匂わないシルエット

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***

 

あいつが狂っているって?

冗談じゃない

目はしっかり開いてたぜ

 

あの子がイカれているって?

何を言ってるんだ

繊細で鋭いだけだろ

 

存在が浮いていると笑われても

好きにさせておけばいい

 

無理に溶け込み泳いでも

いつかは溺れてしまうからね

 

「気味が悪い」と背中を刺すな

「理解できない」と机を押すな

 

手なんか繋がなくたっていい

椅子に画鋲を撒かなきゃいい

 

違いはいつだって厄介だ

誤解と偏見を染み込ませる

 

確かに歩幅は同じじゃない

でも「相違」イコール「敵」ではない

 

ずっと声を探してた

同じと違いを飛び越える

息をしたよく通る声を

 

拡声器で叫ぶ個性はいらない

裏にある強制はもっといらない

 

情報ばかりが溢れる画面

あなたの心はどこにある?

 

一緒じゃなくても構わない

あなたの本当を聞かせてくれ

 

濾過され落ちたシルエットじゃ

生きた匂いは嗅げないんだ

 

心で見たものを信じたい

感じたものに委ねたい

 

ほら

今日もまた夜が終わる

尽きない衝動は持ち越しだ

 

朝を盾にして憂いが迫る

こっちへ来いと道を塞ぐ

 

俺も感情を表す者の端くれ

つけた灯りが消されようとも

唾を吐いて笑ってやる

 

 

子供を好きじゃなきゃ人間じゃないって?

だったら俺は人間じゃない

 

猫は好きで堪らないけど

猫は人じゃないからダメなのか?

 

無条件に小さい子を好きになれない

力無き者は喰われると知っているから

 

差し出した手は払われた

玄関の鍵は閉まっていた

 

行くとこがなきゃ暗闇だって走るさ

止まって沈むのはごめんだからね

 

2回目に回ってきた札は引かない

誰かが吸い尽くした骨なら懲り懲りだ

 

ほら

今日もまた夜が終わる

尽きない衝動は持ち越しだ

 

朝を盾にして憂いが迫る

こっちへ来いと道を塞ぐ

 

俺も感情を表す者の端くれ

つけた灯りが消されようとも

唾を吐いて笑ってやる

 

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***

〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉ミチコオノ

***

 

 

皆さまへ

 

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

都合により、しばらくこちらを離れます

 

色々と整いましたら、この場で報告させて頂きます。

 

 

感謝。

絶対に、振り返っちゃダメだよ

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***

 

「おい、ここ、誰んちよ?」

 

「私のお婆ちゃんち」

 

「誰か住んでんの?」

 

「ううん。結構前に亡くなってから、それっきり」

 

「へー。何でここ売らなかったんだよ。こんな場所でも、ちったぁ金になっただろ」

 

「どうしてもここは、手を付けたくなかったんだって」

 

「何でだよ?」

 

「何でかは知らない。それより、来る途中にも言ったけど、いろいろ変だなって思ってもシキタリだから気にしないでね。そういうものだから」

 

「でもよ、バットで傘を殴るなんてシキタリ、聞いた事ないぜ」

 

「知られてるはずがないよ。すっごい閉鎖的な場所だから」

 

「そういうもんなのか?」

 

「うん。そういうものなの」

 

「で? 何すればいいんだっけ? 手順のところはあんまし聞いてなかった」

 

「ちょっと、ちゃんとしてよ。これ、すっごい大事なんだから」

 

「分かってるよ。なんか面倒くせーけど、これ終わったら、ヤラしてくれるんだろ?」

 

「うん。終わったらね」

 

「本当だな?」

 

「うん」

 

「全部だぞ?」

 

「しつこいよ。昨日、覚悟見せたでしょ?」

 

「しかしよー、なんでこんなしきたりを作ったのかね? 好き同士なら勝手にヤリゃーいいじゃねーか。それをワザワザこんな」

 

「示さなきゃいけないんだって。二人の気持ちを、神様に」

 

「そんなの信じてんのか?」

 

「信じてるっていうか、もの凄く大事な儀式って、ずっと言われてきたから。今更、無視できないよ」

 

「でもよ、誰かとヤル度に、毎回こんな事しなきゃいけねーの?」

 

「一回だけだよ。初めての時だけ」

 

「え? 初めてって、お前、そうなの?」

 

「うん」

 

「マジで? お前いくつだっけ?」

 

「二十一」

 

「遅くねー? 何でよ? そんなに可愛かったら、チャンスあっただろ?」

 

「そんな状況じゃなかったの、アッくんが一番よく分かってるよね?」

 

「あれ? お前んちと関わるようになってから、何年よ?」

 

「六年。アッくんが最初にウチ来たの、私が十五の時だよ」

 

「六年、そんなに経つのかー。いや、俺、初めて見た時からずっと可愛いと思ってたんだよ。俺よ、何回もお前の親父に言ったんだぜ、悪いようにはさせないから預けろって。でもあの親父、頑固でよー。『ユイには指一本触れさせない』ってうるせーの。で、結局あのザマだ」

 

「……」

 

「お前の親父も、お前くらい物分りがよけりゃー、あんな事にならなかったのになー」

 

「ねぇ。その人の名前は出さないでって言ったでしょ。それに、私は現実主義なの。一緒にしないで」

 

「あぁ、分かった分かった」

 

「あのさ、本当に、大丈夫なんだよね。アッくんの女になったら悪いようにはしないって、本当だよね?」

 

「おぉ、問題ねーよ。仕事も斡旋してやるし、モノが欲しけりゃ市場の半額で売ってやる。金は返せる上に、お前は逃げ続ける必要ねーし、俺も探す手間が省ける。まさに一石二鳥だな! 三鳥か?」

