らしい景色ですが、恐ろしい危険が潜んでいました。

それは、犬です。

ワンちゃんじゃなくて、番犬です。

写真を見れば分かる通り、道の両脇に建物は殆どありません。

もちろん、人も自転車も通ってません。

何かあるといえば、農場とその脇にある大きな家、農道を走るピックアップトラック(ちなにみ、この辺りで見た車は、皆で示し合わせたかのようにピックアップトラック一色でした。しかも冗談みたいにフォードのF-150ばかり)、そして家の前にいる番犬です。

きっと番犬にとって、この辺りで動くものは、飼い主かピックアップトラックだけなのでしょう。

彼らの家の前を通り過ぎる、明らかにトラックではないチャリに乗ったアジア人。

不審者、確定です。

とにかく追いかけてくるんです。しつこくしつこく、これでもかってくらい。

そんでもって、速いんです、彼ら。

ポチやコロに出せないスピードで、侵入者を追跡するんです。

本気と書いてヤバイと読む番犬は、距離を詰めると自分の足を噛もうとします。

正直、危険を感じました。

だからコッチも必死で漕ぐんです。ありえないくらいの回転率で。

あれがきっと、火事場のくそ力ってやつなんですね。

 

怖かったです。

犬、怖いです。

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(サイクリング初期は、街の中央を流れる川の周りをグールグルしてました)

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