ノスタルジア

引っ越す背中を強く押す

透き通った緋色の夕焼け

 

僕が歩いていたその道は

二度と戻らない道となる

 

借り物の街で見上げた星は

電車の窓に映った花火

 

めいっぱい腕を伸ばしても

決してこの手に掴めない

 

大洋ホエールズの帽子を被った

緑のクリームソーダのあの子

 

君は僕を覚えているかな

 

同じ靴ばかり履いていた

掃除をしない放課後のエース

 

僕は君を覚えているよ

 

新しい番号を書いた葉書

君に届かなかったのかな

 

電話が鳴り響くそのたびに

心を躍らせ走ったけど

けっきょく声は聞けなかった

 

「また会えたら遊ぼう」と

君がくれたドンジャラの牌

とうとうゲームは成立しなかったね

 

おーい

おーい

 

僕は君を呼んでいる

 

おーい

おーい

 

過ぎ去った時間を呼んでいる

 

ブルーハワイの扇風機

テレビの上で威張る東京タワー

 

君を想うとあの日が浮かぶ

 

タブレットの魔法がなかった時代

 

「便利」は「距離」を超えなかった

 

手軽に素早く繋がるよりも

ゆっくり記憶に残した世界

 

それが君と僕が遊んだ

遠い日の20世紀だ

 

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答えてよ

僕はあなたを笑わない

ずっと笑われてきたから

決してあなたを笑わない

 

ねぇ

もっと自由に踊ってよ

心置きなく

好きな円を描いて

 

たとえ姿が見えなくても

背中に手を当てるから

やりたいように息をして

 

僕はあなたをバカにしない

ずっとバカにされてきたから

決してあなたをバカにしない

 

ねぇ

感情をフィルターにかけないで

思ったことを口にして

 

雑踏が耳を貸さなくても

あなたの声は

僕が聞くから

 

何処へでも飛んで行っていい

僕はあなたを縛らない

思うがままに振舞って

 

あなたの帰る場所は

いつだってここにある

キッチンの灯りは消さないから

鍵穴は探さなくていいよ

 

立派になんてならなくていい

友達だっていなくてもいい

「普通」なんか捨てていい

 

あなたが笑顔ならそれでいい

 

ほら 

夕食の時間だ

 

好きだと言ってた唐揚げに

アボガドとサーモンのサラダを付けたよ

コーヒーはミルクだね?

チョコレートも冷蔵庫に移してある

 

何でもするよ

望みを伝えてくれるなら

精一杯で答えてみせる

 

その代わり

 一つだけ

約束して欲しい事がある

 

ねぇ

 

お願いだから

「死にたい」なんて言わないで

 

ねぇ

 

お願いだから

夜中に急に消えないで

 

答えてよ

 

今夜

安心して眠れるように

 

「生きていく」って答えてよ

 

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西口ターミナルと後ろ姿

緑奥駅の西口改札を出て左に進み、エスカレーターを避けて長いスロープを歩いておりる。

地面から天井まで伸びる透明な窓が続く、緩やかな斜面。

日が完全に沈みきった後、このスロープから大きなバスターミナルを眺めるのが好きだった。 

程よい暗さが溢れた色を隠し、等間隔に並んだ白いライトがコンクリートを浮かばせる。光に縁取られた半円の中を回る緑のバスはどこか未来的で、煩わしい現実を程よくぼかす。

 

僕はいつも、この場所から彼女の後ろ姿を見ていた。

 

スロープを半分ほど過ぎると見えてくる小さな噴水は、僕らがいつも待ち合わせをしていた場所。

肩に届かない髪、手に持った真っ赤なケリーバッグ。ベンチに腰を下ろさず、立って空を見ている彼女の背中が鮮明に浮かぶ。

 

カネコさんは、とても優しい人だった。

 

(名前で呼んでよ)

2歳年上の彼女からは事あるごとにそう言われていたが、くだらない感情に押し負けていた僕は、結局、最後まで苗字でしか呼びかける事が出来なかった。

 

もう、頻繁には戻らなくなった街。

開発が進み、記憶との答え合わせが難しくなった街。

それでも僕は、西口のスロープをおりる度に彼女の背中を探している。

 

カネコさんは、僕を笑わなかった。

車の免許が無くても、食事がいつもドーナツショップでも、定職に就いていなくても、彼女は僕に変わらぬ愛情をくれた。

 

(面白いから、もっと書きなよ。才能があるんだから、ずっと書き続けなよ)

 

自分に課された宿題と向き合う事を恐れ、そこから目を背ける言い訳として使っていた書き物にも、カネコさんは光を当ててくれた。

彼女が与えてくれた言葉を頭でなぞると、今でも胸がいっぱいになる。

 