 

「そうだね」

 

「ところで、お前よ、何でこっちに顔見せる気になったんだよ? あんなに嫌がってたじゃねーか? 何でだ?」

 

「電話でも話したでしょ。お母さんがいなくなったの。あんなに守ってきたのに。もう、疲れたんだ。逃げ回るのも、誰かの世話するのも。だから、アッくんに連絡した」

 

「ふーん。どーしよーもねーな、お前のかーちゃん。まぁ、それでも、いるからマシじゃね? 俺のは顔も見た事ねーからよ。まったくよー、世の中クソだな」

 

「そうだね」

 

「あー、何かブッ壊したくなってきた。まぁ、いいや。早く何するか言えよ」

 

「うん。あのね、まずこの儀式は、朝七時に始めなきゃいけないの」

 

「朝の七時? ふざけんなよ! そんなに早く起きた事ねーよ」

 

「お願いだから、聞いて。私としたくないの?」

 

「してーよ。マジでしてー」

 

「じゃあ、ちゃんと手順を守って」

 

「分かったよ」

 

「ここの前の道の先に、畑があったでしょ? あれはキャベツ畑なんだけど、私は明日の朝七時にここから、そこに向かって歩くの」

 

「赤い傘を持ってだろ?」

 

「そう。大きい白い服を着て、右手に赤い傘を持って歩くの。アッくんは七時五分になるのを待って、バットを持ってここを出て」

 

「何でバットなんだよ。やっぱり、何か変じゃねーか?」

 

「言ったでしょ? シキタリだから気にしないでって。昔はね、木の棒とかを使ってたみたい。傘も和傘で、竹で作ったやつだったんだって」

 

「ふーん。でも何でその赤い傘をブン殴るんだよ」

 

「赤は未練、そして清い血を表しているの。交わる二人の女性が赤い傘を持ち、男性が何か硬い棒、この場合はバットを持ってその赤を断つ。あ、断つって、切断するって意味ね」

 

「何だかよく分かんねーな」

 

「ねぇ、アッくん。ここ重要だからちゃんと聞いて。もし失敗したら、その二人は二度と交われなくなるんだから」

 

「マジで? それ、ヤベーじゃん。聞く聞く」

 

「アッくんが家を出るのは七時五分ジャスト。それ以前には、絶対に外に出ないで。そういう決まりだから。あと、私の後を追いかける時、絶対に喋りかけたり、声を出したりしないで。それが守られなかった時点で、この儀式は失敗だから」

 

「何だそれ、厳しくねー?」

 

「それ位、私にとっては重要なの。アッくんが私の初めてになるんだから」

 

「その響き、たまんねーな。よし、分かった。ちゃんとやるよ」

 

「ありがとう」

 

「でも、そんなに思いっきりブッ叩いて、大丈夫なのか? 頭、近いだろ」

 

「大丈夫。私はこうやって、後ろに腕を伸ばしながら傘を持つから頭には当たらない。だからアッくんは何にも気にせず、赤を目掛けて思いっきりバットを振り下ろして。思いっきりだよ、じゃなきゃ意味ないから」

 

「あぁ。バットでブン殴るのは慣れてっから問題ねー」

 

「ならよかった。私は歩いている間、振り向いちゃいけない決まりになっているの。でも一応、心の準備をしたいから、私に近づいてくる時に、なるべく大きな足音を立ててくれるかな?」

 

「分かった。ドシドシ行くよ。でもよ、これ、人に見られたら何か勘違いされんだろ?」

 

「それは大丈夫。日曜の朝は殆ど人がいないし、こんな入り組んだとこに人なんか来ないよ。それに、もし人に見られたとしても、みんなシキタリの事を知ってるから気にせずに続けてね。どんな事があっても、絶対に途中でやめちゃダメだよ」

 

「やめねーよ。ヤリてーからな」

 

「うん、よろしくね。じゃあ私、行くから」

 

「あぁ? 行くって、どこに? ここに泊まってくんじゃねーの?」

 

「ダメなの。儀式の前の日に一緒に寝ちゃ。そういう決まりなの」

 

「はぁ? また決まりかよ? こんな何もねーとこに一人でいてどうすんだよ? ふざけんなよ」

 

「一日くらい、問題ないでしょ? それとも、怖いの?」

 

「おぃ、なめてんじゃねーぞ。怖いわけねーだろ」

 

「なら、よろしくね。アッくん、七時五分ジャストだから。絶対その前に出ちゃダメだよ。失敗したら、二度と出来なくなるからね」

 

「分かってるって。その代わり、終わったらとことんヤルからな」

 

「分かってるよ。じゃあ、また明日」

 

 

 ***

 

 

「久し振りだねー、ユイ。元気だった?」

 

「うん、まぁ。ケイコは?」

 

「元気だよー。ユイって、こっち帰ってきたの何年振り?」

 

「ケイコに会うのは中学卒業以来だけど、お婆ちゃんちがあったから、ちょこちょこ帰ってたよ」

 

「そっかー。それにしてもさー、連絡もらった時はビックリしたよ。詳しい話を聞くまで、てっきり誰かのイタズラかと思ってたしね」

 

「そうだよね」

 

「あ、ウチの親から、ユイのお父さんの話、聞いたよ」

 

「そうなんだ。うん、色々あってね」

 

「辛かったろうねー。絶対、大変だったと思う」

 

「あの、その話、あんまりしたくないんだ。ごめん」

 

「あぁ、ごめんごめん。思い出したくないもんねー」

 

「それよりさ、前に話したモデルの件、大丈夫なんだよね?」

 

