ハッシュタグ「人間を出せ」

前回の記事の続きです。

yoshitakaoka.hatenablog.com

ハッシュタグ「人間を出せ」の世界。

これ、個人的に十分あり得る未来だと思います。

自分が例えに出した2037年、今から20年後の世界なんですけど、現在の進化のスピードを考えたら、きっと想像以上のデジタルワールドが自分たちを待っているのだと考えられます

20年。

その年月は多くの常識を変えるのに、十分すぎる力を持っています。

 

例えば今から20年前の1997年。

ビジュアル系と初代プレーステーションが世の中を席巻し、庶民レベルの最先端はポケットベルからPHSへ! という時代でした。

個人的には「モード系とは違う個性」と息巻いて、アイビーやモッズスタイルに憧れ、少し背伸びして下北沢へ古着を漁りに行っていました。

それでも流行りに逆らう勇気はなく、品切れ状態だった紺のラルフローレンのベストを探し回っては街を徘徊し、どうにかしてそれを手に入れて安心感を得ていました。

(そんなラルフのベストも、すぐさま先輩に呼び出され献上する羽目になる暗黒時代真っ盛り。体の痛みと新聞配達時の寒さが身にしみます)

 

とにもかくにも、20年経った今、「あの頃」はもう存在していません。

さようなら、たまごっち。

ありがとう、docomoのiモード。

アステルに、DDIポケット、お世話になりました。

 

そう、泣こうが喚こうが、たまごっちをしようが時代は変わっていくのです。

2037年、今ある大部分の職種が人間以外の手で行われているであろう時代、その担い手になるのが作業用ロボット、AI搭載型ロボット、そして人間と見た目が変わらないアンドロイドだと思います(アンドロイドは費用の面で、そこまで普及していると思えませんが)。

それらの機体は、特に製造業とサービス業の分野によく見られるようになり、自分が働いていたホテル業界にもテクノロジーレイバーの嵐は吹き荒れるでしょう。

 

ホテルの現場に置かれたAI搭載機はとても優秀で、客の無理難題も問題なく対処できると思うのですが、文句が人生のお友達である YouはShockな人々は、それで満足できるとは考えられません。

「おぅ、責任者を出せぇい!」と同じ勢いで、「おぅ、人間を出せぇい!」とAI搭載機が並ぶフロントデスクで叫んでいる様子が容易に想像できます。

何を言っても一方的な謝罪しかしないAI搭載機、眼球に埋め込まれたレコーダーによって客の言動を逐一記録するアンドロイド、そんなものよりも彼らが必要としているのは、嫌な顔をされても話を聞いてもらえる不完全な人間なのです。

 

そこで呼び出される度に顔を出さなくてはいけない人間スタッフ、たまったものではありません。

きっと1人、多くても2人しか配属されない人間のフロントデスク業務の内容は、2割が報告書のチェックで、後の8割はゲストの苦情処理なのだと思います。

それはフロントデスクだけに限らず、各部署も同じような状況でしょう。

 

例えば、ホテルのメンテナンス。

実働するのは全て機械、人間はその機体を現場に運ぶのと管理が仕事です(もちろん、クレーム処理も)。

レシービングも一緒。

荷物受け取りから適所への陳列、配達は全て機械。人間は受け取りサインと機体の管理だけ(あと、クレーム処理も)。

ジムにはパーソナルAIインストラクター機能が付いたマシーンがあるので、人間はいりません。

アカウンタントも予約係も、セールスも、みーんな機械。

 

ハウスキーピングだって、問題ありません。

メイドロボットはどんな人間よりも迅速にベットメイクができ、アメニティーも文句も言わず運びます。部屋の外と内側を繋ぐセンサー感知ボックスに物を運び入れれば、ワザワザ部屋をノックする必要もありません。

部屋のドアの横に位置しているそのボックスは、ある程度の大きさがあるのでルームサービスオーダーだって収納できます。しかも、自動温度調整付きなので、食事が冷めたり、ドリンクが温かくなる心配もありません。

先程も触れましたが、運んでくる機械の認証センサーを感知した時のみボックスが開くので、安全面に関してもノープロブレムです。

このように各部署の状況を考えても、クレーム対処以外に全くもって、人間はいらないのです。

 

ただ、レストランやバーはどうでしょうか。

うーん、ここは難しい。きっとその頃には2つの食事スタイルが確立されていると思います。

1つはフードコート形式の完全自動スタイル。調理も提供も全て機械だけで行われます。値段は低めで、支払いはマイクロチップかスマートデバイスを所定のスクリーンにかざすだけです。

