通じる英語って、なんだろう 〈 This is a pen 種蒔き期〉

通じる英語って、なんだろう? 

 

カナダに移住して10年、自分はずっとこの疑問と向き合ってきました。

いや、向き合ってきたというか、嫌が応にも、向き合わざるを得ませんでした。

自分はバイリンガルではありませんし、小さい頃からインターナショナルスクールや英語教室に通っていたわけでもありません。

初めて知った英語は、ポテトで、次がハンバーガー。

つまりは、マクドナルドでした。

ですので、英語に対しての潜在的アドバンテージは、ゼロです。

もっと言うと、カナダという国は好きですが、言語としての英語に興味はなく、高校までの英語の成績は下の下でした。

その証拠に、卒業後、1年間バンクーバーへ行くと決めた自分がまずした事は、ローマ字で自分の名前を書く練習でした (本気です)。

 

そんな自分ですが、移住生活が始まってから今までの間、ヒーコラ英語と格闘し続けた結果、日常生活、及び仕事において、英語に悩まされる事は少なくなりました。

ミラクル。

英語が苦手で好きではなかった自分の英語人生を振り返ると、大きく分けて3つの段階に分けることが出来ます。

 

1つ目は、英語ってなんすか?「This is a pen 種蒔き期」

2つ目は、何でもう一歩、踏み込めないんすか? 「What's マイケル 熟成期」

3つ目は、心の不平等条約、解除 「Yes I can 刈り取り期」

 

こう書くと、ふざけてるように見えますが、本人はいたって真面目です。

ブログを始めて自分の過去をほじくり回してる事は、きっと何かの意味があるんです。

なので、自分の英語人生を全3回に分けて、勝手に紹介していきたいと思います。

おヒマな時に読んでくれたら嬉しいです。

 

 

第1段階 This ia a pen 種蒔き期

 

 〈状況〉

  • カナダ人が話す英語の理解度、30%……実際は、それ以下
  • 相手が注意して話を聞いてくれる状態で、会話が成立する
  • 相手が慈悲深い人だと、会話が成立する
  • 共通の話題を共有している時は、話が通じる
  • ガンダム、ナウシカを通り越し、こっちの知識が追いつかないほどマニアックなアニメが好きなカナダ人とは、話が通じ……ないが、日本への愛は感じる
  • マクドナルドでバリューセットのオーダーは出来るが、予備知識がない状態で行ったサブウェイではオーダー出来ずに惨敗

 

 〈自分の話に耳を傾けてくれた人物〉

  • ホストファミリー
  • 語学学校の先生、職員
  • 語学学校のクラスメイト、友達
  • 日本好きなカナダ人 
  • 自分が知らないマニアックなアニメが好きなカナダ人
  • ファーストフード店、及び、ダイナーの店員
  • 道を尋ねてくる人
  • 小銭、またはタバコをねだってくる浮浪者

 

 〈当時、実践したもがき〉

  • 定型文見込みチャートの作成
  • 会話の主導権分捕り作戦
  • 一人きりの会話練習
  • なりきりビジネスマン発音矯正

 

自分にとっての第1段階は、18歳の時に行ったバンクーバーと、移住1年目のストラットフォードになります(始めの説明に書いた通り、自分の名前をローマ字で満足に書けなかったバンクーバー時代の初期は、第1段階にも辿り着けていませんでしたが)。

 あくまで自分の場合はですが、この段階で、一般のカナダ人と「ヘイヨー ワァッツアップ」的な会話を成立させるのは、不可能でした。

まず、相手の話すスピードが早すぎて、何を言っているのか理解できない。そして、彼らの使うスラングにネイティブ独特の言い回しが、全くもってチンプンカンプンでした。

そのイメージが強く脳に刷り込まれたせいで、しばらくの間、自分はネイティブとの会話の機会が訪れただけで、気持ちの上で負戦でした。

バンクーバ時代は、それでもよかったんです。

語学学校の先生、ホストファミリー(ホームステイは色々あって2週間で終わってしまいましたが)は、自分のようなブロークンイングリッシュを話す人の扱いに慣れていましたし、語学学校の同じレベルのクラスメイトも、お互いが This is a pen 同士なので、怖いもの無しです。

「アイ ゴー ライブラリー イエスタデー!!」なんて、時制も前置詞も無視した文も、声高らかに言えました。

間違いだらけでしたが、色々な国の人々と交流ができ、ABCを復唱するクラスから始めた英語も(そのクラスに日本人は自分一人だけでした)奇跡的に伸びて、海外旅行を何とか出来る状態になって帰国しました。

最初の状態から考えれば、大成功です。

ミラクル。

 

ただ、ストラットフォード時代は話が別でした。

このブログの一番始めの記事にも書いた通り、ほぼ白人の方たちで構成されている街だったので、バンクーバーの様な国際都市と違い、人々は外国人、特に日本語訛りの英語に、免疫がありませんでした。

自分が赴任した小学校も、自分のケースが初の外国人受け入れだったようで、先生、生徒を含め、自分が人生で初めて会話をするモンゴロイド第1号というのが多数でした。

つまり、自分の英語が全く通じなかったのです。

それは、コーヒーショップでも、バンクーバーでは問題がなかったファーストフード店でも同じでした。

 