「大丈夫。朝早いのがアレだけど、問題ないよ。ねー、何て言う雑誌に載る予定なの?」

 

「電話でも言ったんだけど、まだ決まってないの。でも、撮る人は結構有名な人だから、良いのが撮れたらちゃんと載ると思う」

 

「大体でいいからさ、その人、どんなのに載せてるか教えて?」

 

「え、例えば、ルゴモとか、エルフュートとか」

 

「え! 本当に!? エルフュートとかコンビニに置いてるやつだよね?」

 

「うん。でも、まだ決まったわけじゃないよ。良いのが撮れたら」

 

「オッケー、オッケー。あたし頑張るからさー。ユイ、何かありがとねー。色々あったけど、これからもよろしくね。でもさー、何で私に連絡くれたの? あんまり繋がってなかったから、何でだろーって思ってた」

 

「あの、私、雑誌の仕事してるって電話で言ったでしょ? それで今度そのカメラマンの人が『キャベツ畑の写真をバックに、作り込んでないモデルを撮りたい』って言い出したの。それで地元にキャベツ畑が沢山あるなぁって思い出して、そしたらケイコの顔が浮かんだの。地元で可愛い子っていったら、ケイコだなって」

 

「えー、そんなことないよー。ユイだって可愛いじゃん」

 

「私は全然、そんな事ないから」

 

「とかなんとか言っちゃって、絶対に自分では可愛いって思ってるでしょ? ユイって中学の頃からそうだったよねー。そこは変わってないねー」

 

「……」

 

「あ、そうだ。腕の傷って消えた? ユイ引っ越しちゃったから聞けなくて。あたし心配したんだよー。事故とはいえ、あたしらが原因で起こったことだからさー。事故とはいえ、ね」

 

「うん。大丈夫」

 

「ねー、ちょっと気になるから見せてよ。何か悪いからさー」

 

「え、いいよ。大丈夫だから」

 

「何でよ、心配なんだって!」

 

「ねぇ、もうやめにしない? 明日の説明していいかな?」

 

「ちょっと怒んないでよー。悪かったって反省してるんだからさー」

 

「カメラマンのリクエストは自然体。電話でも伝えた通り、朝方に撮りたいみたいなの。で、この人、ちょっと変わってて、色々注文があるんだけど、いい?」

 

「え? どんなの?」

 

「まず、カメラを意識して欲しくないから望遠で撮るって。だから、目の前に何もなくても、とにかく自然体で歩いて」

 

「遠くからだったら、顔とか写んなくない?」

 

「それは大丈夫。その人のカメラ、随分近くまでよれるから。とにかくカメラを意識して欲しくないみたい」

 

「オッケー。あと服なんだけど、こっちで用意したのじゃダメなの? 白のワンピースで赤い傘を持つって言ってたよね? あたしそれより可愛いの持ってるんだけど」

 

「ごめん。服は指定が入ってるの。それが撮りたい絵らしいから」

 

「えー、残念」

 

「うん、ごめんね。あと、歩く速度はゆっくりでお願い。電話でも言ったけど、場所は元ウチの前の道からスタートして、先にあるキャベツ畑の終わりくらいまで。そこまであんまり距離はないけど、十五分くらいかけて歩いてくれないかな? 言ってる場所、分かるよね?」

 

「分かるよ。ユイの家って、あの竹藪の裏でしょ?」

 

「そうそう」

 

「あそこの前の道って事は、カメラはきっと、竹藪か奥の林に隠れてるんだね」

 

「意識しちゃダメだよ」

 

「分かってるって」

 

「あと、向こうから言われているのは、傘の持ち方。細かく指示が出てるから、注意して聞いて」

 

「いいよ。何かワクワクするね」

 

「歩き始めは、体から少し離して持って欲しいんだ。こう、後頭部の上辺りに置くように。それで、キャベツ畑が左に見えてきたら、徐々に傘を近づけて欲しいの。今、ちょっと見せるね。えっと、こんな感じ。ゆっくり頭に近づけるの。ちょっとやってみてくれない?」

 

「こう? こんな感じ?」

 

「そうそう。もっとゆっくりでもいいよ。それで、ケイコがキャベツ畑の半分くらいまで来たら、そのカメラマンが出てきて、ケイコを後ろから追う形になるの」

 

「え? 近くで撮るの?」

 

「そう。それで、人の足音が聞こえたら、持っている傘を完全に後頭部に当てて欲しいんだ。当ててって言っても、頭の形が出るまで押し付けちゃダメだよ。優しく触れる感じ」

 

「すっごい細かいねー。でも、近くで撮るなら、顔のアップも撮ってくれるよね?」

 

「うん、後ろ姿の後にね。ケイコ、この時、絶対に守って欲しい事があるの。これ守れなかったら雑誌には載せられないほど重要な約束」

 

「えー、なに?」

 

「後ろから足音がしても、絶対に振り返らないで。その人は自分の流れで撮りたい人なの。思い通りにいかなかったら、現場を投げちゃう人だから絶対に守って。至近距離で後ろ姿を撮った後、前のアップも絶対に撮るから、どんなに足音が近づいても、決して後ろを振り返らないで。何が起きても、そのまま歩き続けて。出来る?」

 

「うん、分かった。普通に歩くよ」

 

「それと、誰にも会わないと思うけど、例え会っても、何事もないように続けて。撮られてる以上は、ケイコもプロなんだから」

 

「プロかー。何か緊張するねー。でも、了解。任せて」

 

「ありがとう。じゃあこれ、明日の衣装と、赤い傘。七時キッカリに歩き始めて欲しいから、それまでには家の前に来ててね」

 

「分かった。絶対、遅れないようにする」

 

「撮影が終わったら、今回の謝礼とカメラマンの名刺を渡すから。ケイコ、誰もいなくても、七時に歩き始めるんだよ。ちゃんと遠くから撮ってるから」

 

「分かったってー。しつこいー。大丈夫、チャンスだから頑張る」

 

「よろしくね。

 

……ねぇ、ケイコ。全部終わったら、腕の傷、見せてあげる。その時は、過去を水に流して握手しようね」

 

***

 

 

タタ

 

タタタ

 

タタタタッ

 

タタタタタタッ!!!