もう1つは自分たちが知っているスタイルのレストラン。受付から提供、調理も勿論、人間が全て行っています。バーもきっとこの形。

謳い文句は「100%ヒューマンメイド」

ヒューマンメイド……皮肉にも今使われている意味と真反対の趣旨でその言葉が使用されます。

「いやぁ〜、やっぱし人の作ったもんは違うね〜!」

2037年のレストランで必ず耳に入るフレーズです。

ちなみに、レストランの値段設定は高めで、サーバーにはチップを払わなくてはいけません。支払い方法も少し変わっていて、レストランでは何とまだ紙幣を受け付けてくれます(コインも)。デジタル通貨でほぼ統一されている世界。孫へのお年玉もスマートデバイス経由という味気ない実情を考えれば、奇跡です。客の年齢層が異様に高いのも頷けます。

 

近い将来、世界を大きく変えることになるロボット技術。

機械はとても勤勉で正確です。

アンドロイドは人間と変わらない姿をしていますが:

「タバコ休憩に行くわ」「この週、有給3日ちょうだい」

なんてことは言いませんし、凡ミスもしません。それに職場の人間関係トラブルとも無縁です。

 

特定の職場では必要とされなくなってしまった人間。

機械に職を追われた人は、一体どうなってしまうのか?

 

デモを起こして、機械やアンドロイドを破壊するのでしょうか?

それともベーシックインカムを政府からいただき、何とか生活ができる毎日を送るのでしょうか?

もしくは、その全てを捨ててテクノロジーを拒否し、政府未公認地で田畑を耕すのでしょうか?

 

自分にはどうなるか分かりません。

想像はいくらだってできますが、実際のところは読めません。

でも、読めないからこそ、いくらでも自由に考えられるのです。

 

勝手に考えた20年後の近未来、それまではまだ時間があります。

知識を蓄え、それを有効的に活用する脳の回路を作る時間も、ありがたいことにまだ残されています。

時代の変化に逆らうつもりはありませんが、マイクロチップだけは埋め込みたくないです。

 

「言葉はいらない、チップで語ろう」

有名なアイドルを使ったCMが毎日流れるかもしれません。

 

「かざさないと、見えない世界がある」

渋い俳優の顔が夜空のアドスペースに浮かぶ日がくるでしょう。

 

「チップでチケットを購入すると、私達のスペシャルグラビアが見れちゃいます!」

国民的アンドロイドグループが魅惑のデジタルボイスで語りかけてくる可能性は高いです。

 

それでも、嫌だ。

そのことで、どんなに生活が不便になろうとも、周りから白い目で見られようとも、自分はマイクロチップを埋め込まない。

 

心の自由を取り戻すために、どれだけの年月を要したことか。

夜中に何度、目を覚ましただろうか。

折れた心を立て直すのに、何回バーベルを上げたことか。

 

埋め込むことによって、1ミリでも誰かのコントロール下に置かれる可能性があるのならば、自分は偏屈ジジイとしてこの世にのさばります。

笑われて後ろ指を指されても、心の自由と共に生きていきます。

 

まだ見ぬ、近未来。

色々と想像しながら、楽しみにその訪れを待ちます。

 

なんの根拠もない空想話を読んでくださり、ありがとうございました。

 

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(どんな時代になっても、こんな空を見続けていたい)

ようこそ、ホテル「近未来」へ

「未来」と言っても、何百年も先の話ではなく、何十年先の「近未来」。

例えば、今から20年先の2037年。

地球がどうなっているとかいう話はひとまず置いておいて、一部分にクローズアップ。

映し出すのはホテル。

自分が以前、働いていた場所の20年後の姿。

恐ろしくも興味が惹かれる、そのホテルでのチェックイン模様。

 

《 以下の文は、書き手の勝手な妄想によって書かれており、登場する法律、出来事、機能などは全てフィクションです》

 

ようこそ、ホテル「近未来」へ!

 

今から20年後の2037年。車はまだ世界中の空を飛んでいません。

技術上では実現可能なのですが、法律の整備、政府と民間との間での空中空間権利などが整っておらず、実験的に上空飛行を実施しているバルト三国でしかその姿を見ることは出来ません。

ですので車で来られるお客様は、今でも普通に道を走ってこられます。

ただ、燃料はガソリンではなく水、運転も完全自動となっております。

 

パーキング

お客様がホテルの正面玄関に着きますと、車に標準装備されているタブレットに番号が表示されます。

それが、お客様のパーキングナンバーです。

番号は今記憶されなくても結構です。お客様のパーキングナンバーは、車のタブレットとコネクトされている全ての末端デバイスに自動で送信されます。

クラシック車種(ガソリン車)でお越しになるお客様につきましては、予約の際にご登録いただいた電話番号のスマートデバイスにパーキングナンバーが表示されますので、そちらでご確認ください。