カネコさんは、とても優しい人だった。

僕は確かに彼女が好きで、同時に拭えない劣等感を抱いていた。

 

弱さから温もりを求めたにもかかわらず、そこから生み出される蜜の吸引を拒んだ当時の自分は、誰とも肌を合わすべきではなかった。

 

(ドーナツでも何でもいい、一緒に祝って欲しかった)

(結局、一度も私の事を見てくれなかったんだね)

 

何の価値もない男としてのプライドが邪魔をして、彼女の昇進を素直に喜べなかった僕を見て、カネコさんは悲しそうな顔をして言葉を吐いた。

 

自分の足りていない所ばかりを気にして、彼女の優しさにも、深い愛情にも、頑張った功績にも目を向ける事が出来なかった自分は、男としての前に、人間としてどうしようもなく未熟だった。

 

 

縁は、巡り合わせだ。

年を重ねれば重ねるほど、その考えが無理なく頭に染み渡る。

それは自分たちがコントロール出来る代物ではない、と強く思う。事実、僕は誰かを欲してカネコさんに出会い、独りになろうと心を決めたタイミングで妻と出会った。

 

きっと、カネコさんと出会うのが後5年遅ければ、僕は彼女と一緒になっていたかもしれない。

でも、その「もしも」は存在しないのだろう。

 

妻と知り合ってすぐに、彼女が受けた定期検診で大きな病気の誤診を受け、その事がきっかけで僕は腹を据えて結婚を意識するようになった。

もし、その0.3パーセントの確率と言われている誤診が起きなければ、僕は彼女と籍を入れていなかったのだろうか。

いや、やはりその「もしも」も存在しないのだろう。

 

それが縁と言うものだと、僕は認識している。

 

 

僕がカネコさんの背中を探しているのは、どうしても謝罪と感謝の思いを伝えたいからだ。

そんな事をしても迷惑になる可能性は高いし、自分のエゴを満たす為の行動だということも理解している。

それでも、許されるなら気持ちを伝えたい。

 

彼女がいてくれたから、僕は今も書いている。

彼女が光を当ててくれたから、内側を綴り続けている。

彼女のくれた言葉が、どれだけ僕の背中を押してくれたことか。

 

人生の宿題は、もう飲み込んだ。

今は、ただ書いていたいから、ノートを思いで埋めている。

浮かぶ感情をそのままに、楽しんでペンを走らせている。

 

「ありがとうございました」と、縁ある恩人に伝えたい。

 

もう、頻繁には戻らなくなった街。

開発が進み、記憶との答え合わせが難しくなった街。

それでも僕は、西口のスロープをおりる度に、彼女の後ろ姿を探すのだろう。

 

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いじめサバイバー

僕はサバイバー

生きるために背中を見せた

いじめサバイバー

 

僕はサバイバー

立ち向かう勇気を持てなかった 

いじめサバイバー

 

僕は逃げた

生きていたいから

逃げ続けた

 

後ろを振り返らず

目を瞑りただ走った

 

出来るだけ遠くへ

手が届かないほど深くへ

 

追いつかれたくなかったから

要らないものは極力捨てた

 

先が見えなかったから

着の身着のままで

国を超えた

 

ベットリと記憶に塗りつけられた

鮮明な痛みと悔しさ

対処する術が分からずに

それらを怒りに変えて生きてきた

 

僕は僕の無くしたものを探している

 

殴られて抜けた歯は何処だ?

無理やり取られた金は何処にある?

家の鍵は?

剥ぎ取られた服は?

燃やされた髪の毛は?

割られた爪は?

 

青白くなる明け方に

何度もしつこく声を掛けるが

無くした時間は返事をしない

 

シナリオを描く

赤い炎と銀の刃先

 

自尊心と虚栄心が

「復讐しろ」と心をつつく

 

ダンベルを上げる

収まらない気持ちに煽られて

夜中に通りを駆け抜ける

 

無くならないイメージ

泣いても消え去ってくれない場面

 

腕立てをしても

腹筋をしても

シャドーに没頭しても

2時40分の土曜日は失せない

 

空気中の粒子で姿を造る

 

視界を奪った後に

鼻を潰す

背後に回って膝を砕き

頚動脈を力いっぱい締める

 

あれほど憎んだ暴力に

これほど心を食い散らかされ

我を忘れて繰り返す模擬訓練

 

正気に戻った夕暮れに

鏡を見つめて頬を張る

弱い自分に怒りを覚え

浴室のドアに頭をぶつける

 

「何やってんだ」

「一体、何をやっているんだ」

 

ズレたメガネに真っ赤な顔

三面鏡に映る自分は

額を押さえて震えている

 

こんな事を

あと何回やればいい?