 

 

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***

 

〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉ミチコオノ


 

 

自分のケツは、自分で拭きます 〈高岡ヨシ + 大関いずみ〉

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「おーい、君ぃー! 聞こえるかー? そんなとこで、何してるんだー?」 

 

「あっ! お勤めごくろうさまです! あのー! わざわざ来てもらって悪いんですが、間に合ってまーす!」 

 

「いやー、えっ? 間に合ってるって、何だろうなー? とにかくさー、そこ危ないから降りてきなよー!」

 

「何だかすみませーん! でも、降りる気はないんで、お帰り下さーい!」

 

「いや、帰らないよー! ねぇ、君ぃー! そこで何をしてるのー?」

 

「自分のケツを拭こうとしてるんでーす!」

 

「うん、そうだねー! いや、そうじゃなくて、何でそんなトコにいるのかなー? どうしてそこに便器があるのかなー?」

 

「あのー! それ説明すると長くなるんで、勘弁してください! とにかく、今、僕は忙しいんでーす! 放っといてくれませんかー!」

 

「んー、放っとけないよー! あのー、君ぃー! もしねー、お尻を拭きたいんだったら、降りてきた方がいいよー! そこ危ないし、トイレなら下にもたくさんあるよー!」

 

「あのー! 下はダメなんです! どうしても、ダメなんでーす!」

 

「何でかなー? 何で降りてこられないのかなー?」

 

「話せば長くなりまーす!」

 

 

ガヤガヤ

 

クスクス

 

パシャ

 

ガヤガヤ

 

クスクス

 

パシャ

 

 

「あ! ちょっと待っててねー! すぐ戻るからー!」

 

 

ツカ

ツカ

ツカ

 

 

「すみませんが、出て行ってもらえますか? あの、ちょっと、撮らないで下さい。撮らないで。あの……何で笑ってるんですか? 見て分かりますよね、この状況に何ひとつ面白い事はありませんよ。ほら、早く出て行ってください。これ以上、ここに残るつもりでしたら、本官への公務執行妨害で逮捕します。さぁ、出て行ってください!」

 

 

ツカ

ツカ

ツカ

 

ガチャ

 

ツカ

ツカ

ツカ

 

 

「ごめん、ごめん! 話の続きなんだけどー! 何で降りてこられないのかなー? 長くなっても構わないから、教えてくれないかなー?」

 

「今、今みた通りですよー! 下に降りたって、結局、同じなんでーす! 見ましたよねー? みんなの表情? あれが、全てでーす!」

 

「そうかなー? みんながみんな、同じじゃないと思うよー!」

 

「同じでーす! 僕の見てきた世界は、同じでしたー! あのー! もう、いいですかー? 僕は自分のケツを拭きたいんでーす!」

 

「やっぱり、そこじゃなきゃダメかなー?」

 

「ダメでーす! 僕はー! 僕はー! もう十分拭いてきたんです! 下でずっとー! 他人のケツばっかり! 拭いてきたんでーす! もう! 嫌なんです!」

 

「えーと、他人のケツって、どういうことかなー!」

 

「あのー! 何でみんな、嘘を教えてくるんですかねー? 助け合いだとか! 人に優しくとか! 自分の事じゃなくても、気付いた人がやりましょーとか! 全部、嘘じゃないですかー! ずっと、そうしてきましたよー! 親にも言われたんでねー! でもー! そうやって生きてきてもー! 何も報われなかったでーす!」

 

 

「……」

 

 

 

 「親がー! 借金を抱えましたー! ギャンブルでーす! でも、僕はちゃんとやりましたよー! 家族は大事に、ですもんねー! だから、バイト増やしてー! お金入れてー! やることはやりましたよー!」

 

 

「……」

 

 

「でもー! 足りないってー! 全然足りないからー、学校やめて働けってー! もう! 嫌なんでーす! 拭いても! 拭いても! 拭いても! キリがなーい! だから、終わりにするんです! 自分で自分のケツを拭いて、それで終わるんでーす!」

 

 

「……」

 

 

「それしか、ないですよねー! 下に降りてー、何があるんですかー? あなたがお金をくれるんですかー? 諦めちゃダメとか! 世の中そんなに悪くないだとか! 綺麗事以外に、解決策なんかありませんよねー!」

 

 

「……」

 

 

「もう、いいですから! 帰ってくれませんかー?」

 

 

 

 

 

「親父がー、親父が首を吊ったー! 

 

本官が17歳の時、理由はギャンブル! 

 

君んちと同じだー!    

 

 

 

ショックだったー! 

クソッタレって思ったー! 

みんないなくなればいいって思ったー!    

 

 

 

 

下の世界はー! こんがらがってるー! 

どっちにいってもー! 遠回りばっかだー!                       

 

 

 

 

 

友達にならないかー? 

 

本官とー! 

友達になってくれないかー! 

 

 

 

 

どこにもいかなくていいー! 

共通の趣味もなくていいー! 

だだー! 

君がよければー! 

友達になってくれないかー!

 

 

 

 

本官の名前はー! 