(尚、バレーパーキングサービスは、クラシック車種のお客様限定とさせて頂きます)

 

国からお客様へのお願い

ガソリン車から水電動車への切り替えリミットは、2045年です。

それ以降のガソリン車での公道走行は罰則対象になりますので、切り替えはお早めに。

お車をお止めになった際、指紋認証、及びマイクロチップセキュリティーシステムは必ずオフにして下さい。

利用規約の欄に明記されている通り、お客様がホテルにチェックインされた後、お客様の車は当ホテルのメインホストコンピューター預かりになります。セキュリティーシステムをオンにされたままですと、コントロールエラーが生じ、お客様の車を安全に駐車場へ運ぶことが出来ません。

 

お車をご利用の際は、客室のスマートデバイス、もしくはお客様のスマートデバイスからホテルのリクエストボックスへアスセスし、番号を入力してください。

入力から15分以内に、ホテルのフロントへお車をお運びいたします。尚その際、お車の指紋認証、及びマイクロチップセキュリティーシステムはオンになっておりますので、お手数ですがお車を再度お預けになる際は、必ずシステムをオフにしてからお戻りください。

(お客様が15分以内に乗車されない場合、お車をテンポラリーパーキングスペースへと移動させて頂きます。そちらから再度フロントへ車を回す際、5分ほどの待ち時間を頂きます。尚、リクエストから30分が過ぎますと、お客様の車は自動的にテンポラリーパーキングスペースからメイン駐車場へと移動しますので、お客様のリクエストは無効となります。お手数ですが、スマートデバイスに無効アラートが表示された際は、リクエストの再入力をお願いいたします)

 

ベルサービス(お荷物サービス)

お客様のお荷物は、ベルサービスカートが迅速に、そして安全にお部屋へとお運びします。

お荷物のお手伝いが必要な際は、お近くのベルパーソンへ声をお掛けください。

係りの者がお客様のお荷物を車からベルサービスカートへと移します。

全ての荷物を移し終わりましたら、ベルサービスカートのタッチスクリーンにお荷物を受け取る方のマイクロチップをかざしてください(複数可)。尚、マイクロチップの埋め込みがなされていないお客様につきましては、指紋のスキャンをお願いしております。

お客様の個人認証が済んだ時点で、サービスカートは強化プラスチックで覆われ、お客様の到着より早く、お部屋へとお運びします。

お荷物を受け取る際は、マイクロチップ、もしくは指紋をカートのスクリーンにかざし、強化プラスチックカバーを解除してください。

(自動チェックインが事前にお済みでない場合、到着が遅れる場合がございます)

 

チェックイン

当ホテルは、チェックインフリープログラムに参加しております。

ご予約時にタップして頂いたお客様のマイクロチップ、もしくはスマートデバイスがホテルの敷地内に入られたと同時に、お客様の希望にそったお部屋をご用意いたします。

(混雑時は、ご要望にそえない場合がございます)

お客様がマイクロチップ、もしくはスマートデバイスをお持ちでない場合は、マニュアル型のAIチェックインをご利用いただけます(個人認証に15分ほどお時間が掛かります)。

国からお客様へのお願い

マイクロチップの埋め込みは安全で、あなたの生活を便利にします。

埋め込み後は、マニュアル型の個人認証で時間を取られることも、スマートデバイスの盗難、紛失を心配する必要もありません。

埋め込みに要する時間は1分ほど。費用もかからず、痛みも全くありません。

マイクロチップの埋め込みは、地方自治体のコミュニティーセンターで24時間、365日承っております。

(高齢者のための、訪問埋め込みサービスも開始いたしました)

 

アンドロイドスタッフへの注意点

当ホテルでは、ロビーにあるインフォメーションセンターに2名、29階にあるコンシェルジュラウンジに3名のアンドロイドスタッフを配置しております(2037年1月現在)。

2036年8月に施行された「アンドロイド保護法」により、アンドロイドに対して以下の行為が罰則の対象になりました:

  • アンドロイドへの身体的、精神的な暴力行為(誹謗中傷も含む)
  • アンドロイドへの身体的、精神的なセクシャルハラスメント行為

以上の行為が確認された場合のみ、アンドロイドスタッフに内蔵されているデーターから違法行為を犯した個人を特定し、その内容をサイバー警察署へと送信させて頂きます。

(それ以外のデーターはプライバシー保護法に基づき、公表されることはありません)

 

 