どれだけ目を血走らせれば

時間は振り向いてくれるんだ?

 

答えはない

いつも答えはない

 

返事がないから空を見る

 

高く広く

上へと伸びる場所を見つけて

何時間でも空を見る

 

形を変える急ぎ雲

4時を過ぎると

空の衣替えが始まる

 

首の痛みを感じ

重い頭を地面に垂れる

その先にあるものは

一列に並んだ蟻の行列

言葉を発しないその列は

身の丈ほどの葉っぱを運んでいた

 

***

 

僕は年を重ねた

あれからたくさん時間が経った

 

変わっていったもの

変わらずに残ったもの

 

今現在の気持ちを抱えて

僕は今日も生きている

 

僕は僕の無くしたものを探すのをやめた

 

僕は何も失ってなどいない

 

抜けた前歯は入れ歯にした

お金は頑張って稼いでいる

家の鍵には

少し大きめのキーホルダーを付けたよ

オシャレではないけれど

気に入った服も持っている

髪型はフザけていて

爪は年中 深爪だ

 

行方不明の時間は

まだ姿を現さない

だけど

それはそれでいい

 

無くしたのではない

取られたのではない

 

僕は放棄したのだ

 

全て自らの意思で差し出した

生きる事と引き換えに手放したんだ

 

眠れない夜をきっかけに

そう思い込むように努めた

 

だから

奴らから取り返すものは何もない

 

取り戻さない

その代わりに

新しく作り直す

 

時間と労力は掛かるだろう

でも

それは大した問題ではない

生きていれば

ゆっくりでも再生できると信じている

 

僕は今でも

怒りについて考えている

回数は減ったけど

たまに心を食べられるよ

 

それでも

思考は支配されない

 

鉄の塊を上げ下げしているけど

それは復讐のためではないんだ

 

もう自分のためには

ダンベルは上げない

訓練を続けているその意味は

大切な存在を守るためだ

 

僕の信念は揺るがない

奴らはきっと報いを受ける

 

けれども

それをするのは僕ではない

 

許さないし忘れない

でも

恨みと共に生きはしない

 

***

 

僕はサバイバー

過去を飲み込んだ

いじめサバイバー

 

僕はサバイバー

暴力を強く否定する

いじめサバイバー

 

いかなる理由があろうとも

いじめの正当性を認めない

いじめからの生存者

 

僕はこうして旗を振ろう

生きてこられた感謝を込めて

白く大きな旗を振ろう

 

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衝動は、ここにいる

クリップで留めた感情は

夜を越えない

 

湧き上がる衝動と会話がしたいから

柔らかいクッションは取っ払った

 

遠慮なく飛び込む刺激は

たまに痛いほどだけど

とにかく朝を迎えたかった

 

喜怒哀楽に 

邪と欲

 

そのままの形で出てきた思いに

自分の全てをぶつけたい

 

頭を強く揺さぶる曲に

深く引き込まれる文章

ハッと心をえぐる絵に

過去を連れてくる写真

 

胸の内側が溢れたなら

下手なステップで床を滑ろう

 

記憶がうまく収まらないなら

意味もなくハイウェイを飛ばそう

 

何かが背中をつつくなら

家の周りをグルグル回ろう

 

仕事帰りに見つけた景色を

追いかけたっていいんだ

大丈夫

ご飯の支度が遅れるだけだ

 

絵が描けないから文字を書く

音が作れないからストーリーを創る

 

大声で気持ちを叫ぶ代わりに

毎日たくさん写真を撮るよ

 

 

あなたのことが大好きだから

親しみを込めて「友」と呼ぼう

 

 

なぁ 友よ

衝動は息をしているか

 

なぁ 友よ

雑音なんか気にしないでくれ

 

なぁ 友よ

襲い掛かるような情熱を

真正面から受け止めたならば

もっともっと表現できる気がするんだ

 

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空ではなかった

「あれは空だ」

 

ずっと長い間 

その言葉を信じてきた

 

当たり前のように植え付けられた常識を

疑った事なんてなかった

 

 

2017年 6月15日

 

遠く見上げた先にあるものは

とてつもなく大きな手のひら

 

青く着飾っているけれど 

あれは空ではない

 

 

頭のおかしな人の裏にいるのは

誰だ

コトを起こして恐れを引き出し

操ろうとしているのは 

誰だ

 

目の前で繰り広げられる寸劇は

私が生まれて見てきたものと変わらない

 

 

思い通りにしたいから

殴る

他校の奴らから守ってやっていると

ゆする

「お前らの為になる」と理不尽なルールを

作る

近いうちに抗争があると

煽る

 