 

……俺の名前は、タグチコウタ! 

 

生まれは神奈川だー!

 

 

君のー! 

 

君の名前を、聞かせてくれないかー!!!」

 

 

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***

 

〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉大関いずみ

 

大関いずみ氏に、感謝。

fukaumimixschool.hatenadiary.com

ねぇ、知ってる? 〈高岡ヨシ + ミチコオノ〉

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ねぇ、知ってる?

あの子のお母さん、PTAの会長さんとできてるらしいのよ

 

ねぇ、知ってる?

あの子の家の弟さん、やっぱり変なんですって

 

ねぇ、知ってる?

あの子のお母さんの出処、どうも橋の向こうの地区らしいのよ

 

ねぇ、知ってる?

あの子のお父さんの会社、噂通り倒産したんですって

 

 

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ねぇ、知ってる?

あなた達の話、全部聞こえているよ

 

ねぇ、知ってる?

あなた達が笑ってしている話、全部おかしくも何ともないんだよ

 

 

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おい、知ってる?

あいつ、昨日もヤられたんだってよ

 

おい、知ってる?

一緒に殴れば、金がもらえるんだってよ

 

おい、知ってる?

あいつ、授業中に血を吐いたらしいぜ

 

 

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ねぇ、知ってる?

あなた達の話、全部聞こえているよ

 

ねぇ、知ってる?

あなた達が笑ってしている話、全部面白くも何ともないんだよ

 

 

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あなた達が知りたいと思っている話を、私は聞きたくない

あなた達が笑ってしている話を、私は全然面白いとは思えない

あなた達の興味があることを、私は知らない

 

「何にも知らないんだ」ってあなたは言うけれど、私だって知っていることはある

 

 

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ねぇ、知ってる?

誰もいない校庭に横たわると、月面にいるように感じるんだよ

 

ねぇ、知ってる?

夜中プールに忍び込んで、ずっと水面を見ていると、急に光る瞬間があるんだよ

 

ねぇ、知ってる?

デパートの屋上にある看板をのぼると、黄色と赤と青黒い空が迫るんだよ

 

ねぇ、知ってる?

早朝、日が昇る少し前に神社に行くと、拝殿がやけに白く見えるんだよ

 

 

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あなた達が知っていることと、私が知っていることが、目の前に揃った

お互い、これ以上、隠していることはないはずだよね

 

だったらもう、「おあいこ」にして帰ろうよ

知らない間に、外はもう真っ暗だ

 

さぁ、もうやめにしよう

これ以上、違いを求めたら、どちらかが消えなきゃいけなくなっちゃうから

 

 

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***

 

〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉ミチコオノ

 

ミチコオノ氏に、感謝。

fukaumimixschool.hatenablog.com

今回の詩は、こちらに収録されています。

読んでいただけたら、嬉しいです。 

私が私をやめたなら

私が私をやめたなら

 

「七日後」の秘密 (高岡ヨシ + 大関いずみ)

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「急に呼び出してごめん」

 

「うん。いいけど、誰もいないよね」

 

「誰もって?」

 

「ヤマカワさんとか」

 

「大丈夫。いない、いない」

 

「本当に? 倉庫なんかに呼び出すから、構えちゃったよ」

 

「ごめんね」

 

「いいよ、いいよ。それよりさ、月曜どうだった? やっぱり新しいことされた?」

 

「月曜? あぁ、水のやつ?」

 

「うん。あれ、ひどくない? 着替えなんて持ってないから、ビショビショのまま帰ったよ」

 

「僕も。すれ違う人にジロジロ見られた」

 

「あんなの、何が楽しいんだろうね?」

 

「あいつらが笑ってしてくるやつ、1ミリも理解できない」

 

「最低だね」

 

「間違いない」

 

「あのさ、聞くのが怖いんだけど、何か緊急事態あった?」

 

「いや、そっちは大丈夫。今のところは何の連絡もない。今日呼んだのは、ヤマカワ関連のことじゃないんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「うん。ちょっと聞いて欲しいことがあって」

 

「どうしたの?」

 

「あのさ、タカギ先生って、妊娠してたっけ?」

 

「タカギ先生? 保健室の?」

 

「うん」

 

「いや、知らない。保健室のタカギ先生でしょ? 妊娠なんて話、聞いたことないよ。何でそんなこと聞くの?」

 

「こんなこと相談して本当に申し訳ないんだけど、どうしていいか分かんなくて」

 

「何かあったの?」

 

「うん、先週の水曜のことなんだけど、なんとなくヤマカワとかに呼び出される気がしたから、保健室に逃げたのね。水曜って、よく呼び出しがかかるから」

 

「分かるよ。水曜の昼休み明けって、危ないもんね」

 

「危ない。事情は話してないけど、タカギ先生って、基本なんにも言ってこないから、その日も『頭が痛い』って言って、寝かしてもらってたんだ」

 

「俺も時々そうしてる」

 

「あそこさ、寝る時、あのカーテンみたいのでベッドをグルッと隠すでしょ? その日もタカギ先生がそうしてくれたんだけど、滑りが悪かったのか、ちょうど枕の部分にちょっとした隙間が出来たんだ。本当にちょっとなんだけど、自分で閉めるのもなんだから、そのままにしてたの。僕が寝ていたベットは入り口側だったから、そこからは先生の後ろ姿が見える感じ」

 

「うん」

 

「いつもそうなんだけど、寝っ転がっても寝れないから、天井をずっと見てたんだ。そしたら、『ジャキッ ジャキッ』って音が聞こえたんだ。ゆっくりと、何かを切るような音」

 

「音?」

 