……すみません。思ったよりもダラダラと長くなってしまいました。

小説に書く題材は今の所、現代のものばかりなのですが、こういった未来の日常を想像するのは、とても楽しいです。

そこの世界にいる方たちの(客やスタッフなど)会話がたくさん浮かんできます。

「人間を出せ」

このフレーズは、自分の中で2037年のナンバーワンハッシュタグです。いつの時代も、人は人に文句を言いたいものだと予想します。

 

頭の中で想像する未来は、いつも面白く、そして恐ろしいです。

 

よろしければ、こちら続きとなっております。

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(例え2037年になろうとも、この街の目玉はきっと滝のまま。デジタルでは表現できない強さと安心感があります)

愛しのタテ耳と、白い靴下

突然ですが、自分はネコが好きです。

正確に言うと、「好き」という気持ちで収まりきれないほど、愛しています。

あの、顔。あの、仕草。お腹なんか見せちゃうものなら、もう至福の極みです。

何なんですかね、ネコって。何で、あんなに可愛いんですかね。

以前の記事で紹介したことがあるのですが、ウチはネコが2匹います。名前はミータとナナです。

仕事から帰り車を停めると、音に反応したナナは居間の窓から顔を出し出迎えてくれます。まさにデレデレのなせる技。

玄関を開けて中に入り、着ていたダウンを脱ぐとこんな感じです。

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(内側の温もりが大好きな、ナナ)

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(グルグルグルグル、ロールして)

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(さんざん手に絡みついた後に)

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(放心して、What's マイケルポーズのまま、固まります)

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お前のザイオンは、どこだ?

昨日の記事の続きです。

yoshitakaoka.hatenablog.com

小太りバドワイザーに無理を聞いてもらい、地下の騒音地獄から抜け出した自分は、1階の角部屋で人間的な生活を手に入れました。

「下はうるさかっただろ。悪い奴らじゃないんだ。ただ、若いだけだ」

1階に移った日の夜に、キッチンで顔を合わせたBさんは、そう言って顔をほころばせました。

Bさんは、この寮で初めてヤマン挨拶をしたガッチリ体型のジャマイカンです。

しばらく1階で生活して分かったのですが、常にタンクトップを着て筋肉を前面に押し出しているBさんは、この階のまとめ役のような人で、彼の周りには常に年齢層が高めのジャマイカンもしくはバルベディアンがいて、夕食時には大所帯でテーブルを囲んでいました。

 

自分は地下にいる時から、キッチンで料理を作っては速攻で自分の部屋に運び入れ、いつも1人で食べていました。その方が気分的に楽だったのです。

ですので、寮の住人とは1階に移ってくるまで挨拶以外は殆ど会話を交わしませんでした。得体の知れないものをキッチンで作っている以外は、バスでしか見かけないアジア人。彼らにしてみたら自分は、何の掴み所も無かった住人だったと思います。

そのことが、自分が呼ばれていた呼び名である、「チャイナ」に現れています。

 

前回の最後の部分でも触れましたが、以下が社員寮での自分の名称変化図です:

チャイナ → ジャパン → サムライ → サムライヨシ → ヨシ → ミスターヨシ

 書いてみただけでは意味が全く伝わってこないので、一つ一つの名称解説と共に、寮で起きた変化を書いていきたいと思います。

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めぞん《ヤーマン》一刻

「寮生活」というものを、自分は今までで一度だけ経験したことがあります。

期間は5ヶ月。場所はオンタリオ州のコテージカントリーとして知られる、ムスコカという場所でした。

自分が昔から抱いていた寮生活のイメージは、「めぞん一刻」もしくは「ツルモク独身寮」です。

正確に言うと、めぞん一刻の舞台はアパート(一刻館)なので寮生活の部類には入らないのですが、自分は「寮での生活 = めぞん一刻のような和気あいあいとした雰囲気」という図式を、頭の中で勝手に作り出していました。

 

五代くんに、音無さん、なんなら白鳥沢レイ子さんまでいる生活。

淡く、そして生温い考えでした。

 

自分が通っていたカレッジのコースには、2年目に一般企業へのインターン学習があり、「コネクションを得るチャンスは、ここぞ!」と息巻いた自分は、だいぶ背伸びをして、家から遠く離れたリゾートホテルのインターンに応募しました。何回かの面接の末、先ばしり前のめりな姿勢が奇跡的に通じ、職を得ることが出来ました。インターンの期間は5ヶ月。半端な入寮期間の理由は、そのためです。

 

大自然に囲まれた小さな町にある、会社の寮、というか巨大シェアハウス。

不安な気持ちで辿り着いた自分を最初に迎えたのは、ガッチリとした体型の黒人さんでした。

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