「恐怖」という名の目隠しは

視界と思考を奪い取る

 

 

弱いものを叩くのが人の性ならば

喜んで人間を辞めよう

 

家族の形を定めるのなら

望んでその輪を抜けよう

 

戦争を放棄できないのなら

泣く泣く故郷を捨てよう

 

 

もう

争いはたくさんだ

 

受けた暴力が残したものは

痛みと恨み

 

薄めて口に含むまで

何十年も掛かった記憶

 

ドンパチやって解り合える

そのイメージが浮かばない

 

 

空が見たい

押さえつけてくる手のひらではなく

高く伸びる

空が見たい

 

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届いて欲しいお知らせ(追記しました)

本日から来週の月曜日までの間、Amazon Kindle ストアで販売している自分の電子書籍「五厘クラブ」の無料ダウンロードキャンペーンを行います。

 

この作品は、自分にとって特別なもので、強い思い入れがあります。

幾つかアイデアはあったのですが、一番初めに出すものは、これだと決めていました。

大袈裟ではなく、自分の人生を救ってくれた「五厘クラブ」と名のついたグループの物語。

 

この作品で表現したかった思いは、心を込めて表すことが出来ました。

 

是非、皆様に読んで頂きたいです。

 

以下に作品の内容と、Amazon や、ブログ内で頂いたコメントを紹介したいと思います。

 

作品内容:

「五厘クラブがこの世に存在していた証に、生前葬をする」
リーダーの提案で、クラブ発足二十周年の会合で行われることになった生前葬に参加するため、オレはカナダから日本に戻る飛行機の中にいた。


同じ団地に住む四人組、通称「オリジナルフォー」から始まった五厘クラブ。ファミコン、ひょうきん族、ゴムボール野球で作られていた日常の黄金比が、メンバーの一人であるイシハラの引っ越しをきっかけにして崩れ始める。


フランスパンを自転車の前カゴに突き立て、疾走していったイシハラの母親。
漫画のように、ケイゴの口から吹き出された豚キムチラーメン。
調理室裏でツヨシを囲んだ誉め殺し大名ゲーム。
そして、姉の存在から広がった影。


葬儀で担当することになり作成した五厘クラブの年表を通して、オレはその一つ一つの記憶と向き合うことになる。

 

コメント:

「登場人物のキャラクターがそれぞれはっきりしていて、会話のテンポも良く面白かったです。フランスパンが登場するシーンや、調理室裏の場面、車に刻むメッセージなど思わず吹き出しました。部活の顧問へのお礼参りや、不良グループへ立ち向かう時のリーダー達との結束などストーリー展開の暗い場面でさえ、ただ重苦しいだけでは終わらずに友情の熱さがうまく表現されていたと思います。こんな友達がいたら自分の学生時代も楽しかっただろうなと思いました」

 

 

「物語の流れがテンポが良く進み、幼い頃から大人になるまでのエピソードや心の葛藤が、その年代に応じて上手く表現されていました。
友情がテーマだけど、恋愛や家族でしか理解できない負い目のような感情も描かれていて、とても興味深かったです。
キャラクターの個性も魅力的で、会話や情景描写にユーモアがあって笑えました。
きっと好きになるキャラクターがいます!
10~30代後半の方にお勧めかな。。。」

 

 

「「五厘クラブ」拝読しました。思春期から大人へ成長する過程が力強く、時にユーモラスに書かれていました。 少し前までの背徳(不倫やら、詐欺やら)だらけの小説とは違い、人の内面と社会的問題をテーマにしながらも清々しい読後感でした」

 

 

「ただの青春ものではなく
人とのつながりをとても感じられた作品でした。
自分が関わってきた人を大切にしたいな…と
改めておもいました。
また、違う作品も読んでみたいです」

 

 

このブログで何度か書いているのですが、人に読まれてこそ、作品は呼吸ができると自分は思っております。

この無料期間中にダウンロードをしてもらい、皆様に読んで頂けたら心から嬉しいです。

そして、もしよろしければ、読んでくださった感想を教えて頂けると大変ありがたいです。

 

宜しくお願い致します。

 

Amazon Kindle 「五厘クラブ」リンク:

https://www.amazon.co.jp/dp/B01LB7NQ0G

 

追記:

一部、文字化けしている箇所がありましたので、修正しました。

6月10日、土曜日の朝には修正版のダウンロードが可能になる予定です。

申し訳ございませんでした。

 

* キャンペーンは終了いたしました。期間中にダウンロードして頂いた方々、自分の記事を紹介して下さった方々、ありがとうございました! 

 

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