「うん。その時、部屋には僕と先生しかいなかったから、気になって隙間から覗いたんだ。ハサミは見えたから、何か切ってるのは分かったんだけど、何を切ってるのかまでは見えなかった。けっこう長いこと音が聞こえたんだけど、何か作業をしてるんだと思って気にしないようにしたんだ。でも、途中から、声も聞こえ出して」

 

「声って、先生の?」

 

「うん。『出てくるな』って。最初は小さくて何を言ってるのか聞き取れなかったけど、意識したら、だんだんクリアに聞こえてきて。『出てくるな』『出てくるな』って、繰り返してた」

 

「え、それは、サエキに対して言ってるの?」

 

「いや、独り言なんだと思う」

 

「『出てくるな』って、タカギ先生が?」

 

「うん。何かを切りながら、小さい声でずっと。何だか変な感じがして、先生の後ろ姿から目が離せなくなった」

 

「何か声をかけたの?」

 

「かけないよ。かけれないよ、怖くて。それから少しして、先生が誰かに呼ばれて部屋を出て行ったんだけど、いったい何をしてたのかどうしようもなく気になって」

 

「切ってたやつ?」

 

「それを含めて、色々」

 

「机の上に何かあったの?」

 

「いや、出て行く時に机の引き出しに入れてた」

 

「もしかして、開けたの?」

 

「ベットから起きるのが怖かったけど、とにかく気になって。どうしたらいいか分からなくて五分くらい待ったんだけど、先生は帰ってこなかった」

 

「引き出しに、何があったの?」

 

「赤い布っていうか、お守りみたいなやつ。それがバラバラに切られてた」

 

「お守り?」

 

「うん。交通安全みたいなやつ。なんのお守りかは分からなかったけど、バラバラだった」

 

「あのさ、それやってたの、本当にタカギ先生だよね? 保健室の」

 

「そうだよ。それ以外にありえない」

 

「何で、そんなこと」

 

「分からない。それに、そこにあったの、お守りだけじゃないんだ。バラバラになったお守りの下に、絵があった」

 

「絵?」

 

「うん、これ。この絵」

 

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「なに、これ?」

 

「分からない」

 

「ねぇ、なんでこの絵をサエキが持ってるの?」

 

「引き出し開けて、訳が分かんなくなっちゃって。絵を見ている時、ちょうど保健室に生徒が入ってきたんだ。それで咄嗟にポケットに入れた」

 

「その時、先生も帰ってきたの?」

 

「いや、生徒だけ。確か、ケンジと同じクラスのシミズ君だと思う。なんか、タカギ先生を探してるみたいだったけど、『いませんよ』ってだけ伝えて、気不味くなったからそのまま部屋を出た」

 

「ねぇ、絵の裏に、なんか書いてあるよ」

 

七日後

 

「うん。家に帰って、ちゃんと見た時に気付いた」

 

「七日後って、なに?」

 

「分からない。全然、意味が分からない」

 

「下に、ほら、そこに書いてある日付って、それ先週の?」

 

「うん。先週の水曜日」

 

「じゃあ、七日後って」

 

「今日、だね」

 

「何か、あった?」

 

「今のところは、何もない」

 

「でもさ、タカギ先生はサエキが絵を取ったって知らないかもしれないでしょ? だってあの時、戻ってこなかったんだから」

 

「戻ってはこなかったけど、絵と一緒に僕もいなくなってるからね」

 

「サエキの他にも、生徒が入ってきたって言ってたよね、じゃあその子が取ったってことも考えられるでしょ? だったら……あ」

 

「何? どうしたの?」

 

「その生徒……さっき、シミズ君だって言ったよね?」

 

「うん。ケンジのクラスの子だよね」

 

「そのシミズ君、二時間目の後に保健室へ行って、そのまま早退したって聞いたよ」

 

「……え?」

 

 

 

タン

タン

タン

 

タン

タン

タン

 

ガラッ

 

 

「あっ、本当にいた。何やってんだお前らこんなことで。まぁ、いいや。おぃ、サエキ、タカギ先生に、お前がここにいるからって言われて来たんだけど、なんか急ぎらしいんだ。渡した資料のことで話があるみたいだから、至急、保健室へ行ってくれ」

 

 

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〈文〉高岡ヨシ

〈絵〉大関いずみ

 

***

 

大関いずみ aka ミチコオノさんに、感謝。

 

必見です。

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ラジオネーム・放課後のジェットリー 

「さっきの電話、意味わかんねぇよ。一応買ってきたけど、何でケーキが必要なの?」

 

「話した通りだよ。大切なイベントだから、非日常アイテムが必要なんだよ」

 

「それで、何でケーキなの? お前、甘いもの食えないじゃん」

 

「いいんだよ、なんだって。雰囲気なんだから」

 

「だったら、プリングルスとペプシでいいじゃん」

 

「それじゃあ、いつもと一緒だろ。今日は特別なんだよ」

 

「何それ。まぁ、はい。ケーキと、一応いつものも買ってきたよ」

 

「ありがとう。気が利くねぇ。気が利き過ぎて、怖いよ」

 

「どーせ後で腹減ったとか言うじゃん。あれ、聞いててうるさいんだよ。あと、ケーキ選ぶの面倒くさかったから、今日は割り増しで千円な」

 

「でた、四捨五入」

 

「うるせぇよ。じゃあ、今度から自分で買ってこいよな」

 

「はい、千円です」

 

「お前、どんだけ動くの嫌なんだよ」

 

「千円を渡すぐらい嫌だよ。とにかくさ、ケーキもあるし、始めていいか?」

 

「ちょっと待って、何が始まるかわかんないけど、その前にトイレ貸して?」

 