「すみません、コーヒーください」

「え? あんだって?」

「あのスモール、コーヒーください」

「え? スモール、あんだって?」

「いえ、ですからコーヒーを……ブラックでいいですから」

「あぁ? ブラック……あ、コーフィーね! 何だ、スモール、コーフィーね!」

「はぁ、そのコーフィーです。あはは、あはぁぁ」

 

どうしよう。コーヒー1つ、まともに頼めない。

なまじ、留学経験があったので、自分にはそのショックが大きく、自分の英語のせいで同僚の先生や生徒、よくしてくれる方や店の店員の困った顔を見る度に、赴任当初はかなり戸惑い、ヘコみました。

ただ、当時はいつまでも落ち込んでいられる状況ではなかったので、自分なりに考え抜き、「手段を選ばず、会話成立」運動を始めました。

 

まず自分がしたことは、「定型文の補充と見直し」でした。

定型文。

それは、自分がバンクーバー時代に最も多用した武器。というか、あの当時、これしか武器は持っていませんでした。

 

ファーストフード店で使う定型文

ドラッグストアーでの定型文

バスに乗車する際の定型文

銀行で使う定型文

郵便物を受け取る時の定型文

 

などなど、お決まりのフレーズを丸暗記し、それを状況ごとに引き出して、何とか日常生活を送っていました。

ただし定型文なので、もちろんアドリブ対応は不可能。

予想外の会話や質問をされた時には、頭のOSがフリーズ状態に陥り、「何かに気づいて考え込むフリ(指折り数える芝居付き)」を実行するか、「感情が読み取れない微笑み(ミステリアス・アジアンスマイル)」を繰り出すしか選択肢はありませんでした。

国際都市バンクーバーでは、どうにか通用したこの後ろ向きな作戦も、ノッタリ田舎町ストラットフォードでは意味を成しません。

自分の後ろに他の客が列を作ろうが、お構いなく会話を成立させようとトライするコーヒーショップの熱血オバさん。

自分の言った言葉が通じないと、あらかさまに嫌な顔 or ガッカリした表情を見せるスーパーのヒステリックレジ打ち姐さん。

 

ヤバい。ここの人たち、ほっといてくれない。

 

そう実感した自分は、今まで使ってきた定型文の見直しと、場面ごとに予想できる限りのストックを広げていき、定型文見込みチャートを作成しました。

 

例:コーヒーショップでの定型文見込みチャート

 

挨拶 → 今日の調子 → お天気談話 → 注文 → おススメ商品に対しての断り文句 → 何か訳のわからない話を切り出された時の逃げ口上 → 商品受け取り → 予期せぬトラブルが起きた場合の自然な「オーマイ・ゴッシュ」→ 感謝と別れの挨拶 

 

こんな感じで、その1つ1つのセクションに定型文を何パターンも詰め込んで、仮想コーヒーショップ、仮想郵便局、仮想ファーストフード店をイメージし、1人部屋の中で黙々と三文芝居を打ってました。

 

定型文が充実した後は、今度は発音です。

自分も日本人が苦手だと言われている「R」「L」「TH」「N」「M」の発音にもれなく手こずり、舌を無駄にマキマキ、もしくは、これでもかと前歯の裏につけ、はたまた短いそれを上下の歯に挟んでは、スルッと引っ込める作業を何度も繰り返しました。

その時、自分は「なりきりビジネスマン」になります。

発音の練習にと、使っていた単語帳にある例文を読んでいたのですが、出て来る用例が:

「どこどこ会社と合併だ」とか

「どこどこ工場に発注だ」とか

「なになに空港で乗り換えをする」

みたいなものばかりでした。

 

まぁ、トイックの単語帳でしたから、必然なんですけど、以前書いたように内装ボロボロの「幾三ハウス」の中で、ビジネスマンになりきり「商品の遅延により、契約が破棄になった」などと言った抑揚の効いたお経を唱えている姿は、間違いなく、サイコでした。

そんなこんなで何とか、着々と英語をヨッコイショしてきたのですが、カナダ人との実際の会話になると、やはり上手くいきません。

いつまで経っても負け戦です。

悔しくて、悔しくて。

だんだん体面とかどうでもよくなってくるんですよ、悔しいから。

そうなると、会話の中で「何言ってるか分かんねーなー」と実感した辺りで、「アーハァン」の相槌を打つのを止め、強引に会話の主導権を分捕るようにしたんです。

もう、なりふり構っていられません。

せっかくネイティブと話せる貴重な機会、「アーハァン」で終わってなるのもか、です。

 

「エニウェイ! 皆さん! 皆さんは日本に旅行したことありますか?」

「え? 旅行? 何だい急に?」

「アイ リアリー ウォントゥー ノウ。 アイ リアリー ウォントゥー ノウ」

「……」

 

壊れたロボットです。

消し忘れた、「アイ リアリー ウォントゥー ノウ」チャンネルです。

悔しかったんです。

分かんなくて、通じないのが。

 

まぁ、このように迷走を続け、英語人生を進んでいくのですが、1年間の赴任が終わってからは、ストラットフォードを出て、違う街で仕事を得ます。

その頃には初任給ももらい、英語もある程度のレベルになり、調子こいて「ビックマックセットのラージサイズにナゲット付き」なんて頼むようになってます。

 

ただ、その勢いも、後に入学するカレッジで急停止する羽目になるのですが、その話は、また次回「What's マイケル 熟成期」で。

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 (大好きな公園にある並木道。この道の先にあるのは……隣接するゴルフコースです。行き切ると、情緒もへったくれもありません)

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