「いいよ。あ、たぶん今かーちゃんが風呂入ってると思うから、気をつけて」

 

「またかよ。何でいつも時間かぶるんだよ? ていうか、何でお前んち脱衣所がないんだよ」

 

「知らねぇよ、そんなの。大丈夫、足音が聞こえたら出てこないから」

 

「お前のかーちゃん忍者かよ。マジで鉢合わせとか勘弁だから」

 

***

 

「で? 何が特別なの」

 

「あぁ。今日は、引退式なんだ」

 

「引退式? 何の?」

 

「ラジオ投稿。俺、ずっと投稿してたじゃん。中1の夏から、今年で丸々3年。それ、今日で引退すんの」

 

「え? ラジオ投稿の引退式?」

 

「うん」

 

「お前の?」

 

「うん」

 

「何? 俺がそれに付き合わなきゃいけないの」

 

「うん」

 

「なんで?」

 

「いや、付き合わなきゃいけない訳じゃないけど、丸々3年やってきたし、こういう形にしたほうが区切りがつくかなぁって思って」

 

「え? 勝手に辞めればいいじゃん。俺、関係なくない?」

 

「お前は俺の数少ない友達だろ? 明日は学校ないし、バイトも入ってなくて暇だろ? てか、絶対に暇だろ。協力してよ」

 

「確かに、暇だよ。何の予定もないよ。でも、お前のラジオと関係ないだろ?」

 

「そうなんだけど、頼むよ。ケーキ食べていいからさ」

 

「お前が食えないだけじゃん」

 

「麦茶もいれてきてやるからさ」

 

「いいよ、麦茶は。お前んちのマズイし。分かったよ。分かったから、俺のファンタ飲むなよ」

 

「マジで感謝する。お前は心の友だよ」

 

「なに、ジャイアン? で、何で引退すんの?」

 

「1枚も読まれなかったんだよ。3年間、毎週投稿したんだぜ。才能ないんだよ。だから辞める」

 

「ふーん。1枚も?」

 

「1枚も」

 

「ちゃんと切手貼ってたの?」

 

「あぁ、バッチリ貼ってたよ」

 

「へー。そんなもんなのか」

 

「あぁ、そんなもんだ」

 

「そんで、引退式って何すんの?」

 

「もう全部用意してある。これ、お前が引き受けてくれると思って、ちゃんと台本を作ったんだ。お前はこれ通りに読んでくれればいいから。俺はその進行に合わせて音だすから」

 

「俺がこれ読むの?」

 

「そう。お前は、パーソナリティー役。音はもう準備してあるから、その紙にあるバッテンマークの所は、声を出さないでね」

 

「なんか想像してたのと違うんだけど。えー、降りていい?」

 

「ダメだよ! 1回オッケーしたんだから、やり通してよ。お前がここで俺のラジオネームと投稿を読んで、初めて俺の3年間が報われるんだから」

 

「知らねぇよ! 巻き込むなよ」

 

「ほら、合図入ったから待ったなしだ。オープニング流すぞ」

 

「誰が合図出してんだよ。ほら、お前が変なことやろうとしてっから、猫が畳でツメ研いでんぞ」

 

「いいんだよそんなの。ほら、巻き入ってるから行くぞ! はい、5、4、3、2、…」

 

「え? あ、スズムラカツヤのオールナイトニッポン……おい、ちょっと!」

 

「なに? 何で止めんの?」

 

「お前、いま『ニッポン』のとこで変な声出しただろ? 『にっぽぉ〜ん』って」

 

「エコーだよ、エコー。お前ラジオ聴いたことないのかよ」

 

「奇声だよ、あれは。エコーじゃないだろ。お前のかーちゃん、何か疑うぞ」

 

「音のことは気にすんなよ。この部分は、エコーがかかんの。こんなペースでやってたら終わんないよ」

 

「お前が終わらす気ないんだろ」

 

「いいから、気にすんなって。よし、キュー出すから、もう止めんなよ。3、2、…」

 

「あ、スズムラカツヤの……フッ…ハハハッ! ちょっと、おい! 無理だって!」

 

「何だよ、何なんだよ! 真面目にやれよ!」

 

「それはこっちのセリフだよ! 何なんだよ、さっきから。合図出す度に、そんなに酸っぱい顔する必要あるか? 確実にワザとだろ?」

 

「酸っぱい顔? ふざけんな、これは真剣な顔だよ」

 

「真剣に梅干し食った顔する奴がどこにいんだよ。お前、相撲の取り組みの時に、酸っぱい顔の力士を見たことあるか?」

 

「あるよ。基本、みんな酸っぱい顔だろ」

 

「酸っぱいわけねぇだろ! そんな力士いねぇよ!」

 

「いたんだよ。前頭から4番目くらいの奴」

 

「4番目くらいの奴って。お前、相撲なんか見ねぇじゃねぇか」

 

「見ないだろ普通! アンコ食わないのと一緒だよ! 逆に、何でお前はその歳で力士に夢中なんだよ。どうかしてるよ」

 

「相撲は男のロマンなんだよ! もういいよ、相撲の話は。あのさ、今気づいたんだけど、この紙に書いてある、ここ。タイトルコール後のフリートークってあるけど、何これ?」

 

「あぁ、そこ? 書いてある通り、フリートークだよ。何でもいいから、ちゃちゃっと話してくれないか?」

 

「ちゃちゃっとって、無理だろ。話すことなんかねぇよ。あー、面倒くせぇ。やめる! もう、やめる」

 

「待て、待て! そこを何とか頼むって。マジで何でもするからさ。じゃあ、これ。お前が大好きな、タニザキアカネの切り抜き集。1週間貸してやるから。これ、マジで奇跡の書だぞ。これスクラップすんのに、どんだけ時間がかかったか。だから頼む。この通り!」

 

「なにこれ? 全部お前が作ったの? お前、頭おかしいよ。マジで貸してくれんの? 本当に? じゃあ、やる。全然やる」

 

「オッケー、交渉成立。そうと決まれば時間がないんだ、すぐいくよ。はい、3、2、…」

 

「……また……はい。スズムラカツヤのオールナイトニッポン。えぇー、夏ですね、夏です。暑いです。スイカをね、食べました。2切れ食べました。えぇー、あとですね、かき氷も食べました。あ、味はメロンですね。それから……」

 

「おぃ! カット、カット! なにそれ? 小3の絵日記? ラジオなめてんの? 感情が何にも伝わらないよ」

 

「伝わるわけねぇだろ! いきなりフリートークって言われても、何も出てこねぇよ。やっぱ、無理。やめる」

 

「弱音吐くなよ! やれば出来るって。じゃあさ、俺がお題出すから。んー、じゃあ、稲刈り。稲刈りでいいや。何でもいいからさ、稲刈りに関してバァーっと盛り上げて喋ってよ。テンションマックスって感じで」

 

「は? 何で稲刈りなの。ていうか、稲刈りで盛り上がる奴なんかいねぇだろ。もしいたら、そいつ狂ってるよ。時期もムチャクチャだし」

 

「ブーブーブーブー、文句ばっかだな。ラジオに時期は関係ないんだよ。いるんだよ世の中には、稲刈りで我を忘れる奴が。イメージしろよ、イメージ。これ成功出来たらさ、アカネちゃんの出演番組だけをダビングした奇跡の波動を貸してやるから」

 

「え? お前、そんなの持ってたの? マジで? じゃあ、結構前にやってたポッキーのCMも入ってる?」

 

「つぶつぶ苺のやつだろ? もちろん、収録済みだよ」

 

「うそ? あれ、期間限定だったやつだぞ。 本当に入ってるんだな?」

 

「変態に、二言はない」

 

「マジか? あんた神だ! 分かった。出来る限りテンション高めにやってみる」

 

「よし、それでこそ俺の幼馴染だ。オッケー。敬語は使うなよ、テンションマックスな、じゃあ、いくぞ。3、2、…」

 

「す、すっずむらかつやのぉー、オールナイトニッポンっ! えぇー、始まったね! もぅ、始まっちゃった! 俺はね、稲刈りが好きダァー!!! 稲刈りがぁ、好きなんダァー!!! もぅ、刈りたい! 是非とも刈りたい! 刈らせてくれるなら、お餅あげちゃう! とっておきのを、3っつ! 3っつもあげちゃうんダァー!!! 稲刈りぃ、ばんざぁーいっ!!!」

 

(アキヒサ! ちょっと来なさい!)

 

「やべっ! かーちゃんメッチャ怒ってる。おい、お前テンション上げすぎだよ。それ、テンションマックスっていうか、イってるよ。稲刈り中毒だよ。怖い、怖い。完全に、稲刈りに取り憑かれてるじゃん。あー、もーしょうがない。とりあえず俺、かーちゃんに謝ってくるからさ、ちょっと桃鉄でもして待ってて。戻ってきたら、絶対再開するから。まだ俺のラジオネームも、爆笑間違いない投稿も読まれてねぇじゃねぇか。ふざけんなよ、お楽しみは、これからだからな」

 

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全部ひっくるめて、楽しい

触れようと、もがく

創り出そうと、もがく

そうやって

グシャグシャになってするもがきは、楽しい

 

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ソファーで寝落ちして、朝を迎える

 

鳥がさえずる前に、ネコが顔を踏む

 

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コーヒーをいれていると、ネコが足を踏む

 

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頭と背中が重いけど、楽しくって仕方がない

 

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日常が肩を叩き、尋ねてくる時がある

 

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自分の先を、考える事がある

 

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でも、自問の末に飛んでいく

 

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内側が騒ぐ

過去が声を上げる

 

耳を貸そうと近づくと

森の中に引き込まれる

 

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胸焼けが襲う夜もある

それでも

楽しさが込み上げる

 

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首を這ってくる欲よりも

もっと強く突くのは

喜び

 

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登場人物が独りで歩き

思いもしなかった景色をくれる

好き放題する彼らをまとめて

迷わないように道を作る

 

そうして出来上がった喜びは

何物にも代えがたい

 

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誰に頼まれたわけでもない

名前も全く売れていない

けれども

楽しいから、書く

胸が躍って嬉しくて

また、新しいドアを開ける

 

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薄暗い中で手を振るけど

読んでくれる人がいる

想いをくれる人がいる

 

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それは

僕を照らす光

気持ちを繋ぐ宝物

 

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有難い出会いがあった

 

言葉でスイングして

力強くハイタッチした

 

会った事もない人

存在すら分からない人

 

元の姿で投げた球を

バックスクリーンに叩き込んだ

 

スタンドが俄かに活気付く

 

楽しくって仕方がない

 

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今日も変わらずイスに座る

 

2回目のコーヒーをいれ

底を目指して潜り込む

 

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息が切れて真っ暗になる

 

でも

 

ネコ達がいる

 

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居場所がある

 

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僕は一人じゃない

 

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***

 

応募締め切りは2月末

次の世界は、ロードムービー

 

橋はかかるか

かからないか

 

例えその先に渡れなくても

ストーリーは続いていく

 

全部ひっくるめて楽しいから

想像は終わらない

 

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電波の縁に、最大限の感謝

合掌

 

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